うっかり登ったら下山できなくなったオタクの『山河令』感想文33・34話
第33話『選択の機会』
選ばれなかった二人
趙敬が自分を切り捨てる発言をしたと知った蠍王。それでも、ほんの僅かでも義父の心に自分への情が残っていないかと「義父は何の迷いもなくそう言ったのか?それとも嘆いていた?」となおも聞きます。
千巧は「この期に及んでそれを尋ねて何になると?人の心を探るなどあまりに度を越しています」と諫めます。主が相手でも物怖じせず、駄目なものは駄目だと言えるのが千巧の強さですよね。こんなにも忠誠心があり、冷静に物事を判別できる千巧でさえも、想い人の前では血迷ってしまう……というのが恋の恐ろしいところです。
「博打で負け込んだ者は必死に口実を作り、夢でも逆転を狙う。私も俗人だったようだ。私は義父に機会を与えたかっただけ。自分にも機会が欲しかった」
蠍王は次こそは、と期待しながら、もう何度も趙敬に機会を与えてきました。それでも嘘を重ね、ついには「自分を殺して毒蠍を再編する」と決定的な発言をした趙敬。蠍王は今やっと諦めの境地に達したのです。悲しいね……。
蠍王は跪く千巧に、毒を完全に取り除く解毒薬と、毎月毒を抑制する薬の処方箋の二つを与えます。
「于丘烽にどちらを与えるかはお前次第だ。お前は不運すぎる。捨て置けない。だから選択の機会を与えてやろう。大切にせよ」
蠍王は自分と同じような境遇にいる千巧を哀れに思い、最後に慈悲を与えます。
蠍王の心は既に決まっていて、自分を裏切った趙敬を完全に自分の支配下に置くつもりでいます。でも、本当はそんなことをしたくはなかったし、できることなら趙敬自ら自分を愛してほしかったんですよね。
千巧にはまだその望みがある、自分には与えられなかった愛を得られる機会が残っている。自分にできなかった分まで、彼女には幸せになってほしい……そう願って。
蠍王と別れた後、千巧は蠍王に言われた通りに于丘烽に駆け落ちを提案します。
「このまま毒蠍の元にいれば、鬼谷討伐の先鋒隊を命じられて命を落としてしまう。それならここから逃げ出して、ひと月だけでも幸せに暮らしたい。私はもう今夜ここを離れることを決めた。だからあなたが選んで」と。解毒薬のことは隠したまま……。
優柔不断な于丘烽は答えを出すことができません。
コイツは本当に中途半端な奴だよ……!!
趙敬のような本物のクズにもなれず、悪に立ち向かおうという気概もなく、全てを捨てて恋に生きるだけの度量もないんだからよ……!
決断できない于丘烽を見て、千巧はもういい、と諦めて口を塞ぎます。
千巧は于丘烽が自ら自分を選んでくれることを望んでいましたが、それは叶わなかった。だけど一度は愛した人がこのまま毒に侵されて死ぬのは見たくないので、解毒薬を飲ませた上で彼に贈られた扇子を返して長く苦しんだ恋を終わりにしようとします。抑制剤を使おうとしなかったのは彼女の良心でしょうね。
迷って答えに窮していた于丘烽でしたが、千巧がよこしてきたものが解毒薬だと分かると「一粒だけか?お前は飲んだのか?」と千巧に聞きます。
偽りのない、千巧の身を案じての言葉───
望んでいた答えは得られませんでしたが、長く傷付いた千巧の心を掬い上げるには十分な言葉でした。彼の全てを得ることはできなかったけれど、彼の心の中には私を愛する心がまだ残っていた───
「その言葉ですべて報われた」
千巧は扇子を破り捨て「人生は長い、元気でいてね。貴方を忘れるわ」とだけ言って去ります。
悲しいな……せっかく蠍王も祝福してくれたのに……。
ここでなんとしてでも引き留めようと追いかけないのが、于丘烽という中途半端な男なんですね!!!すぐ解毒薬飲むし!!!!
未練タラッタラで扇子を拾い上げるところも含めて、最後まで不愉快な男だったわ于丘烽……!
