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空き家対策モデル事業成果報告

初めまして、暇と梅爺株式会社です。

今回、国土交通省 令和3年度「住宅市場を活用した空き家に係る課題の解決を行う事業」で、

「地域芸術活動で解決する、サブスク型の空き家再生事業」として採択されました。

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00.墨田区の下町・京島エリアの紹介

京島エリア紹介マップ-01

京島は東京スカイツリーの麓にある下町風情が残る街です。

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01.事業の背景と目的

墨田区京島エリアの大きな課題として、木造密集地域の老朽家屋がもたらす防災上の危険性が挙げられる。これに対し当社では、扱いにくい空き家に柔軟に対応し、結果としてアーティストらによる地域芸術活動の促進を招いてきた。
本事業の目的はこの活動を維持・拡大するために、空き家の貸し手・借り手双方のハードルを下げることである。そのために構築している新しいモデルを通じて、当該エリア特有の町並みに魅力を感じているアーティストらの地域芸術活動を促進することで、町並みの均質化や地域のアイデンティティ喪失を防ぐことにも寄与し、地域の活性化に資することを目的とする。

02.事業の内容

(1)事業の概要と手順
本事業ではまず、これまで実施してきた空き家活用の分析・整理を行い、活用の流れや傾向等を把握。
事例の詳細を可視化するパンフレットを作成することでオーナーへの空き家のさらなる可能性を掲示。また、それと伴い定期的に空き家オーナー向けのツアーやイベントを企画・実施することで啓蒙活動を兼ねたオーナーとの関係性構築。一方、借り手はアーティスト・クリエイターを対象とし、イベント(「東京ビエンナーレ 2020/2021」や「すみだ向島 EXPO2021」等)を通じて、借り手市場のリサーチを実施。そこからツアーやイベントを企画・実施することで我々の活動を周知していき、事業促進へと連結。また、以上の事業の発展・継承を目的にインターン生を迎え入れ、本事業のノウハウを教えるとともに事業の育成モデルマニュアルを作成することで他地域でも応用可能なマニュアルを完成させた。
以上の手順からアーティストらの地域芸術活動に着目し、これまで不動産賃貸業として単独で賃貸していた各種スペース(住まい・アトリエ・ギャラリー)をパッケージ化し、サブスクリプションサービスのモデルとして一括管理・提供体制を構築しています。

スクリーンショット 2022-03-15 0.33.16取組みフロー図

スクリーンショット 2022-03-15 0.41.52取組みスケジュール

(2)事業の取組詳細

①オーナーへの物件活用に関する啓蒙活動

②借り手市場(滞在制作ニーズを持つ層)の育成


①オーナーへの物件活用に関する啓蒙活動

①-1 物件オーナー調査
本事業に取り組むにあたり、まず現段階(2021 年 8 月時点)で保有している物件と物件オーナーとを紐付け、1物件ごとの情報整理を行った。整理した情報を基に地域内にどのようにサブリースが分布しているか、各物件オーナーから借りている物件数等を可視化するためにマッピングを行い、今後の事業の取組みに活かせるよう「繕い、受け継いだ建物マップ」を作成。また、地域に残る空き家のリサーチを実施。空き家オーナーの特定を地域の聞き込みを中心に行い、所有者へ現状のヒアリング及び、活用意向の可否を確認。それにより、実際に一件の活用に繋がった。

①-2 空き家オーナー向け動画/パンフレット企画・制作
これまで、2019 年からアーティスト・クリエイターを賃借対象とし、地域芸術活動で地域発展をサポートするサブスクリプションサービスを行ってきたが、活動内容の可視化が進まず、各物件がどのような性質でどのような利用方法ができているかの把握ができていなかった。そこで本事業ではこれまでの活動内容の可視化を目的に、今後、空き家オーナーへの啓蒙活動に活かせるようなパンフレット/動画制作を行った。制作は1でマッピングした各物件の詳細情報(築年数、契約形態、改修方法、用途、利用経緯、利用者時系列等)の整理。既にサブスクリプションサービ
スを利用しているアーティスト・クリエイターへのインタビュー。数物件をサブリースさせて頂いているオーナーとの対談。自社の活動に対する考えや思いの文章化。サブリースの流れの図式化。以上を行い、全 24 ページのパンフレット/10 分の動画にまとめた。

①-3 空き家オーナー向けイベント/ツール企画・運営
事業構築の中の空き家オーナーへの啓蒙活動の一環として定期的に企画・開催。イベント開催手順は3段階に分かれる。

