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ありあわせの蒸し器と解かれることのないミステリー

ある日の台所。

アルミの両手鍋に蒸気穴のついた鍋を重ねて、ティファールの蓋をしている。ハウルの動く城を彷彿とさせる、増築に増築を重ねてわけのわからない形になった蒸し器であることよ。しかし食材を蒸すという本来の目的は叶えているのでバカボンの「これでいいのだ」になっている。

「A」という目的を叶えるためには逆算して、必要な要素「1」「2」「3」をまず達成していく。というのが普遍の王道でもあるんだけど、いざとりかかろうとするとそのための○○がない(○○はなんでもよい)というのはよくある。

ないものはないので、あり合わせのものを掛け合わせるなり、他に託したり、部分的にはしょったりとできることは全部やってなんとか形にする。そこにその人の個性が出てくるんだろうな、と思う。まあ、この蒸し器みたいなもんだね。

しかし、密かに思うことがある。うちには蒸し物鍋一式はそろっている。それをそのまま使えばいいのに、あえてあり合わせのものを使っているところがなんとも謎だ。何が父をそうさせたのか。聞きでもしないかぎり解かれることはないだろう。

台所には解決するようなものではないけど、どうしてこうなったというミステリーが隠されている。その謎は解かれることなく、ひそみ続けて次のミステリーが来るを淡々と待っている。

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