武林の盟主
英雄大会が開かれている白鹿山。
鬼谷の討伐に向かう前に、誰が代表になるかを決める話し合いが行われています。
候補に挙がったのは清風剣派の莫懐陽と、五湖盟の盟主である趙敬です。二大巨悪が代表だなんて笑わせますよ……江湖の雑魚どもは目が腐ってるんじゃないですか?(暴言)
代表者を決めるならやはり武芸の優れた者がいいだろう、ということで二人は手合わせすることになります。が、自分の武芸に絶対の自信がある莫懐陽が手合わせで決めようと提案してくるの、流石にちょっとズルくないですかね???
趙敬の隣にいる蠍王は、黒ではない着物を着ていますね。薄い藍色の着物に、趙敬のモチーフでもある金の帯を締めています。本当は親子として彼の隣に立ちたかったんだろうな……。
莫懐陽と趙敬が手合わせしていると、玉砕する覚悟を決めた阿絮が乱入してきます。
目が据わっています。ここで絶対にお前を殺す!!!そして俺も死ぬ!!!という覚悟を決めて来てますからね阿絮は、ここに集った誰よりも覚悟が決まっています。
阿絮が趙敬の悪事を暴露したことで英雄たちが動揺する中、莫懐陽は手を緩めることなく趙敬に攻撃を仕掛け続けます。莫懐陽は趙敬によって高崇が陥れられたことを知っているので、好機と思ったんでしょう。
とその時、毒蠍の暗器が飛んできて莫懐陽の身体を傷つけます。これはおそらく趙敬を不利にするために蠍王がやったんでしょうね。
決闘に暗器を用いるなんて!と趙敬に非難の視線が集まり始めると、趙敬は標的を阿絮に定め、「あの男は言葉巧みに私を陥れようとしている!白鹿山では命をとして谷主を守った!私は奴の罠に嵌められた!」と訴えます。
阿絮はそれを聞いて鼻で笑い、怒りに満ちた目で趙敬を睨みつけます。
「手合わせを願おう。俺は四季山荘の荘主、周子舒だ。ご教授いただきたい」
阿絮は釘を全部抜いて、100パーセントの力で趙敬を殺しに来ています。ここで本当に阿絮と戦うことになっていたなら、趙敬はものの数秒で殺されていたのではないかと思うのですが、突然死んだはずの老温が「私も四季山荘の者だ。師兄、この一戦は私に譲ってくれ」と現れたため状況が一変。
このシーンの老温は全身白の着物を着ていますね!老温が初めて阿絮たちと出会った時に秦懷章師匠が着ていた着物にちょっと似ているのがエモい……!老温はここで初めて四季山荘の弟子であると公の場で名乗ることになるので、敢えてそういう着物を選んで着て来たのかもしれません。
鬼谷の温客行とは別人だと証明するために鬼3人が口を揃えて「見知らぬ男です」と言うのがなんだかお遊戯会のようで面白いです。いや~さすがにそれは苦しいでしょ……。
「阿絮、剣を貸してくれ。後で説明する(ここで、いいでしょ?と言わんばかりに上目遣いするの、めちゃめちゃズルイよこの子弟)」と言う老温に、黙って白衣剣を託す阿絮。
何が起こってるか分からず一人で戸惑ってる阿絮が可哀そうでたまらんのですが、大勢が見ている中だから問い詰められないんですよね……。
報い
老温が白衣剣を使って父が得意だった技を披露し、自分は甄如玉の息子であると明かすと、英雄たちには動揺が走ります。
趙敬は「公明正大な甄如玉の息子が妖魔のはずがない。これは離間策だ。長兄の高崇は鬼谷の策にはまり今も冤罪を晴らせない。皆の者、騙されないでくれ!」と叫びます。それを聞いた沈慎が「長兄の名を持ち出すな、恥知らずめ!」と罵ると、今度はあろうことか沈慎に罪を擦り付けようとします。ここまで言うことが二転三転すると、流石にみんなおかしいな、と気付き始めます。沈慎は呆れて言葉も出ません。
(おやおや、次はどんな言い訳をする気なのかな?言えば言うほど自分で首を絞めているのに、愚かな男……)とでも言いたげに笑っている老温の表情がいいですね~めちゃめちゃ馬鹿にしてる感じで。
その後も小怜、成嶺、鄧寬が次々に趙敬の罪を告発し、いよいよ言い訳も尽きた趙敬。英雄たちから「殺せ!」「生かしてはおけぬ!」と口々に罵られる中、小怜に襲い掛かります!
