12/15 アートで選び、サイエンスで支える

アートとサイエンスについて。

何かを決めるとき、大きく「アート」と「サイエンス」の2つの方向があると思う。アートは直感で決め、サイエンスは数字とロジックで決める。

山口 周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の本では、アートとサイエンスに加えて「クラフト」の要素が紹介されている。クラフトとは経験による判断のことだが、自分的にはこれはアートと近いものではないかと思っている。自分が見たり聞いたりしてきたことが、直感に作用する。

アートはイノベーションの種で大変重要だが、脆く儚い。アート vs サイエンスの構図になると必ずサイエンスが勝つ。これはなぜか?

アートは直感で、直感とはその人の文脈から生まれるもの。自分が触れてきたもの、見てきたもの、一緒に過ごした人、住んでいる地域など、その人の歴史や環境に左右される。そのため、他の人に伝えるのが難しい。

一方サイエンスは数字とロジックで、これは学べば誰でも身につけられるもの。市場規模や継続率など、誰もが理解できる方法で説明がしやすく、客観的にもわかりやすい。また、論理立てて話せるので正論のように見えることも多く、反論がしづらい(実際は足りない観点も多い)。

こういうわけで、アート vs サイエンスをするとサイエンスが勝ってしまう。大切なアートの要素が世に出る前に潰されてしまう。

サイエンスの落とし穴

サイエンスが常に勝つと何がダメなのか?
結論から書くとイノベーションが生まれにくいことだと思う。サイエンスは学べば身につけられるスキルなため、ある程度のレベルまでいくと条件を与えると全員が同じ結論を出せるようになる。情報が手に入りづらい時代では見えている情報の広さによって勝敗が決まったが、現代ではインターネットの普及により色々な情報に誰もがアクセスできるため、情報の差分は生まれづらい。みんなが同じようなことをしていては、イノベーションには繋がりにくい。

また、サイエンスの限界もあると思う。ロジカルシンキングは物事を単純化して重要な指標を抜き出す(例えば 売上 = 新規ユーザー x 継続率 x 単価 みたいな)。ただ、現代は非常に複雑化しており、単純化した数式ですべてを語れるものではない。ユーザーの満足度や購買時の意思決定など、単純化すると抜け落ちる要素が必ずある。

ロジックを単純化して分かりやすくするのではなく、複雑なまま扱いたい。そして、複雑な状況で直感を働かせ閃く力が人間にはある。

アートで選び、サイエンスで支える

そんなわけで、アート vs サイエンスの対立構造は生産的じゃない。そうではなく、「アートで選び、サイエンスで支える」助け合いの構造を目指したい。

直感の重要は認めつつ、直感での意思決定はプロセスがブラックボックスなため周囲のメンバーの納得感は得られづらい。そこで、サイエンスで裏付けをとっていく。

裏付けは色々な方法があるが、例えばデータリサーチ、ユーザーインタビュー、小さく始めてユーザーの反応を見る、など。これらの結果は共有しやすいので、チームで議論する土台にしやすい。直感を採用しつつ、客観性も担保できる。

チームで仕事をしていると、アートが強いメンバー、サイエンスが強いメンバーがいると思う。意見をぶつかり合わせるのではなく、お互いの強いところを補強する形でコラボしたい。サイエンスで選択肢の全体を眺めつつ、アートで選ぶ。アートで選びつつ、サイエンスでその価値を検証する。それが各人の強みを活かした組織な気がしている。

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