うっかり登ったら下山できなくなったオタクの『山河令』感想文35・36話

第35話『痴心妄想』

お祭り


「妖女」と罵られた阿湘ですが、(我慢しなきゃ。師叔と蔚寧のためよ)とぐっと堪えるのがつらい……阿湘にそんな風に考えさせてしまう莫懐陽が本当に憎くて憎くてたまらない
「師弟まで惑わすとは」「懐空は必死にお前たちの肩を持った」と言ってますが、きっと師叔は二人のために説得してくれようとしたんですよね……。でも、激怒した莫懐陽に殺されてしまった……。師叔から師匠に剣を向けることはなかったでしょうから、蔚寧にやったのと同じような方法で殺したんでしょうか。実の息子と子弟まで手をかけるなんて、お前に人の心はないんか?(ないよね)
蔚寧が息を引き取ったあと、阿湘は鬼谷に乗り込んできた武侠たちから奪った剣を手に莫懐陽に立ち向かいます。
丸腰だったんだよ……鬼谷の娘たちも新郎も新婦も……武器なんて何ひとつ持ってなかったし、戦うような服じゃなかったんだよ……。綺麗な髪飾りをつけて、おば上にもらった簪をさして、「ちょっと頭が重いわ」「でもすごく綺麗だ。似合ってるよ、阿湘」とか言ってニコニコ笑いあってるはずだったのに……。
結婚式を挙げられなかった自分が参列するのは縁起が悪いから、と言って裏山に向かっていたはずの羅おば上も武侠達の襲撃に合っていました。鬼谷の討伐にやってきた男たちの中には于丘烽の姿もあります。
彼は自分の華山派の掌門という立場を捨てられず、流されて鬼谷討伐に加わったのでしょう。ですが、千巧を見つけた途端に前に出て彼女を庇ってしまいます。
こいつは本当に中途半端な男だよ……!
結局恋心ごと于丘烽を忘れてしまった千巧に刺され、彼女もまた武侠のモブに刺されて命を落としてしまいます。
千巧の言う通りに二人で駆け落ちしていれば、こんなことにはならなかったかもしれないのにね……。

妹の願い

「旦那様」
「旦那様ではない。お前の兄だ!」
「兄さん、あいつを殺して。初めてのお願いです。絶対に殺して!」
初めての妹からの心からのお願いがこんなに悲しいお願いだなんてそんなことあるかよ……!!!涙
本当はこんなお願いじゃなかったはずなんだ……。兄さんに子どもの名前を付けてほしいとか、そういう優しい願い事だったはずなんだよ……!
息を引き取る阿湘を抱きしめて泣く老温のシーンはもう悲しくて悲しくて、何度見ても泣いてしまいます……。
二人の亡骸を並べて布をかけてあげた後、老温の瞳に憎悪が宿るシーンはゾクゾクしますね……老温は両親を殺された恨みの炎を20年燃やし続けた人ですが、大人になってからここまで人を憎んだのはきっと初めてだろうな……。
薬人の攻勢から逃げ出した莫懐陽、「まさか蠍王が私に策を弄するとは……」とかふざけたこと言ってますがコイツアホなんか???清風剣派に薬人を放った男やぞ???逆になんで信じた???
「莫掌門、あの世へお送りする」
莫懐陽に追いついた老温は問答無用で襲い掛かります。
ここの戦闘シーンは達人VS達人という感じで見ごたえがありますが、初見の時はもう一刻も早く莫懐陽の息の根を止めてほしい一心でそれしか考えられませんでしたね……。
最後には武器である扇すら捨てて素手で殺しにいってますが、手刀で剣折るのヤバいな……といつ見ても思います。力が強すぎる……。
阿湘を傷つけた剣をへし折った刃で反撃し、首を折って投げ捨てる、という作中でも屈指の暴力的な方法で莫懐陽を殺した老温。残酷な殺し方からも怒りが伝わってきます。
それでも「簡単に殺しすぎた」と言っているので、本当はもっと苦痛を長引かせたかったんでしょうね……。ただ莫懐陽は心は邪悪だが武芸の腕は立つという最低野郎なので、相打ち覚悟で殺すので精一杯だったと……。
本当に最後まで嫌な奴だったよ……。

