さよならはいわない…
何となく予感はあった。
去年の秋、職場で帰り際にある女性がぽつりと
"もう辞めようかな…"
と呟いた。特別親しかったわけではないけれど、優しくて笑顔が素敵で"ワンコがいる"と言う共通点もあった。
その数日後、帰りが一緒になった時に
"良かった。いらっしゃいますよね?"
と笑顔で言うと"はい、いますよ"と明るく笑って答えてくれた。
けれど年末から姿を見かけなくなりそのまま新年を迎えた。
入れ替わりの激しい職場ではあるけれど彼女の笑顔がそこにない事にその"不在感"に急に淋しくなった…
去年、隣町のカフェバーで知り合いになった女性。他にもワンコと行けるカフェやカフェバーを紹介してお店の名刺を渡した。
するといく先々で2度3度と会う様になった。
そうして少しずつ少しずつ親しくなっていった。
けれどあらかじめ決まっていた事とは言え、
春には遠くにお引越しをされる。
"会いに行きますね?"
社交辞令でなく本当に会いに行きたい気持ちで言った。
昨日の午後、公園を散歩してカフェバーに立ち寄ると後から彼女とワンコちゃんが来た。
新年の挨拶をして他愛ない会話に笑ったりと穏やかな午後のひと時。
"あ。これを…"
と可愛いプレゼントを頂いた。
(いつか渡せる様にと持ち歩いていたとの事)
帰って開けてみるとかぼちゃのおやつやジャーキーが入っていた。
可愛らしくラッピングしてあるその気遣いを見て、あとどれくらいこうして会えるのかなと思うと胸がぎゅうとなった。
今月末で中学受験の生徒が辞めていく。
(2月1日に一斉に受験が始まる)
2月末には中3生や高3生が辞めていく。
中には継続して通って来る子もいるけれど…
毎年繰り返される光景でも慣れると言う事はない…
長い子だと3〜4年ずっと担当しその成長を見守る、晴れの日も嵐の日にも。
大切な大切な宝物で天使達。
大人しい天使もヤンチャな天使もいるけれど(笑)
春は別れの季節。
そして新たな出会いの季節でもある。
未来がきらきら輝く子ども達を笑顔で送り出し
"一緒に頑張ろうね?"と新たに迎え入れる。
そっと差し伸べた手をおずおずと、或いは元気に握り返して来た時、心の中て呟く…
"その手を離さないで。いつも側にいるよ"
7年前、ひと言も残さず永遠に去っていった母
深く深く沈んでいる時、誰よりも支えてくれた優しい男友達
東北の震災後、家族が心配だからと実家に帰っていった友人…
けれどさよならは言わない。
"縁がある人とはきっと何処かで繋がっている"
そう言った友人。
"ねぇ、それ信じていい?"
帰り道、公園のベンチでワンコを膝に乗せておやつをあげて水を飲ませた。
サア〜ッと風が肌を冷たく撫でていき髪が乱れた。
そろそろ家族連れや散歩の人も帰路に着き始めた。
人も疎らな公園の、葉が落ちて裸になった木々や少し荒れた花壇をぼんやり見ていた。
ふと見上げた空と木々の間から木漏れ日がきらきら光っていた。
いいんだよ、これでいいんだ。
ひとりひとりを大切にひとつひとつを積み重ねて今を生きている。
丸い目が訝しげに私をじっと見ている…
さあ、帰ろう?
*読んでくださった方、いつもありがとうございます