ここで真っ先に武器を持ってない女子を狙いに行くのが最低ですよねマジで……。
あっさりと老温に止められた趙敬。諦めず老温に斬りかかりますが、武芸の実力は完全に老温が上。次々に攻撃を浴び、打つ手がなくなります。
それにしても老温、初めて白衣剣を使ってるはずなのに強すぎない?もしかしてオタクが知らないところで武器の貸し借りとかしてたん?それとも知己パワーですか?
ここまで追い詰められても一向に罪を認めて謝ろうとはしない趙敬は「私は負けてはいない!滑稽なのはお前たちだ。20年以上も私に翻弄された。私は江湖に大波乱をもたらした!苛烈に死んでやる!」「すべては始まったばかり、私がもたらした暗闇の中で生きるがいい!」と老温を挑発します。
いや~~いっそ潔いくらいの悪ですね……ここまで貫かれたらむしろあっぱれですよ。
結局趙敬は手足の腱を切られて倒れます。ついに老温は、かつて父が苦しんだのと同じ痛みを仇である趙敬に与えたのです。
ようやく念願を果たした老温は、まず真っ先に阿絮に視線をやります。
阿絮は老温が死を偽装したのを知らされてなかったせいで身体が大変なことになっているのですが、それでも子弟が復讐を果たしたことに対してよかったな、と微笑んでやります。優しいし健気だ……。
一方の蠍王。
倒れて動くこともままならない趙敬に薬を差し出します。素直に薬を飲み込んだ趙敬でしたが、様子が変です。
「義父上、あなたは弁が立ちます。あなたの言葉にほだされてしまう。だから今後はしゃべらぬように」
蠍王が差し出したのは、趙敬が言葉を発せないようにするための毒薬でした。私に真実の言葉をささやいてくれないのなら、もう言葉は必要ないでしょう?言葉を失った趙敬は、もはや嘘をつくことも、得意の策を弄することもできなくなりました。
息子を裏切った代償は大きすぎましたね。
決着
「剣を返す。家に帰ろう。戻ってからちゃんと説明するさ。煮るなり焼くなりご自由に」と言って白衣剣を差し出す老温を、阿絮は睨みつけます。
お前のせいでこっちはあと5日の命になっちゃったんだが……!?責任取れよ!!とは言わない阿絮、本当に優しいですよね……いやもう怒る気力すらないのが本当のところかもしれないですけど……。
全ての元凶の趙敬を成敗してさぁ一見落着!かと思いきや、納得していない人が一人いました。
清風剣派の莫懐陽です。
英雄大会で武林の盟主の座を手に入れるつもりだった彼としては、このまま谷主を帰すわけにはいきません。「そもそもここに集まった英雄たちは趙敬を退治するために集まったのではない。鬼谷の鬼を討伐する目的で集まったのだ」と阿絮たちを引き留めます。
しつこく老温を責める様子から、莫懐陽は高崇の無実を晴らすのが目的ではなかったのだと分かりますね。
やっぱり自分のためだったんじゃん……!!
「父君が落ちぶれたのは迫害されたからではない。魔王容炫の片棒を担ぎ、武庫の秘密を隠したからだ。だからお前を成敗する」と主張する莫懐陽。いやお前がそれ言う!?お前だって今瑠璃甲3つ隠し持ってるだろ!!!!怒
当然ですが阿絮は老温を庇います。「子弟を倒したいならまず俺を倒せ」と前に出る阿絮、男前だ……!