■Step1.準備
ここではまず、オーナーへ伝えたいこと、知って欲しいことからコンセプトを設定し、コンセプトを基にイベントの詳細な企画を決定していく。そして、コンセプトと合わせたまち歩きルートと周知用のチラシを作成。チラシが完成次第、周
知活動としてオーナーへチラシを配布してイベントの参加をお願いする。
■Step2.イベント開催
ツアーをしながら実際に活用しているアーティスト・クリエイターとの交流等を含めながら、物件の活用方法を掲示し、我々の活動を知ってもらう。また、ツアー後は座談会を実施し、オーナーとの関係構築やオーナー同士の交流機会を設け、今後の地域のあり方や空き家の活用方法等について互いに意見を交換しながら関係を構築していく。
■Step3.イベントの総括
開催後はイベントの進行や開催雰囲気、オーナーの反応、座談会での話題等を振り返りながら、次回のイベントに活かせるように実施報告書作成とともに情報を整理。

イベント実施報告
《10 月開催》
参加者:地主ご夫婦、大家業(2 名)、不動産運営業担当者(2 名)...計 6 名
《2 月開催》                                  参加者:大家業(3 名)...計 3 名


②借り手市場(滞在制作ニーズを持つ層)の育成

②-1 借り手市場の調査
「東京ビエンナーレ 2020/2021」や「すみだ向島 EXPO2021」を通じて、借り手市場のニーズ等をリサーチするためにアーティスト・クリエイター向けにアンケートを作成・実施した。

《アンケート内容》
Q1.物件の興味関心について、お答えください。
Q2.どのような空き家のタイプを希望されていますか?
Q3.空き家の利用形態は、購入 or 賃貸のどちらを考えていますか?
Q4.空き家のリノベーションへの関わり方について、あなたの希望に近いものをお答えください。
Q5.どのような空き家の利用の仕方を考えていますか?当てはまるものを全てお選びください。
Q6.滞在制作についての認知・関心をお答えください。
Q7.あなたにとって芸術やアート、表現活動はどのような関係ですか?
Q8.あなたは滞在制作ができる場所を探していますか?
Q9.滞在制作ができる場所をどのように使いたいと考えていますか?
Q10.何かしら制作を行なっている方にお聞きします。どのような作品を制作していますか?
Q11.滞在制作の【住居】にどのようなことを求めていますか?
Q12.滞在制作の【アトリエ】にどのようなことを求めていますか?
Q13.滞在制作の【発表場所】にどのようなことを求めていますか?


以上のアンケートを 42 名のアーティスト・クリエイターに協力を頂いた。その後集計をとり、その結果を借り手市場調査結果としてまとめた。また、集計結果を基に本事業ではイベント企画に反映させ、よりニーズを把握したイベントの実施へと繋げた。


②-2 借り手イベント企画・運営
借り手(アーティスト・クリエイター)への周知活動とニーズ調査の一環としてイベントを企画・開催。手順は3段階に分かれる。

■Step1.準備
まず、1から得たそれぞれのニーズを基にイベントのコンセプトを設定し、イベントの詳細を企画していく。そして、コンセプトを基にまち歩きルートを作成とイベント詳細チラシを作成。チラシ完成次第、周知活動を実施。
■Step2.イベント開催
ツアーをしながら実際に活用しているアーティスト・クリエイターとの交流等を含めながら、物件の活用方法を掲示し、我々の活動を知ってもらう。また、ツアー後は既に京島地域で活躍しているアーティスト・クリエイターと参加者との交流会やサブスクリプションサービス提供前に知ってほしいこと等をミニ講義として実施。そして、借り手市場リサーチの一環としてアンケート記入のお願い。
■Step3.イベントの総括
開催後はイベントの進行や開催雰囲気、参加者の反応、交流会での話題等を振り返りながら、次回のイベントに活かせるように実施報告書作成とともに情報を整理。また、アンケート結果の整理し、市場リサーチへ反映させ、今後のイベントや事業発展に活かす。

イベント実施報告
《12 月開催》
参加者:東京藝術大学 学生 2 名(発表場所・アトリエを探している)東京大学 学生 1 名(滞在制作場所を探している)東京理科大学 学生 1 名(発表場所を探している)日本大学 学生 1 名(発表場所を探している) ...計 5 名
《2 月開催》
参加者:インテリアデザイナー(1 名)、建築家(2 名)、写真家(1 名)


③サービス提供体制の構築

③-1 人材採用
事業の発展と継承を目的に候補者(スタッフ)を迎え入れ、地域のことや事業のノウハウ等を伝授。授。2 人材育成2 人材育成4段階に分け、8 月から 2 月にかけて実施。

