食通の定義

「銀座のフルタの3万円のコースなくなるらしいんでもう次の予約は取りませんでした」

ってツイートが流れてきて吹き出してしまった。

フルタというのは、3万円のコースが一番安いコースで、5,7と上がっていく。これは「その店で一番安いコースがなくなるので、もう行きません」と言っているわけだ。また、この店は予約がX年先になるという店としても有名であり、今予約をしようとすると2026年の予約になる、みたいな店だ。

つまり、この人は「一番安いコースを食うために、おそらく2年くらい前から予約をして、その日にわざわざその店に行って一番安いコースがなくなるなら高いと思って、その場で次の予約を断って、さらにそれを全世界にツイートで公開した」ということになる。

俺なら、「一番高いコースを全く惜しくないと思える」くらいじゃないと、2年前から予約をするような店には絶対行かない。(といっても、そもそも遠くの予約が大嫌いなので、人に頼まれでもしないと一週間先までしか予約なんて取らないが)


Instagramが流行したことと、「予約困難をブランディングする予約困難店」が生まれたことで、こういう自称食通の勝負というのは、「予約困難な店に年に何回いけたか」で勝負をする感じになっているようだ。女々しすぎて、女の腐ったみたいなやつらだなと思う。


俺の思う食通とは、自分が生涯で出会う店でここがきっとこの料理では一番うまい店だろうと納得できる店を見つけ出し、その店と仲良くなる人だと思う。

今一番うまいと思う店なんかじゃないよ。人生のなかば、最低10年は色々食べてみて、上限はどこか、これより旨い店はもう出会えまい。そう諦めと達成感が入り混じった「生涯でこれが一番上なんだろう」って話だよ。

勿論藤井聡太とか大谷サンみたいなのが現れ、最高を更新してくれるならば、それはとても嬉しいことなんだけど。

仲良くなって、好きな食材や料理を伝え、それが入ったら電話をもらって食べに行き、ケチったりせずに足繁く通い、時にはお土産をもっていったり、お土産を貰ったり、馴染みになる。それが食通だと思う。

予約困難店もコロナで空いた時とかを使っていくつか行ったのだが、「予約困難店に大当たり無し」と断言できるくらい、どこも大したことがなかった。あんなものに行った数を競ってるのは、舌バカだと自己紹介してるに等しい。


食通の定義を語りたくなるくらいびっくりしたんだよ。自称食通の有名人が、「数年後しか予約のとれない店の一番安いコースがなくなるので行くのをやめると宣言する」ことのダサさに。

いやほんと。びっくりした。

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