俄かに空気が悪くなってきた白鹿山。どうやって決着付けるんだよこれ……と思っていたら、「でしゃばるな」と葉先輩が現れます。
剣仙である葉先輩には大会に集まった全員が頭を下げます。流石の貫禄ですね!あの莫懐陽すらも「どうか我々を率い、鬼谷の討伐を」と下手に出ます。
「鬼谷は滅ぼさなくてはならない」と葉先輩は断言しますが……。
第34話『赤い糸』
先輩の沙汰
全員の注目が集まる中、葉先輩は老温に「許しがたい罪だ。何故掟を破って鬼どもを江湖に放った」と問い詰めます。
老温がすぐに罪を認めて謝罪すると、「今から永遠に鬼谷を封じろ。すべての鬼は二度と人の世に現れてはならぬ」と命令。「100年後にはすべてが風化する。一件落着だ。英雄大会は終了する」と言って散会させます。
納得していない様子の莫懐陽でしたが、剣仙の言葉には従わざるを得ません。
このことが後々遺恨を残してしまうのですが……莫懐陽があんなに執念深くて頭が固い男だったなんて、清風剣派の人たちも分からなかったんだろうな……。
事の真相
四季山荘へ帰ってきた一行。老温が宿願を果たしたことを祝って祝杯をあげています。
阿湘はここ数日ずっと泣いてたんですよ!と老温が死を偽装していたことを怒りますが、趙敬に気付かれずに計画を進めるためだった、と説明。吐血するほど嫌悪感を露にしていた沈慎にも穏やかに話しかけています。このシーン、初見の時すっごいびっくりしたんですよね……いつの間にそんなに仲良くなったんだよ……!先に言えよ……!!!!まぁでも沈慎からしたら尊敬する義兄の息子なんだからそりゃ可愛いよね……。
皆が喜んで、幸せに笑っている。そんな中、阿絮だけが暗い顔をしています。
(天意は人を弄ぶ。老温は復讐を果たしついに平穏を得た。だが私に残された時間は僅かだ)
老温は老温で、長く晋王に捕えられて心にも身体にも傷を負わされ、しかも釘の治療を終えたばかりの阿絮には絶対に心労をかけたくないと思ってたんでしょう。自分がしでかしたことの清算をするべく一人で頑張ったんですよね。あんなに谷主だと知られたくない、いつ成嶺に明かしたらいい?とメソメソしてたのに成嶺と沈慎に一人で話をつけに行って、下手したら殺されるかもしれない葉先輩のところにも自分から出向いて協力を求めて、蠍王とも話をつけて、鬼達にもいろいろと下準備をさせて……ってすごく大変だったと思います。
ただ、老温は「阿絮に自分がどれだけ愛されてるか、阿絮の人生に自分がどれだけ欠かせない存在になっているか」を少なく見積もりすぎなんですよ!!
老温は以前「お前を失ったら私は寂しい片割れになる」と言って阿絮に「勝手にしろ」と返答されてるので、その時のイメージのままで時が止まってしまってるのかもしれないのですが、とんでもないことですよ。阿絮の愛は、もはや生きる理由=老温、老温が死んだら後を追うレベルのBIG LOVEにまで育ってしまってるんですよ!!!
まぁこれは阿絮も同じで、老温にとって自分がどれだけ大事な存在なのかを読み違えてるので老温を置いて最終回で一人出奔してしまうのですが……。要するに、お互いが『あいつは強いから自分がいなくなってもきっと大丈夫だろう』と過信しあってるんですよね。全然そんなことないのに……こいつら本当に似た者知己だよ……。
ところでこのシーンの阿絮は普通にお酒飲んでるっぽいんですが、大巫的にオッケーなのでしょうか……治療後に悪化してる様子もないしめでたい席だから今日くらいはヨシ!ってことで許可したんでしょうか。
この世で唯一の家族
口もきけず、動くこともできなくなった趙敬。五湖盟の盟主としての権威も、これまで積み上げてきた信頼も、全てを失った哀れな男を、それでも蠍王は義父として尊重し、美しい着物を着せて冠をつけさせ、爪を整えて丁寧に世話をさせています。
ここ、下男(部下かも?)に趙敬の爪を整えさせてるのがなんか好きなんですよね。蠍王は別に趙敬のお世話を自分でしたい訳じゃなくて、あくまでも綺麗で美しい義父の幻影のみを愛してるんだろうなという印象を受けました。
「私は寝たふりをしていたかった。何も考えず騙されていたかった。だから親子でいられた」とぽつりぽつりと零す蠍王。最初は穏やかな口調でしたが、次第に激高して声を荒げます。
「私が温客行と組んだのは、あなたが得意の絶頂にいる時にこの手で突き落として思い知らせるため。いつどのように引きずりおろすのも全て私の意のままだと!」
こんなにも激しく感情を露にする蠍王は初めて見ます。それだけ趙敬への愛が強く、また裏切られたことへのショックは大きかったのです。