■Step1.「街・物件を知る」
 ・代表後藤について周り街・物件のことを把握する
 ・滞在できる住居物件、アトリエとなる物件、発表ができる物件の 3 種類を学     ぶ                                    ・街を知るために歩き、近隣住人とも顔見知・街を知るために歩き、近隣住人と           も顔見知りになり情報収集を行うりになり情報収集を行う
■Step2.「街・建物の案内」
 ・物件ツアーのルート設定を学ぶ
 ・ツアーコースで出会える拠点のアーティストや物作りの職人とと下打ち合わせ     をする
■Step3-1.「 イベント主催時にアーティスト・クリエイターに向けた滞在・制作・発表場所クリエイターに向けた滞在・作・発表場所をサポート」      クリエイターに向けた滞在・作・発表場所アーティストのヒロセガイさんにアートワークのコーディネート研修を受ける                    ・アーティスト・クリエイターがしたいことと場所の特性を踏まえてマッチする建物を紹介、サポートをするークのコーディネート研修を受ける     ■Step3-2. 「アーティスト・クリエイターに向 ・大家さん向けツアーは改修などのサブリースの流れ、資金計画についての説明に重点を ・アーティスト・クリエイターがしたいこと ・参加者に合わせたコース設定を考案する介、サポートをする ・アーティストツアーの場合は地域の在住のアーティストとの交を行う■Step3-2. 「アーティスト・クリエイターに向 ・大家さん向けツアーは改修などのサブリースの流れ、資金計画についての説明 に重点を置く      ■Step4. 「街の案内人であり、アーティスト・アーティストとの交を行うクリエイターの滞在制作をコーディネートで ・大家さん向けツアーは改修などのサブリーきる人材になる」


③-2 採用育成モデルマニュアル(エリアマネージャー育成プログラムマニュアル)作成

本事業では人材育成として、候補生(スタッフ)がエリアマネージャーとして地域と建物と作品制作に重点をおいた滞在制作のサービスプログラムを実施できるようになるためのマニュアルを作成。今回の人材育成プログラムは本事業と一貫しており、人材育成を行う上での4段階は実施しながらマニュアル化させ、そこから見えた課題点等を加味しながら「エリアマネージャー育成本事業では人材育成として、候補生(スタッフ)がエリアマネージャーとして地域と建物と作品制作に重点をおいた滞在制作のサービスプログラムを実施できるようになるためのマニュアルを作成。今回の人材育成プログラムは本事業と一貫しており、人材育成を行う上での4段階は実施しながらマニュアル化させ、そこから見えた課題点等を加味しながら「エリアマネージャー育成プログラムマニュアル」としてまとめた。
しながらマニュアル化させ、そこから見えた課題点等を加味しながら「エリアマネージャー育成プログラムマニュアル」としてまとめた。プログラムマニュアル」としてまとめた。

03.成果

オーナーへの物件活用に関する啓蒙活動の成果物として

A 空き家オーナー向けパンフレット
京島地域周辺の空き家オーナーを対象に、弊社が行っている活動内容をまとめることとオーナーへの活動の周知から関係性構築、物件紹介まで繋がりを持たせることを目的としたパンフレット「地域文化を継承する建物と人」を制作。制作にあたり、通常の空き家活用とは異なり、クリエイター・アーティスト自らが建物に DIY やカスタムを加えることができるサブリース活動の提案。そして、その活動の今までの実績や活動に伴った啓蒙活動や活動に対する考え方などをまとめ、空き家の幅広い可能性を大家さんに掲示することを工夫し、全 24 ページのパンフレットを完成させた。今後はこのパンフレットを京島周辺の空き家オーナー等に配布しながら、活動を周知していき、事業の更なる発展を期待する。

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B 空き家オーナー向け動画
パンフレットの情報を基に実際に物件や街の説明を加えながら撮影を行った。パンフレットよりも気軽に見て頂けるように、また動画をサイト上にアップすることで多くの方の目にとまり、より活動の周知と興味を持って頂けるようなツールとして制作した。

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成果として

オーナーへの物件活用に関する啓蒙活動では、物件オーナー調査から空き家 1 件の利活用に結び付き、現在(2022 年 2 月)改修計画を立て、清掃活動・構造補強を実施中。また、空き家オーナー向けのイベントから新たなオーナーから 1 件のサブリース契約を結び、事業の促進に繋がった。本事業の中では 2件の契約・活用に結びついたが、その他でも複数のオーナーとの関係構築や周知活動・広告活動による弊社の活動の認識が京島地域周辺で向上し、今後の事業の維持・発展を期待できる成果をあげられたと考えている。


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