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種痘と薬毒

ここで先天性(せんてんせい)毒素について説明してみるが、後天性(こうてんせい)毒素とは勿論(もちろん)生まれてから後に入れた薬毒(やくどく)であるが、では先天性毒素とは何かというと、これこそ祖先以来遺伝されて来た薬毒であって、日本の諺(ことわざ)に”自惚(うぬぼ)れと瘡気(かさつけ)のない者はない”という言葉があるが、この瘡気こそ昔から俗間(ぞっけん)でいう胎毒(たいどく)であり、近代医学では遺伝黴毒(ばいどく)というのである。勿論これは薬毒の古くなったもので、どうしても一度はその排除作用(はいじょさよう)が発生しなければならない。それが天然痘(てんねんとう)である。その理を知らないがため、一七九六年かのイギリスの碩学(せきがく)ジェンナー氏が種痘(しゅとう)なるものを発見し、それ以来天然痘を免れえたので、人類は救世主(きゅうせいしゅ)のごとく仰ぎ、今日(こんにち)なお感謝の的(まと)とされている。

ところでここで知らねばならなことは、種痘によって天然痘毒素は消滅したのではない。単に然毒(ねんどく)排除の力を弱らせたまでであるから、然毒はそのまま体内に残り、これが種々の病原となる。いまその順序を書いてみるが、然毒は時を経(へ)ていずれかの個所に集溜(しゅうりゅう)し固結(こけつ)する。その浄化作用(じょうかさよう)が感冒(かんぼう)であり、また種々の皮膚病、疑似小児麻痺(ぎじしょうにまひ)、脳膜炎(のうまくえん)小児の腺病質(せんびょうしつ)等であり、その他の病原となることもある。なによりも最初書いたごとくイギリス、フランス国民の元気が衰えたのは、種痘発見後からであるのは検討すれば分かるであろう。この理によって人類から天然痘を駆逐(くちく)するには、薬剤を全部海へ捨ててしまうよりほかはないが、しかしそうしても急には効果は現れない。というのはなにしろ何(なん)世紀もの間薬詰めにして来た人間であるからで、まったく解消してしまうには少なくも二、三代かかると見ねばなるまい。しかし漸次的(ぜんじてき)に薬毒(やくどく)が減少するから、たとえ発病してもそのつど軽く済むようになるのは勿論(もちろん)、わが浄霊法(じょうれいほう)によればその人一代で済むのである。

故(ゆえ)に一般人としたらいま直(す)ぐに種痘(しゅとう)を廃(や)めなくともいい、その人一代薬を廃めれば、次の子供の代は軽く済み、孫の代くらいから絶無(ぜつむ)となるであろう。そうして種痘なるものの効果は醜(みにく)い痘痕(とうこん)を残さないだけのことで、他に与える悪影響の方がそれ以上である。というのは今日(こんにち)流行の注射である。これはまったく種痘からヒントを得たものでろうが、注射による被害のいかに恐るべきかは、この著(ちょ)を読めば納得(なっとく)されるであろう。次に病気と薬毒について主なるものを書いてみるが、最も恐るべきはかの六百六号サルバルサンである。この中毒は必ずと言いたいほど頭脳を犯(おか)し脳疾患(のうしっかん)となり、重いのになると本物の精神病となることさえある。またこの薬毒は非常に悪性であるとともに、医学は精神病は梅毒(ばいどく)が原因であるとし、梅毒を治すべく六百六号を注射するので、その結果右のごとく頭脳に異常のない者まで精神病にするのであるから、何と恐るべき錯覚(さっかく)ではなかろうか。