一通り怒りをぶつけた後は、態度を一変させ、静かに趙敬に擦り寄り「義父上、半生を権謀術数に明け暮れむなしいでしょう。今後は気楽な余生を送ってください。息子としてしっかりお仕えします」と恭しく盃を口元にやり、濡れた唇を拭ってやります。趙敬はまともに飲めてなさそうだけど、そんなのお構いなしで盃を傾けているのが彼の独りよがりな愛を感じますね。
蠍王は優しく体を抱き寄せて言います。
「気が向いたら晋王など殺してしまって、あなたを上皇にしてあげる。」
と、とんでもねぇこと言い出したぞこの子……真のラスボスが爆誕してしまった……。
趙敬が一筋涙を流していますが、これはどういう感情なんでしょう。
息子を蔑ろにしていたことに対する懺悔の涙でしょうか、もっと早く蠍王を始末しておけばよかったという後悔の涙でしょうか、それともただただ自分の哀れな境遇を嘆いているんでしょうか。
いろんな意味にも取ることができて、とても味わい深いシーンです。ここは人によって解釈が分かれるところでしょうね。
罰杯
成嶺は「失礼ながら私からの罰杯です。師叔の生い立ちや苦悩を私に黙っているとは。私と師叔の絆を信じられぬのですか」と言って阿絮に盃を差し出します。お、お前強気だな……!?まずお前が計画のこと黙っててごめんなさいって言うとこじゃないのか!?
老温は「その罰なら私も受ける」と近寄りますが、阿絮は「俺の弟子が俺の与えた武器で目の前でお前を殺したんだぞ!?なぜ黙っていた、俺が信じられぬのか!?」と怒ります。そりゃそうだよ……怒るの当たり前だよ……。
慌てて沈慎と大巫が弁解しますが「あなた方には聞いてない」とバッサリ切り捨てます。しゅんとして座る二人がかわいい……でも二人にも心から反省してほしい。
阿絮は怒りのまま「どうだ、罰を受けるか」と老温に問います。
神妙な顔で「受ける」と答える老温、叱られた子どものようでかわいい……。師兄としての阿絮にここまで本気で怒られたのは初めてだから緊張してるんだろうな。
阿絮の命じた罰は「3壺干せ」というものでした。
どんな重い罰なのか、とハラハラしていた皆もそれを聞いてやっと笑顔になります。
阿絮、老温が自分に黙っていたことをものすごく怒っていたし、そのせいで釘抜いて寿命は縮んでるし、「俺に黙って勝手に何かしたら師兄の鉄拳が飛ぶぞ」と言ってたのに、結局そんな軽い罰ですませちゃうんだから本当に老温のことが大好きだし、大事なんだよね……。
老温の幸せ
罰を受けてすっかりべろべろに酔った老温。ふらつきながら阿絮の部屋までやってきます。
「阿絮、どこにいる?」「どこに行ったんだ?」「阿絮……」と姿を探してるのがすごくかわいい……。
阿絮が見かねて「倒れるぞ」と身体をささえてやってるのですが、ここで肩から落ちた老温の髪の毛を整えてあげてるのがめちゃめちゃ好きで……!!あまりにも自然な動きでさらっとやってるのがたまらん……!!
これ以上ないってくらい幸せそうな顔で、老温が「今日は本当にうれしい」と微笑みます。
「前回老いぼれ妖怪と飲み比べをした時は、心中とても苦しかった。お前の命が短いのかと心配でたまらなかったし、私を認めてもらえないのも怖かった。兄弟でいられぬのかと」そうだったね……本心を見せたら友と思ってもらえなくなる……って泣いてた(幻覚)もんね…。…
老温はかつての悩みを打ち明けながら、阿絮に抱き着きます。
「知らないだろう。私はこの世の全てを壊すつもりだったんだ、自分自身も含めて」知ってたよ……知ってたからお前を失って阿絮はお前の痛みを本当の意味で理解してやれてなかったって後悔したんだよ……!涙
「だがお前に出会った。まっとうに生きるのはかくも気が楽なのか。長かった半生で初めて味わう晴れやかな気分だ」
阿絮は玉砕を覚悟した時に「お前を変えようと思った。だが変えられたのは俺の方だった」と言ってましたけど、老温も確実に阿絮に変えられたんですよね……。
「父や母、私たちの師匠は皆こうなることを望んでいた。今では目をつむると両親や師匠の顔が見える。私にほほえんでいるのが見える気がする」師匠の墓前で泣きながら謝ってたもんね……。
まさに今が幸せの絶頂!という表情で瞳を閉じる老温を抱き寄せて、阿絮は震える手で頭を撫でてやります。
今まで長い間苦労してきてさぁ、やっと人並みの幸せを実感しはじめた愛しい子弟であり知己以上に大事に思ってる子にさぁ、「ごめん、俺あと5日で死ぬから」なんて言える訳がないよね!!!!!絶対泣いちゃうもんな!!!!!