莫懐陽との戦いで重傷を負った老温。阿湘との約束は果たしたものの満身創痍で木の根元に座り込みます。
1話の感想でもちょっと書きましたが、このシーンは阿絮と老温が初めて出会ったシーンと対になってるんですよね。変装していた時の阿絮と同じく左頬に傷が入っています。
「待っていろ、すぐに後を追いかける」
こらこらこら~~~~!!!だから一人で先に逝こうとするな~~~~~!!!!
妹の阿湘を喪って悲しんでいるのも、後を追いたいくらい辛いのもよくよく分かるのですが、阿絮がどんな気持ちになるか考えてほしい……!
とはいえ阿絮も阿絮で、老温の死(偽装でしたが)を受けて仇討ちして後を追おうとするほど思い詰めていたことを自分の胸に秘めたままにしているので、老温はそのことを知らないんですよね……。
阿絮は老温がかわいくて仕方がないので『(酒を)3瓶干せ』という罰のみで許してしまったけど、そこはしっかり怒ったうえで報連相の重要性を説いておくべきだったと思うよ……。
莫懐陽の瑠璃甲を奪いに来た蠍王は「日向ぼっこ中だ」と強がりを言う老温にとどめを刺そうとしますが、阿絮がそれを阻止。ここも1話とは立場が逆ですね!
あの時はお互いに正体が分かっていませんでしたが、阿絮は「我が山荘の者に手を出すな」とはっきり口にして老温を庇います。
「バカだな、なぜここへ?」と問いかける老温に、阿絮は「奇人め。死ぬ時は一緒だ」と即答。「奇人」というワードが出て来るのは瑠璃甲ばらまき事件の時「本当に奇人だったとは」と罵って以来ですが、あの時とは違い阿絮はとても優しい表情をしています。
「死ぬ時は一緒だ」ってものすごい愛の言葉ですよね……「地獄の釜で一本のねじり菓子になる」って老温が自分で言ったんだから、きっちり責任取れよな……!!
「二人は一蓮托生でも、私を巻き込まないでくれ」
「つまらぬ。興ざめだな」
感情が抜け落ちたような顔で呟く蠍王はきっと、二人のような一蓮托生の関係になれなかった自分と趙敬のことを思い出していたんでしょう。自分の意志で趙敬の言葉と自由を奪った蠍王ですが、自分が愛する人を支配できる代わりに、愛した人から永遠に手を差し伸べてもらえる機会を失ってしまった。蠍王の方から趙敬を守ったりすることはできるだろうけど、今後二人の関係が修復できたとしても逆は絶対にありえないんですよね。
一方的な支配と愛しか得られなかった蠍王にとって、愛し愛される関係を正面から見せつけられるのはしんどかろうなぁと思ってしまいます。
蠍王が去った後、老温が阿絮に向かって「お前には光が宿っている」「触れさせてくれ」と血に濡れた手を伸ばします。ここね~~~阿絮が寿命を縮めてなかったら、すぐに手を取ってあげられたのかなぁと思うんですけど……。
妹を亡くして、鬼谷もめちゃめちゃになって、その上自分まであと数日の命だって告げたら、老温は果たして生きる希望を見出せるのか?という葛藤があったから、すぐには手を握ってやれなかったんだろうな……。つらすぎる……最終話前にどん底に突き落としてくるの止めてほしいよ山河令くん……。


ついに揃う瑠璃甲

蠍王の元にはついに5つの瑠璃甲が揃いました。
鵬舉が久しぶりに登場してますが、やはり千巧の扮装と違って本物は脂下がった顔をしていますね。毒菩薩に対してもデレデレしている……これは間違いなく本人……!
千巧が戦死したことを知って驚く蠍王。きっと于丘烽と駆け落ちしていると思っていたんでしょうね……于丘烽が最後まで中途半端なことばっかりするから…涙


眠っている老温の前に、阿湘が現れて言います。
「父と母に会ったんです。あなたにお礼を伝えたいと言っていました」
老温が「疲れているんだ。後にしてくれ」「下がれ」とそっけなく返すと、阿湘は泣きそうな顔で笑いながら「兄さん、どうか体を大事にしてくださいね」と言って静かに去ります。
「旦那様」ではなく「兄さん」という呼び方にハッとした老温。そこでやっと夢だと気付き、去っていく妹の背中に向かって叫びます。
「阿湘、戻って来い!」
しかし阿湘は老温を残して消えてしまい──……

