言葉と薬

【言葉】と【薬】は似ていると思う。

似ているという表現が適しているかは分からないが、似ているという表現しか思い浮かばないから、似ている。去年だったか、とある配信を観ていた時のこと。
配信されてた方が、話の流れの中で言った一言を聴いて思ったことがある。


【随分、オブラートに包んだ言い方するなぁ】

配信されてた方が、オブラートに包んでそれを言ったのかどうかは確かめられないし、心底そう思っての言葉だったのかもしれない。自分のながら聴きがそう感じさせただけなのかもしれない。
だから、そこはもう、私の想像力頑張れ!!お前ならできるぞ、がちゃぴん!!になるわけだけど
想像力のスイッチボタンが押される前に、今度は配信されてた方のその言葉を受けて、コメント欄に並んでいく視聴してる方々の言葉たちを読みながら思った。


【ポジティブだなぁ】

配信されてた方の言葉は、誰が聴いてもきっとマイナス要素はひとつもなかったけど、なんかちょっとした言葉のやり取りを眺めながら、そこに微妙なズレというか温度差を感じてしまった…。
この時をきっかけに、言葉と薬について考える思考回路がめでたく開通。おめでとう、ありがとう!!


《言葉は薬にもなるし、凶器にもなる》

よく聞くし、その通りだなと思う。
マイナスよりプラス、ネガティブよりポジティブ、否定より肯定の言葉を使いましょう。その通りだと思います(マイナスがあるからプラスが生まれるんだ、全部プラスでそれが通常運転なら、もはやそれはプラスでなくて、ただのゼロだと思うんだ…という曲がりくねった思考は一度海にでも投げ捨てます)

言葉を薬に置き換えた時
プラスとか肯定が、薬になる言葉。
マイナスとか否定が、凶器になる言葉。

これは理解できるし、やっぱりその通りだと思う。
でも、言葉はプラスでもマイナスでも言葉じゃない?
【言葉の意味】ではなくて、【言葉】というもの自体の存在は何処へ…?となった時、終着点の言葉と薬は似ているなぁに到着しました(折り返し運転します)。


言葉自体が、薬。
プラスとか肯定の言葉が、薬でいう効能。
マイナスとか否定の言葉が、薬でいう副作用。

もうこの時点で《言葉は薬にもなるし》の【薬】に疑問を抱く。効能だけの話だよね、それって。
副作用の捜索願提出しないと…。
薬には《効能》があるように《副作用》もあるわけで。同じように言葉にも《プラス・マイナス》の両面があるわけで。
しかも、プラスの言葉でも、聞く人によってはマイナス要素になることありませんか…?


例えば、「明日の天気は雨です」と天気予報士が言ったとする。水不足で困っていた地域の人は『恵みの雨だ』ときっと安堵するでしょう。
《雨》という言葉がもたらした《効能》
では、遠足を翌日に控えた小学生にとってはどうか…。
『遠足中止か…』ときっとガッカリするだろう。
こちらは《雨》という言葉がもたらした《副作用》
では、更に…天気予報士が「明日の天気は雨です」を
オブラートに包んで伝えた場合はどうなんだろう。


「明日の天気は雨ですが、降っても小雨でしょう」

ここでのオブラートは
「降っても小雨」の部分になるのだけど
恵みの雨だと安堵していた人たちは、小雨では水不足は解消されないかもしれないと期待が外れ《副作用》
遠足中止に肩を落としていた小学生は、小雨なら決行するかもしれないと期待が生まれる《効能》

ただひとつ、天気予報士が言った「雨」という事実は、
オブラートに包んだところでなにひとつ変わってない。
薬では《飲みやすくする》だけのものであって
言葉では《(言葉の)トゲを隠す》ようなもの。


頭痛がするからと鎮痛剤を買い物に出て、陳列された薬たちの副作用欄に目を向ける人は、どれくらいいるか。
パッケージにでかでかと書かれている効能を見て、症状にあったものを選択する。飲みにくければオブラートを使うかもしれない。これで安心、頭痛が治まる。
…が、裏面に記載された副作用には気づかない。
薬が効くと同時に副作用が出るかもしれないのに。
出ている症状と、その症状に合った効能にしか目が向いてない。

言葉も同じじゃないかな。
効能も副作用持ち合わせてるそれを、どう伝えてどう受け取るか。昨日まで効いて(聞いて)いた同じ言葉でも、明日になったら副作用になる可能性はある。
それはそれでいいと思う。だって言葉は元々持っているんだからどちらの側面も。
発信する側は言葉を選択することができるし、オブラートに包んで渡すことができる、ありがたい。
受け手は効能として喜んで服用すればいいし、服用しにくかったらオブラートに包んで飲みやすくしたらいい。



…副作用(出る可能性)の存在を忘れなければ。


【言葉】と【薬】は似ているなぁと思う。
効能も副作用も、どちらの側面も理解しておかなくちゃいけないし、取り込みにくければオブラートに包めばいい。ただ、オブラートに包まれたその中身は、取り込みやすくなっただけで、包まれる前とひとつも形を変えてないし、意味も変わってない。

副作用はなにか…
包まれたものの真意はなにか…
その中身は毒薬かもしれない。


言葉は薬にも、凶器にもなる。
凶器は、副作用を見落として生まれるものだと思う。
その包まれたものを見つめることで薬に変えていけたら、それの言葉選びは正解になる気がするし、その言葉は最高の良薬になるんじゃないかな…終点。






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