眠ってしまいそうな老温を阿絮は寝台に運んでやります。手付きが優しいよぉ……!涙
夢うつつで「以前住んでいた家を探しに行きたい。一緒に行ってくれ。両親に会いに行こう」と言う老温に、阿絮は手を握って「分かった、一緒に行こう」と答えてやります。
老温は満足したように眠りにつきますが、阿絮はその約束はきっと果たせないだろうと思い、静かに涙を流します。ここの泣き笑いみたいな表情がもう悲しくてたまらん……お前の幸せを一緒に喜んでやりたいのに、お前の未来の幸せの中にきっと俺はいない……。
阿絮はずっと「知己のお前を相手に話せないことなどない」と過去のことも包み隠さず全て打ち明けてきました。「死なないでくれ」と懇願されても、安心させるために「俺は死なない」と嘘をついたりせず、「なるべくな」とそっけなく答えていたのに、阿絮は今日老温に嘘をついてしまったんですよね……。
それはそうと、この老温が抱き着いてるシーン、思い切り胸元に頭をうずめててびっくりしました。ガッツリ腰に腕が回してるし……阿絮、腰細すぎでは……!?
しかもここ多分阿絮の部屋ですよね!?老温を自分の寝台に寝させてあげるてけど、じゃあ阿絮はどこで眠ったの……!?
もう何も分からん、山河令の知己分からん
鬼谷の結婚式
蔚寧に嫁ぐ阿湘のため、老温は鬼谷で結婚式を挙げることにしたようです。
華やかな結婚式用の装飾品で飾りつけられた鬼谷に、阿絮と老温の二人がゆっくりと歩いてやってくるのですが……ぴったり寄り添って入場するのでまさか二人が結婚するのかと思ってちょっとビビりますよね(そんな訳はない)
老温は鬼谷の主らしい真っ赤な衣装に金の髪飾り、阿絮は青い衣装に老温からもらった簪をつけています。簪をつけるためにはいつもの一つ結びじゃなくて髪を整えて結ばないといけないはずですが、自分でやったのかな……それとも老温に結ばせたのかな……。大事なイベントだから敢えてつけてきたんでしょうね、かわいいな……。
娘たちに「周おじ上」と呼ばれてめちゃめちゃ不服そうな顔で「周おじ上とは俺のことか?」と聞く阿絮と、きょとんとした後でさっと目を逸らす老温がとてもかわいい……。
おじ上という呼び方を広めたのは阿湘でした。「周舒兄さん」という呼び方に変えた途端と、うんうん、と満足げに頷く阿絮がかわいい……。
じゃれてる老温と阿湘を見て微笑んでる阿絮、完全に身内に向ける慈愛の表情をしていてたまらないです……!