莫懐陽との戦いの後気を失った老温が見ていたのは、死んだ阿湘と再会する夢でした。阿絮が老温に酔生夢死の香を吸わせていたからです。
酔生夢死は望むものを見せる……ということでしたが、阿湘が亡くなっていることを自覚したまま夢を見ているのがなんともせつないですよね……。義荘では四季山荘に弟子入りして死んだはずの両親と共に暮らしている幸せな夢を見ていましたけど、何度も吸い込むうちに酔生夢死が効きづらくなってるんでしょうか。
このシーン、老温の涙を優しく拭ってあげる阿絮の手付きがとても好きです。手のひらじゃなくて手の甲でそっと触れるのがいいですよね……。
血を吐いてたはずの老温の口元や頬の傷が綺麗になってるので、これはきっと阿絮が拭いてあげたんでしょう。阿絮は血が嫌いだけど、老温のためならそんなんどうでもよくなちゃうんだろうな……愛だね……
鏡越しに阿絮の顔が映っていますが、とても辛そうな表情をしています。鏡越しのシーンというと簪を贈られたシーンを思い出しますが、あの時は心の底から嬉しそうに笑っていたのに、どうしてこうなっちゃったんだよ……涙


家族


七爺、大巫、成嶺、阿絮は墓前に集まっていました。蔚寧と阿湘のお墓です。
鬼谷は蠍王が操る薬人でいっぱいでしたが、阿絮が老温を、七爺と大巫と成嶺が蔚寧と阿湘の亡骸を運んでなんとか脱出したんでしょう。
結婚式を執り行うことは叶いませんでしたが、老温の妹とその旦那なら阿絮にとっても家族と同義です。埋葬に協力してくれた二人に頭を下げたり、「曹夫人にしよう。阿湘が喜ぶ」と言っている姿には身内に対する愛を感じます。本当は墓石に刻むのではなく、直接曹夫人と呼んであげたかったんだろうな……。
老温に酔生夢死を投与したと告白した阿絮は、成嶺に自分の代わりに老温の面倒を見るよう頼みます。
都合が悪くなるとすぐ酔生夢死投与する悪癖、そろそろ直した方がいいよ阿絮……絶対恨まれるの分かってるじゃん……!!九霄ともそれで拗れて死に別れたんじゃん……何回同じこと繰り返す気なんだよ……!!!涙
「顔を合わせられぬ」と言ってるくらいなので、悪いことをしている自覚はあるのでしょうが……。
阿絮が自分から釘を抜きとって寿命を縮めてしまったと知り、衝撃を受ける3人。ショックでふらついてる大巫を七爺が支えてあげてるのが好きです。
阿絮の命を助けたい一心で成嶺は「陰陽冊を探しましょう!」と言い出します。でも、陰陽冊に載ってる禁術って容炫にやった心臓を捧げる方法ですよね……?
師匠も師匠なら弟子も弟子なのよ……簡単に自分を犠牲にしようするな……!!
そういうとこやぞ四季山荘……!!!涙


第36話『天人合一/もう一つの結末』

武庫の真相

35話で情緒をめちゃめちゃにされたオタク、突然最終回で明かされる武庫のそもそもの来歴やら阿絮の父親の死の真相やらの新情報に大混乱です。
「晋王と私は沙陀族の末裔だ」
(沙陀族って何……!?)
「沙陀族は拓掲の王族に隷属を」
(拓掲の王族……!?!?)
「先祖は中原の果てに宝庫を残した。宝庫には天下安泰の秘密が隠され……」
(なんか急に話がデカくなってきたんだが……?これ最終回ですよね!?!?)
阿絮は「知らぬ間に天意を読んでいたのか……」と妙に納得した顔をしていますが、初見の時は情報量が多くてちょっとすぐには理解できなかったですね……ただ死を目前にしながら正義を全うしようと覚悟をキメてる阿絮が神秘的な美しさを放っていることしか理解できなかった……。
「玉砕しよう」の後とかこの最終回とかが特にそうなんですけど、自分の死を受け入れて剣を振るってる時の阿絮の異常な美しさ、マジでなんなんですかね。
涙を流す成嶺をやさしく抱きしめた後、「成嶺と老温は俺の家族だ。面倒を見てくれ」と言うところも気高くて美しくて見惚れてしまいます……。