次に薬毒による病気中最も多いのは、胃に関するものであろう。この病気は最初食べ過ぎ、胸焼(むねや)け、消化不良等、ちょっと具合の悪い場合胃薬を服(の)むと一時は治るが、日を経(へ)て必ず再発する。また薬で治す、また起こる、というように繰り返す内(うち)ついに慢性となり、名のつくような胃病となるのである。したがって最初のとき自然に放っておけば一、二回で済むものを、右のごとく誤った方法を繰り返す結果、本物となるのであるから、その無智及ぶべからずである。またそのほかの二、三を書いてみると、よくある胃痙攣(いけいれん)は浄化(じょうか)のための痛みであり、これも一時的麻痺材(まひざい)で治めるが多くは癖(くせ)になり持病(じびょう)となる。次に胃潰瘍(いかいよう)であるが、これは最もハッキリした薬毒(やくどく)である。というのは胃の薬には必ず重曹(じゅうそう)が含まれているから、食物を軟(やわ)らかくするとともに、胃壁(いへき)までも軟らかくしてしまう。そこへ固形物が触れると亀裂(きれつ)し出血するので、これが吐血(とけつ)である。ところがそれと異(こと)なって胃の底部に血の溜(たま)る症状がある。これは前記のごとく胃の粘膜(ねんまく)に抵抗力がなくなるから、不断(ふだん)に血液が滲(し)み出るためで、これが糞便(ふんべん)に混って出る場合、黒色の小さな塊(かたまり)となるからよく分かる。すべて血液は新しい内(うち)は赤いが、古くなると黒色に変ずるものである。次に最も多い胃弱であるが、この原因は消化薬(しょうかやく)を用(もち)い、消化のいい物を食(く)いよく噛(か)むため胃の活動の余地がないから弱る。それを繰り返す内漸次(ぜんじ)悪化し慢性胃弱となるので、胃弱も人間が作ったものである。

次に頭痛に鎮痛剤(ちんつうざい)、鼻にコカイン、眼に点眼薬(てんがんやく)、扁桃腺(へんとうせん)にルゴール、あらゆる膏薬(こうやく)、塗布薬(とふやく)等々道理は一つで、いずれも一時的効果を狙(ねら)ったものにすぎないとともに、必ず中毒となるのである。また発熱の場合もそうで、放っておけば順調にだんだん解熱(げねつ)するが、解熱剤を用いると一時は解熱するが、反動的に再び発熱する。また薬で下げる。というように繰り返す内ついにすこぶる執拗(しつよう)な熱病となり、医師は困却(こんきゃく)し、原因不明の熱というが、右のごとく医師自身が作ったのであるから、原因不明なのも当然である。次に世間(せけん)よくある下痢服用も浣腸(かんちょう)も中毒的逆作用となり、ますます便秘(べんぴ)し習慣となるのである。また浮腫み(むくみ)の場合もそうで、利尿剤(りにょうざい)を用(もち)いると一時は尿量を増すが、必ず反動作用が起こって浮腫は前よりひどくなり、また利尿剤を用いるというようにこれも繰り返す結果、いよいよ膨満(ぼうまん)はなはだしく、止むなく穿孔(せんこう)排水を行うが、これも一時的で、ついには臨月(りんげつ)より大きくなり、医師も匙(さじ)を抛(な)げるのである。

次に薬毒(やくどく)の中でも、案外気がつかないでひどいのは、手術の際用いる消毒薬である。なにしろ殺菌力があるほどの劇薬(げきやく)であり、しかも直接筋肉へ浸透(しんとう)するから堪(たま)らない。種々の悪性病原となるので、最も多いのは激痛性疾患(しっかん)でかつ執拗(しつよう)であるから、治るにしても非常に時日(じじつ)がかかる。その他口内粘膜(ねんまく)の病気にしても、原因は何(なん)回もの服薬が浸透毒素化し、それが排泄(はいせつ)されようとして加答児(カタル)や腫物(はれもの)などを起こすのである。

以上種々の面から説いたことによって、病原のことごとくは薬毒であることが分かったであろう。故(ゆえ)にこのことを知って今後医師諸君が診断の際、この病原はいつ何の薬を服(の)んだか、いつ何の注射をしたか、いつどこを手術したかを患者に訊(き)けば、大体は見当がつくはずである。しかも薬というものの性能は非常に固まりやすく、排泄し難(にく)いもので、普通十数年から数十年、否(いな)一生涯固まったままであるのがほとんどである。私でさえ約五十年以前、肋膜(ろくまく)と結核(けっかく)を患(わずら)ったときの薬毒も、三十数年前歯痛(しつう)のため一ヵ年間毎日のようにつけた薬毒も、いまもって残っており、現在毎日自分で浄霊(じょうれい)しているくらいである。

そうして薬毒といっても洋薬ばかりではない。漢方薬も同様で、ただ症状の違いさがあるだけで、洋薬苦痛は尖鋭的(せんえいてき)であるが漢方薬は鈍感的(どんかんてき)である。なによりもあらゆる痛み、痒(かゆ)みの原因はことごとく薬毒(やくどく)であるから、人間薬さえ体内へ入れなければ、一生涯病苦の味は知らなくて済むのである。要するにこの薬毒迷信を打破しない限り、人類から病気の苦悩は絶対解決されないことを断言するのである。

(「アメリカを救う」昭和二十八年一月一日)

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