見出し画像

「ハスの沼」からいつ抜け出せるのか

 私にとって夏の花といえば、ハスの花(蓮の花)です。
 毎年7月になると、早起きして車を運転し、ハスの花を見に行きます。これが10年以上続いているので、もう恒例行事化しています。今まで、友人や職場の同僚に「毎年ハスを見に行くのが楽しみ」という人を見たことがありませんから、私の周辺に限った世界では、きっとハスに一番「詳しい」&「好き」なのではないかと思っています。

初めてハスに出会った日の写真。

 とはいえ以前と比べると、その熱は少し下がり傾向です。今年は7月に3回しか行っていませんが、初期のころは毎週のように出かけ、そして遠征することもありました。私は埼玉県在住ですが、関東周辺はもちろん、関西や東海北陸へ行ったりと、ハスの名所を訪ね歩いていたほどです。そして自宅では、大きな容器でハスを栽培していたこともあります。
 ハスの名所では、花だけでなく、葉やつぼみ、ハスにやってくる生き物たちなど、これまでたくさんの表情を見てきました。そのひとつひとつの偶然の出会いが、今では大きな財産です。

さまざまな表情が見られるのも楽しみの一つ。

 ハスの花は早朝から開花します。昼くらいから閉じてしまうのと、日光も強くなりどんどん気温も上がってくるので、花の観賞時間帯は、7時~9時くらいまでが理想です。また、8月に入ってしまうと関東では花の数も少なくなるので、1年のうちでも観賞期間が限定されているといえるでしょう。
 では、なぜこんなにハスの花に惹かれたのでしょうか。これを言葉にするのはとても難しいです。10数年くらい前に初めて見て、ひと目で心奪われた、ということなのですが。この時からいろいろと調べたり出かけたりして、「ハスの沼にはまっていった」という感じです。花やつぼみの形が美しく、光を吸い寄せるような色合い、ダイナミックさ、つぼみから花、ハチス、枯れるまでの変化、などなど、ハスにはたくさんの魅力があります。

透き通るような白い花びら
 

 ちなみに、よく「泥の中から生まれても美しい花を咲かせる」と表現されます。でも実際は「泥」といっても汚い泥から咲くわけではありません。ハスは水生植物ですが、水の中の土の部分は「栄養豊富な豊かな土壌」でないと育たないのです。鉢で栽培するときは、荒木田土という田んぼの土をメインに使います。そこに肥料を混ぜてレンコンを植え付けします。 
 さて、ハスにも観賞用のハスと、食用のハス(レンコン)があります。食用のハスは葉っぱも花も大きくて、圧倒されます。食用のハスの花の色は、白か薄いピンクが多いという印象です。何度かレンコン畑に行ったことがありますが、朝露残る早朝のレンコン畑は幻想的でした。

朝もやのなかで静かに咲くレンコン畑のハスの花

 一方、観賞用の花は、ほんとうにいろんな種類があります。一重咲きや八重咲きのハス、ピンクの花や白やクリーム色の花など、形も色もさまざま。もしこれらを一気に見たいと思うなら、関東近辺では、埼玉県行田市にある「古代蓮の里(こだいはすのさと)」がおすすめです。ここでは6月下旬から8月上旬まで、40種類以上のハスを見ることができます。花の最盛期だと、朝7時からもう人がたくさん来ています。敷地も広いので、歩いているだけでも気持ちいいですよ。ほかにも関東にはお気に入りのハススポットがいくつかあり、僕はだいたいこの時期に3~4か所くらいを訪れています。

観賞用のハスは、花びらの色もさまざまで、見ていて飽きない。

 ちなみにハスの花は、開花して4日を過ぎると散ってしまいます。きれいなフォルムなのは、たいてい開花2日目か3日目です。1日目は完全に開きません。4日目は開ききってもう閉じることはありません。花が散った後は、花の中心の花托という部分が大きくなり、目玉のようなたくさんのタネがふくらんでできます。

左上が開花1日目。左下が2~3日目。右が4日目。(たぶん)

 さて、花の撮影には、適した天気というのがあります。一番の理想は薄曇り。花の色合いや質感がよくわかるからです。天気予報で晴れでも、早朝は雲が多いということもよくあります。また晴れていても、雲が流れている感じであれば、太陽が雲に隠れたときに撮影すればよいので大丈夫です。逆に雲一つないと、直射日光が花に当たり、コントラストが強くなって撮影するのがなかなか難しいのです。でもこれはあくまでも個人の好みなので、あまり気にしなくてよいです。
 一方、咲いた花が撮れないのは雨の日です。たとえば前日や夜中から雨が続いていると、花びらが閉じたようになってしまいます。逆に、開花まで雨が降っていなくて、花が開いた早朝に小雨や霧雨が少し降るようなときはチャンスです。花に水滴がついた写真が撮れます。また、風の強い日は花が動くので撮影には不向きでしょう。

通り雨が過ぎたあとのハスの花。雨滴がたくさん。

 とはいえ、どうしても日程優先で撮影に行く場合、天気に恵まれないときもあります。そんなときは、花だけではなく、つぼみや葉っぱの水滴、落ちた花びら、水辺の生き物などを撮るとよいと思います。
 急ぐことなくのんびりと花を観賞しながらときどきシャッターを押す。そして花だけではなく、周辺もじっと観察してみる、というのが自分のスタイルです。そうすると、さまざまな出合いが向こうからやってきます。

じっと周辺をうかがっていると、何かと目が合ったりします。

 今年ももうすぐハスの花の時期が終わろうとしていますが、場所や種類によっては8月まで見ることができると思います。
 たまには、早起きをしてハスの花鑑賞に出かけてみませんか?

(図書編集部 H・Y)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?