旅立ち

旅立つ阿絮を見送りに出た3人。心配そうな3人を他所に、阿絮は吹っ切れたような清々しい顔をしています。ある程度は強がりも入ってるのでしょうが……。
「成功すれば悔いはなく、失敗しても正義に殉じただけ。いずれにしろ損はない」
そういうとこ……そういうとこだよ……なんでそんなに美しいんですか貴方は……。
大巫と七爺は全て納得づくとはいきませんが「後はまかせてくれ」と優しく送り出してくれるのに対し、子どもの成嶺は師匠の旅立ちを黙って見送るだけの心の整理ができていません。阿絮から託された老温への言付けを頑張って復唱するものの、涙が溢れてしまいます。
「出来損ないめ、泣き顔では師叔を欺けぬぞ!」と叱り飛ばす阿絮。師匠としてはかなりスパルタだったけど「出来損ない」って言葉で罵ったのはこれが初めてだよね……家族を心配するあまり強い言葉が出てしまったんでしょうが、弟子にかける最後の言葉がこれではよくないと思い直し、最後には「勝手にしろ」と優しく笑いかけます。
阿絮の気持ちを汲んだ成嶺が「練習を重ねます」と言うのが健気でたまらないです。文句ばかり言っていた成嶺がこんな殊勝なことを言うようになるなんて……しかも武芸を磨く修行とは全然関係ない嘘をつく練習だなんてね……。
ところで、阿絮が「成嶺、俺が何を最も心配していると?」とちょっと怒ってるところで大巫が心配そうにちらっと(荘主のこと止めなくても大丈夫…?)って感じの表情で七爺の方を見ているのですが、大巫本当にいい人だよね……お顔もかわいい……。

伝説の武庫

5つの瑠璃甲と鍵を手に入れた段鵬舉と蠍王は、ついに伝説の武庫にたどり着きます。
わざわざ馬車に乗せて動けない趙敬を連れてきていることに蠍王の執念を感じますね。だって武庫があるの雪山だよ……?絶対足手まといじゃん……。世話係だって何人も連れてこないといけないだろうしさぁ……。
20年という長い年月を費やして手に入れようとした武庫が、自分が捨てようとした息子によって開けられようとしている……趙敬は一体どういう心情だったんでしょう。
武庫の鍵を開ける大役をまかされた段鵬舉はウッキウキで瑠璃甲を嵌め、鍵を挿しますが……。
ここ挿す前から明らかに鍵穴と鍵の形状が合ってないように見えるんですけど、とりあえず挿してみてるのがなんか面白いんですよね……いや絶対違う鍵じゃんそれ……。
鍵が偽物だと気付いたそのとき、段鵬舉の背後に迫る影がありました。阿絮です!
元部下だろうが容赦なく一閃のうちに殺す!100パーセントの力を取り戻した上、死ぬ覚悟をキメている阿絮に怖いものは何ありません。瞳のハイライトが消えてるのがたまらんですね。逆に蠍王の瞳にはハイライトが入ってて、阿絮の方が悪役っぽいです。34話とは完全に優位が逆転しています。
「谷主はどこだ」
「(ガン無視)晋王は来ていないのか」
「周子舒、いくら腕利きでも生きて帰れると…」
「(蠍王の台詞を遮って)来てないようだな。まぁいい」
会話をする気が全くない阿絮がゾッとするほど怖くて綺麗で……生きて帰れるも何も、あと数日の命の阿絮にはもはや怖いものなんてないんですよね。
雪崩が起きても動揺一つせず、瞳を閉じて流れに身を任せる気でいましたが──そこへ老温がやってきて、阿絮の簪を抜き取って扉へ向かって投げます!
鍵ってそれだったんかい!!!!全然気づかなかったよ!!!!
もうこのまま死のう……みたいな虚ろな顔をしていた阿絮が老温の姿を確認したとたん、暗かった瞳に光が宿るのがいい……やっぱりお互いがお互いの生きる理由になってるんですよね……!!


