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彼らの描く「第二章」の色鮮やかさ/Sexy Zone「Chapter Ⅱ」感想

chapter(名):(歴史・人生などの)区切り

「ジーニアス英和大辞典」より抜粋

2023年6月7日。
Sexy Zone 9枚目のオリジナルアルバム「Chapter Ⅱ」がリリースされました。

リード曲は「Purple Rain

アニメバージョンのMVもあり、

先日、ダンスプラクティス動画も公開されました。

楽曲自体は、a-haの「Take On Me」を思い起こさせる80年代っぽい雰囲気の曲調。
アルバム全体も、シティポップの方向性に寄った少し懐かしい曲調が中心になるのかなぁと思っていたのですが、実際に聴いてみたら、あらあらどっこい。
なんとも色とりどりな楽曲たちにびっくりたまげてしまいました。

語ろうと思ったらいくらでも語れそうなのですが、いくつか焦点を絞ってアルバムの感想をまとめてみようと思います。

「ザ・ハイライト」との共通点

まず通して聴いた時に感じたのは、昨年発売されたアルバム「ザ・ハイライト」と全体の流れが共通しているなぁということ。
キャッチーな曲から始まり(「Forever Gold」/「Cream」)、2曲目でガラッと雰囲気を変えて(「Desideria」/「EXTACY LUV」)、3曲目にレトロな曲調を持ってくる(「THE FINEST」/「Purple Rain」)という冒頭の流れ。
真ん中あたりにライブで盛り上がりそうなEDM曲を置いて(「SUMMER FEVER」「Freak your body」/「Take A New Step」「BUMP」)、楽曲提供者の色が濃く出ている、他の楽曲とは毛色が大きく違う曲を経て(「休みの日くらい休ませて」/「再会の合図」)、しっとり系の曲を挟んで(「Summer Ride」「Dream」/「長電話」)、最後は穏やかな優しい曲で締めくくる(「Ringa Ringa Ring」/「せめて夢の中でだけは君を抱きしめて眠りたい」)。

雑誌の取材で「ザ・ハイライトが昼なら、Chapter Ⅱは夜」とメンバーが話していたのをどこかで目にしたんだけど(雑誌自体をまだ読めていないので伝聞になってしまうのが心苦しいですが)、楽曲の並べ方からもザ・ハイライトとの対比を意識して作ったのかな?と感じます。

あと、シングル曲がアルバムの流れの中に綺麗に収まっているのも両アルバムの共通点だと思ってます。
シングルとして聴いた時と、アルバムの中の一曲して聴いた時とで印象が変わるというか、その曲の魅力がより引き立てられているような気がします。

「ザ・ハイライト」からの広がり、深まり

共通する部分はたくさんあれど、進化してるなぁと思うところも多々。
前作でもいろんなジャンルの曲に挑戦していたけど、今回はそこからさらに一歩踏み込んだというか、幅を広げたというか。
うまい例えが見つからないんだけど、色相環がひと回り大きくなって色のバリエーションが増えて深みが増した感じがする。

例えば、「BUMP」。
他のボーイズバンドが歌っていても不思議ではない印象を受けるこの曲(あくまでイメージなのですが、SixTONESが歌ってたりSnowManが踊ってたりしてもしっくりくる気がする)。
それを彼らがこのアルバムの一曲として歌うことで、他のレトロな曲との対比によりよりくっきり「今」が現れる。
Trust Me, Trust You.」みたいに豪華なオーケストレーションの曲もあれば、「」みたいに浮遊感のある曲もあり。
Message」では最初から最後まで2人/4人のユニゾンという構成で、昔からの「ジャニーズスタイル」を踏襲しているところが今の彼らの楽曲としてはかえって新鮮に感じます。
全員ががっつりラップに挑戦している「再会の合図」みたいな曲もこれまでのSexy Zoneにはなかったのでは。

売り出しの方向性としては「シティポップ」「テクノポップ」「80s/90s」が前面に出てるように感じるけど、それだけじゃない。
曲の幅を広げることで、今後「王道アイドル曲」だったり、セクゾの十八番の「トンチキ曲」を、今の彼らがバリエーションの一つとして表現できる可能性が広がった気がする。

個人的には、このおもちゃ箱のような、バラエティ豊かな楽曲たちを、彼らがどのように、どんな切り口で、どんなまとめ方で、コンサートというパッケージに仕上げてくるのか、本当に楽しみです。

ソロ曲の豊かさ

4人のソロ曲が入っているのも前作との大きな違い。
それぞれに、ソロだから歌える曲であり、一人ひとりの色が出ている曲であり、今この時に出すことに意味のある曲なんだろうなぁという印象を受けました。

