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息子は恋人?『La Mère 母』考

フランスの小説家・劇作家のフロリアンゼレールは、
2010年に戯曲『La Mère 母』を、
2012年に「La Père 父』を、
2017年に『Le Fis 息子』を書いている。
それをフロリアン・ゼレールの『家族3部作』と呼ぶのだが、
3作のうちの2作である『La Mère 母』と『Le Fis 息子』を同じ俳優で
日本で同時上演。
2024年4月5日(金)東京芸術劇場で始まった公演が
明日、6月30日(日)穂の国とよはし芸術劇場(愛知県)で
『La Mère 母』の千穐楽を迎える。

本日は、ここnoteで
私が考える戯曲『La Mère 母』について書くこととします。
テーマは2つ。
1つ目は、戯曲『La Mère 母』とイギリスの小説家D.H.ロレンスの小説「息子と恋人」の類似性について。
2つ目は、演劇『La Mère 母』のラストシーンについて。
ネタバレを含んでいますので、ネタバレが嫌いな方は、このページを閉じてください。


それでは始めます。
1つ目、戯曲『La Mère 母』とイギリスの小説家D.H.ロレンスの小説「息子と恋人」の類似性について。
戯曲『La Mère 母』を語るとき、演劇雑誌や役者さんのインスタライブ、アフタートークでは、
母親の「空の巣症候群」、英語では「エンプティネスト」として、物語を総括しがちであった。
もう1つの作品「Le Fis 息子』を(『La Mère 母』の)プログラムで
精神科医の齋藤正彦氏は「エディプスコンプレックス」の話でもあると対談の中で語っておられたが、
『La Mère 母』こそが、「エディプスコンプレックス」の話だと思うのです。
その証拠として母の台詞を見てみる。
ニコラの自宅にガールフレンドがやってきたときに娘のサラに言及する場面である。
Mother:It's funny,you reminds me of someone.
Girl:Who?
Mother:Sara.
Girl:Sara?
Mother:Nicolas's sister.Yes.There's ...something about your face...
Girl:I don't know her.
Mother:Since she left,we don't see her very often.
            It's given us a break.
息子のニコラが自活して離れ離れに暮らすようになると
「いつ実家に帰ってくるか?」気が気でないアンヌなのに、
娘のサラが独立して実家に帰らなくても、全く気にならないし”break"と感じている。
もう1ケ所、アンヌが、息子ニコラを恋人のように思っていることが明らかな場面がある。
新しいドレスをニコラに誇らしげに見せる場面である。
Motehr:You never answered me...Don't you this dress makes me look younger?
Son:Mum...
Mother:What?It's just a question.
Son:I have no idea.
Mother:Just say a number...What age do you think I look?
Son:I've always been bad with numbers...
Mother:What do you think people would say,if they saw us arm-in-arm?
            They wouldn't neccessarily think you were my son...Maybe they'd say to themselves,
    look,there she is with her young lover.
Son:Stop it.
アンヌは、極上のドレスを着て息子と腕を組んで外出すれば息子と思われないだろう、
「若いツバメ」と一緒にいると他人と思われるとニコラに言うのでした。
息子が親離れしていくのが寂しい母親、息子の彼女が大嫌いな母親。
『La Mère 母』を観劇して、D.H.ロレンスの小説「息子と恋人」を思い出さずにいられませんでした。


映画『息子と恋人パンフレット表紙


2つ目は、演劇『La Mère 母』のラストシーンについて、書きます。
中央にはアンヌと夫のピエール。
上手にはニコラの姿が見えるのだが、紗幕の向こうにいて、
視線だけが、中央に居る両親に向けられている。
ニコラは居るのに、アンヌとピエールの世界に入ってこない、、、
この演出だからこそ、
同時上演の『Le Fis 息子』とリンクしていることが分かりました。
『La Mère 母』と『Le Fis 息子』は別々の家族を描いた物語です。
しかし、このラストシーンだけ2つの物語はリンクします。
息子は、なぜ帰らないのか?
なぜなら、息子は既に〇んでしまっているから、です。
『La Mère 母』のプログラムに寄せた
作者フロリアン・ゼレールの
「『La Mère 母』と『Le Fis 息子』の創作について」、を読んで点と点が結ばれました。


明日、6月30日(日)穂の国とよはし芸術劇場(愛知県)で
『La Mère 母』は、千穐楽を迎えます。

兵庫県立芸術文化センター開催時のポスター

『La Mère 母』『Le Fils 息子』同時上演公式サイト

穂の国とよはし芸術劇場『La Mère 母』『Le Fils 息子』


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