武庫の中へ

雪崩に襲われかけた二人でしたが、武庫の中へ飛び込んだことで間一髪助かりました。
阿絮は「何故来た?」「怪我は?」とまず老温を心配してるんですが、老温の方はガチギレしています。「バカめ、今更気遣うのか?」「生死を共にする約束は!?」これ完全にお前が言うななんですけど、多分老温は莫懐陽と戦った後に阿絮が言ってた「死ぬ時は一緒だ」って言葉のことを言ってるんですよね……。
私はもう完全に阿絮の視点で物語を見ていたので「死を偽装するなんて危険な作戦やるなら一言相談しとけよ!!!!」と思ってしまってたんですけど、老温としては「私が阿絮を残して死ぬとかそんなことするはずないのに何で勝手に釘抜いたの!?私が信じられないの!?」って感じなんでしょうね。成嶺も「どうして師叔の生い立ちを黙っていたんですか?私と師叔の絆が信じられないのですか?」とか言ってたけど、子弟も弟子も自分が阿絮に愛されてるという自信があるわりに、愛ゆえに盲目になったり過保護になりがちな阿絮のことを見抜けてないんですよね(阿絮が上手く隠してるせいもあるかもしれませんが)
信じてないんじゃなくてただただ心配してんだよお前らのことを……!!!お前らのことを愛しているから……!!!
「あの簪は……」と自分の頭にあった簪を気にする阿絮がめちゃめちゃ可愛いというのは山河令のオタクにはもはや常識だと思うのですが、元部下を何のためらいもなく殺した人とは思えないくらい儚げな表情をしています。迷子のこどもみたいだ……。
そんな阿絮に対して「マヌケだな」と言い放つ老温、まだキレています。九霄にやったのと同じように自分に酔生夢死を使ったことにも怒ってるんだよね……。
「俺が簪を置いてきたら台無しだったな」
死地に赴くなら必ず身に着ける。周子舒の大バカ野郎。あの妖怪に感謝しろ!」
今度は大バカ野郎ときました。私にもらったものなんだから阿絮は絶対に大事にしてくれるはずだし、死ぬ時は塔当然身に着けるはずでしょ!?!?とキレながら訴えてるのがなんか可愛いですよね……。
「残される者の気持ちは?私が死を恐れると!?」
これもまた完全にお前が言うななんですが、阿絮の余命が短いと知った時「お前だけは俺に延命しろなんて言うな!」って怒られて嘆くことしかできなかった老温が、「残される方のつらい気持ち考えたことあるか!?」と怒れるようになってるのはすごくいいことだなぁと思います。あの頃は阿絮の方が立場的に優位に感じる時もありましたけど、今はもう完全に対等な関係になってます。
この後の明かりを灯すシーンでも
「周聖人、死を恐れないんだろ?今更死ぬのが嫌になったか?」
「誰だって生きていたいさ。お前と会えたしな」
と、阿絮が生きることに対してすごく前向きになってるのもいいですよね。
あのころも十分に知己といえる関係だったとは思うのですが、最終話を迎えた二人がさらに深い絆で結ばれた関係になっているのをしみじみ感じるシーンです。


真実

武庫の奥へ進んだ二人。陰陽冊や六合心法をはじめとする沢山の奥義書を見つけますが、それに加えて農耕に関する書物や農具、朽ちた穀物がたくさん保管されているのに気が付きます。
天下泰平の法の真実を知った老温は「晋王が真相を知ってどんな表情をするか見たい。絶対におもしろいぞ」と笑います。阿絮は「笑うな」とツッコむのですが、老温のお腹をトンと軽く叩く手つきが妙に優しくってクゥ~~~~~ってなってしまいますね……!龍淵閣に行ったときはもっと力強くどついてたじゃないのよ!!!まだ怪我が完全に治ってないだろうから気遣った結果なのかな。ほんの一瞬のなんてことないシーンなのに何回も繰り返し見てしまったわ……。