阿湘は老温の妹なんだからもう家族みたいなものだし、阿湘の旦那になる曹蔚寧も身内だし、弟子の成嶺はもちろん『うちの子』だし。ここにいる全員がもう阿絮にとっては『家族』なんですよね。
四季山荘の仲間達を全員喪ってしまった阿絮にとって、身内の結婚式に参列することがどれだけ喜ばしく嬉しいことであるか、想像に難くありません。本当に嬉しくてたまらないんだろうな……これからのことを話し合っている4人を遠くから見守っている姿もすごく穏やかです。
うまい麺
葉先輩は容炫の遺骨を両親の墓に葬るため長命山を目指していました。
道中また尋常でない量の食事をしています。
「長青、炫よ。お前たちの分まで食うぞ」と追加で麺を注文してますが、3の倍数の数のお椀が机に乗ってるのがいいですね。亡くなった二人の人となりは本編で詳しく語られないのですが、先輩がもりもり美味しそうに食べてることを喜んでくれてるといいなと思います。
嫁入り道具
花嫁衣装に着替えて化粧を済ませた阿湘を娘たちがまるで天女みたい、私も嫁ぎたくなった、と誉めそやしています。
まさか鬼谷でこんな穏やかな時間が流れることがあるなんてね……!涙
ところ狭しと並べられた嫁入り道具を見て喜ぶ阿湘に、老温は「通り3本を埋め尽くす行列を出すと言っただろう。今後も少しずつ足してやる」と得意げに笑います。
ここで老温が前髪を上げた髪型にしてるんですが、サイドを三つ編みにしてるのがかわいいです。ただ、この髪型の時に作中屈指のめちゃめちゃ辛いシーンがあるので、あまり良い思い出がないのですよね……。
山河令最後まで完走した後でメインビジュアル(円盤のパッケージとかに使われてるやつですね)を見るとなんで結婚式の時の衣装と髪型にしたんですか!?!?!?ビジュアル担当のスタッフには人の心がないのか!?!?!?!と思ってしまいました。
もっとあったでしょ……幸せなシーンがさ……涙
蔚寧の後悔
一方、新郎の蔚寧は人生に一度の晴れ舞台を前にめちゃめちゃに緊張していました。顔が強張っています!
「あの緊張ぶりを見ろ、成嶺。将来ああなるなよ」と呆れた様子で成嶺に語りかける阿絮。自分を指さしてるように見えるんですけど、中国語だと他にも台詞があるのかな?「師匠の俺に恥をかかすな」的なことを言ってたりするんでしょうか。
身内のめでたいイベントでテンションが上がってしまってるのか、阿絮が「そういえば高崇は小怜をお前の許嫁にしていたな。その気があるなら俺が話をつけるぞ?」と聞きくのに、成嶺がガチのトーンで「やめてください」と答えるのが面白いですね。阿絮って男女の感情の機微にはわりと疎いのかな……九霄の恋人が群主なのも全然知らなかったみたいだし……。
蔚寧は清風剣派の師匠たちに結婚を認めてもらえなかったことをずっと悔やんでいましたが、成嶺が伝えてくれた伝言で師叔は蔚寧と阿湘の結婚を祝福してくれているのだと知り感激します。
やっぱりいい人だよ師叔……師叔が清風剣派の代表だったらよかったのにな……。
お祝い
師叔の話をしていると、鬼谷のモブが蔚寧の同門と名乗る一団がお祝いに来ている、と伝えます。
師叔が結婚を認めてくれていたという話を聞いたばかりだったので、蔚寧と阿湘はきっと師叔が師匠を説得して駆けつけてくれたのだと思い、老温に門を開けてほしいと頼みます。
ここで老温が渋っているのを見て、それなら阿絮に説得を頼もう!とすぐに動いてるのがいいですよね~~~!老温は阿絮に弱い、というのはここにいる全員の共通認識なんですね……多分べろべろに酔ってた祝勝会でもみんながいる前で阿絮阿絮ってべったりだったんだろうな……かわいいね……。
「周おじ上!」
「おじ上?」
「……兄さん!」
のやりとりがもうほんとうにかわいい、たまらん……。兄さん、と呼ばれた後にこ~っとするのがいい。
阿絮が「二人の願いを聞いてやるといい」と説得してる間に阿湘と蔚寧が顔を見合わせてるんですが、阿湘の方はもう勝利を確信した笑みを浮かべてるのがいい。老温が阿絮のお願いを聞かないわけがないんですよね!
老温から開門の許可を得た阿湘と蔚寧はさっそく清風剣派の人たちを迎えに行くのですが……師叔や莫師兄の姿がありません。
阿湘は疑問に思いつつも、相手は蔚寧の師匠なのだからと愛想よく挨拶をしようとしますが、師匠である莫懐陽は開口一番に「こいつがお前をたぶらかした妖女か」と暴言を吐きます。
師叔も以前は阿湘のことを「妖婦」と呼び、「よくも蔚寧を攫ったな!」と怒っていましたが、蔚寧を心配するあまりに阿湘を責める言葉を口にしているように感じました。
ですが、莫懐陽の言葉はひたすらに蔚寧と阿湘を罵っているようにしか聞こえない冷たい響きをしています。
もうこいつの一挙一動すべてが無理だわ……作中で一番嫌いですコイツ(お好きな方いらっしゃったら申し訳ありません)
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