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サバンナの摂理

サバンナの摂理 作】陽詩蒼空
性別不問 語尾変更可

※こちらchao様、果ての海様の企画。
『月と狼』で書かせて頂きました。
子供たちの図鑑を見て思いついた作品になります。

暗い夜道を照らす淡い光。
光に誘われた年老いた狼が一匹いた。
狼は数年前までは長として君臨していたが。
戦いに負け群れから追われてしまった。

群れから離れた当初は違う群れに入れてもらおうと近づいたが。
一度は長まで上り詰めた狼にはプライドを捨て。
頭を下げることができなかった。

時が経つと体力も落ちていき自ら食料を捕ることもできなくなっていく。
群れに入ることができなかった狼に食料を分けてくれる動物はどこにもいない。
世界は弱肉強食。
最近口にしたのは傷み誰も口にしなかったシマウマの肉が少し。
それでも狼は食べるしか生きる方法がなかった。

弱っていく狼をまだかまだかと狙っているハゲタカやハイエナ。
すべての動物に平等に光を降り注ぐ月であっても。
狼を助けることはできない。
「俺もここまでだろうか…」
狼がそう覚悟した時。
目の前に一際輝くものが見えた。

狼は不思議に思う気持ちと最後の希望だと思う気持ちを交差させながら。
前へと進んでいく。
「もしや…最後に神様が…」
もはや足元はおぼつかない。
目の前に広がっているのは月光によって輝く川が一本。
きらきらと輝く水面を眺めていても胸が潤っても腹が膨らむことはない。

「ははは…。神ですら俺を見捨ててしまったんだ」
狼はそこで力尽き眠るように世界に別れを告げた。
数刻後には狼の姿はないだろう。
どんなにやせ細っていてもサバンナではかっこうの食料。
狼は他の動物の命へとなっていく。

だからこそ今だけは月に照らされる狼を目に焼き付けていきたい。
どうか安らかに…。

おわり

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