まずは勝利くんの「雨に唄えば」。
亡くなったお父様とのエピソードを知っているだけに、じーんとくる。軽やかなサウンドと、勝利くんの声質がぴったりハマってる。
「ヒーローになりたい」みたいな、小さな頃の純粋な気持ちを大人になった今もずっと大事にしてるんだろうなって思う。

次に、風磨くんの「My World」。
NOT FOUNDのラップ詞でも似たような反骨精神というか、斜に構えながらうちに秘めた熱みたいな感じを受けたけど、その頃より明らかに「売れてる」今の状況で、自分を取り巻くあれこれ全部糧にしてやるみたいな、この曲を歌うことで意志表明してるのを感じる。宣戦布告。

そして聡ちゃんの「Turbulence」。
グループの曲より歌い方を攻めてる気がする。
実は聡ちゃんのソロをちゃんと聴いたことがなかったのだけど、この曲は今の自分にはちょっと難しいかもしれない、と思うところに躊躇なく全力で挑戦してる印象。きっとライブではがっつり踊るんだろうなぁと思うので、パフォーマンスとして見たらまた印象が変わりそう。

最後はケンティーの「ROSSO」。
なんというか、円熟。ジャジー。大人の魅力。これまでのキラキラソロ曲もだいすきやったけど、こういうしっとりした雰囲気でまた違う魅力を感じる。ケンティーの自作曲は爽やかで軽やかさがある印象だけど、こういう重ための曲だからこそ生きるよさがあるんだなぁと。

DISC 1に入っている14曲よりも、バリエーションがさらに広がったところにある感じがする4曲。
この4曲があるからこそ、このアルバム全体の色彩の豊かさが上がった気がする。

(あと、ほんとにちらっとだけど、風磨くんとケンティーのソロ曲、それぞれ歌い手を入れ替えたバージョンも聴いてみたいって思ってしまった。世の中に宣戦布告するケンティーと、甘い大人やけど背徳的ではない雰囲気の風磨くん。めっちゃ見たい。)

「第二章」の意味

もうひとつ、このアルバムに外せない要素。
マリウスくんが卒業して、初めてリリースするアルバム。
その中に、離れることになった仲間への思いを歌う曲が2曲(「Message」「再会の合図」)入っています。

年末以降、FC動画、インスタ、カウコン、5人旅、5人でのドームパフォーマンスなど、さまざまな方法で「末っ子の卒業」を緩やかに穏やかに見送らせてもらって、さぁこれから第二章だ、というところで。
こんなにダイレクトに「第一章」の存在を感じさせる曲が出てくるとは思っていなかったので、正直びっくりしました。

ただ、どちらの曲も、「これまで」のことを大事に思いながら、内容としては「これから」のことを歌っていて。
離れて終わりではなくて、まだ見たことのない未来がそれぞれに続いていく、というような、離れた仲間へのエールと、自分達がこれから歩む道への決意が込められているように感じます。

卒業後も、インスタやブログを通して彼らが交流している様子が垣間見られます。多分、これまでのジャニーズではあまりなかったこと。
それが「ファンを喜ばせる」ものではなく、あくまで普通に、自然に、今は離れたところに仲間とやりとりをしているのを「こんな楽しいことがあったよ!」みたいに教えてくれるのがありがたい。
「いつかきっとどこかでまた逢おう」という言葉を、気休めや祈りのようなものではなく、本当に想像できる未来として描いているんだろうなぁと感じます。

結びに

前作「ザ・ハイライト」は「今の自分達にできる自信のあるいろいろ」だとしたら、今回の「Chapter Ⅱ」は「ちょっと背伸びしてトライしてみたいろいろ」な気がする。
正直に言うと、これはちょっと歌いこなせてない? しっくりハマりきってないかも? と感じる曲や箇所もいくつかあります。でも、それこそが今の彼らが表現する「Chapter II」なのかな、とも思ったり。自分達ができることの範囲で手堅く収めるのではなく、手足をできる限り伸ばして範囲を広げて、挑戦し続ける姿勢というか。
(あと、もしかしたら、もっと曲を聴き込んだりライブで曲に触れたりすることで、私自身の感じ方が変わるかもしれない、という気もしてる)

3年前、10周年を目前に控えレーベルを移籍したタイミングでリリースした「RUN」には、こんな歌詞がありました。

「止まらないで 止まらないでよ
 僕らはまだ始まったばかりさ」

品の良さとハングリーさを併せ持つ彼ら
きっと、何年経っても、自分達がやりたいこと、できることを増やしていきながら、いつまでも「始まったばかり」の気持ちで進化しながら走り続けていくんだろうな。

現状に満足せず挑戦し続ける彼らを、わたしも応援し続けたいと思ってます。

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