六合心法

食料もなく雪に閉ざされた武庫の中で死を待つのではなく、六合心法で永遠に生き長らえることを選んだ二人は儀式を行うことを決めます。
老温は葉先輩本人に六合心法のやり方をあらかじめ聞いていて、自分の命と引き換えに阿絮を助けるつもりでした。
阿絮が聴覚を失っていることを確認してから嘘を告白するの、狡いですよね……。
「お前も私を欺こうとした。今回の嘘は大したことじゃないだろ」
「残されたものこそつらく苦しい。お前は師兄だろ。引き受けてくれ」
普段は対等な関係でいるくせに、都合のいい時だけ子弟ぶる老温……阿絮も都合のいい時は師兄ぶるのでそこも似た者同士だなと思うのですが、この嘘は全然大したことじゃないよ……生死を共にする約束はどうしたってお前が言ったんじゃん……。
ここから老温が阿絮とのこれまでのことを振り返るのですが、最後に阿絮の「まだ体が動くうちに知己と各地をさすらい、詩を詠み、酒を飲みたい。それでこそ本望だ」という言葉を思い出しています。
かつてこの言葉を聞いた時、老温は「どこまで本当だ?」と聞き、阿絮は「虚実混交だ」と答えをはぐらかしました。でも今の老温はあの言葉はほとんど真実だったのだと理解しています。虚実混交という言葉こそが虚だったんですよね。
阿絮は五感を失っているので、酒を味わうことも、簫を聞くこともできません。六合心法が成功すれば五感は戻るそうですが、氷雪しか口にできないので食事をとることはできない……何かを得られれば何かを失ってしまう……何事も上手くいかないのが人生とも思うのですが、一度でいいから完璧なコンディションで二人でお酒を飲み、詩を詠んで、楽しく過ごせる機会があったらよかったのになぁ……と叶わぬ夢を見てしまいます。
老温は自分の真気を阿絮に贈ったことで、黒かった髪が白髪に変化します。
この感想文はネタバレありなのでもうぶっちゃけてしまいますが、老温のこの白い髪!!いいですよね!!!!だって愛の証ですよ!自分を犠牲にしてでも阿絮を生かしたい、というBIG LOVEの表れでもあります。阿絮は最初こそ自分を犠牲にしようとするなんて!と怒るでしょうが、雪景色に溶け込むような真っ白な老温の髪を見るたびに愛しさを感じるんだろうなと思います。
それはそれとして、初見の時は阿絮の手が滑り落ちる老温の手を見た瞬間どういうこと!?!?!?!何!?!?!?(絶望)って大層驚いたのを覚えています。
でも力なく落ちていく手を阿絮がとっさに握るのがいいですよね。35話では取ってあげられなかった手を、両手でしっかりと握ってあげてる!
2周目以降だと手を握っていることで明るい方へ物語が進んでいく予感のようなものを感じるのですが、初見の時はもうそれどころではなかったですね……。

御伽噺

大人になった成嶺がたくさんの弟子たちに武庫を巡る争いの昔話を聞かせてあげています。初見の時は全然気にしていなかったんですが「葛(万)古長青」という言葉が掲げられてるので、二人は永遠の命を手に入れましたよ、というヒントになってたのかな?よく見たら背景に雪山もばっちり映っています。
これは新しく再興した四季山荘ですよね、恐らくは。小怜が四季山荘にいるということは、沈慎はもう亡くなってるのかな……?(私が死んだら小怜を四季山荘へ迎えてほしいって成嶺に言ってましたし)義兄弟たちはみんな悲惨な末路を辿っていますが、彼だけはまっとうに老いて小怜や成嶺に看取られて亡くなっていてほしいなと思います。趙敬に陥れられた義兄弟たちもきっとそう願ってるはず……!
こんなに小さい子どもたちがたくさん弟子入りしてるなんて、成嶺は3つの流派の後継者としてすごく頑張ったんだろうな。
でも大人になって荘主になっても「もう完璧に習得しています!(ドヤ)」って言って師匠にどつかれていてほしい。


アナザーエンド

初見の時、阿絮が真っ白の服を着て出てきたので私は頭を抱えました。
駄目だ、終わった、と。
そう、私は陳情令と魔道祖師で学んでいたのだ……中国の喪服は白であると……
そして葉先輩が白い服を着続けているのも、恐らくは亡くなった知己を弔うためなのだと……(先輩の服に関しては私が勝手にそう思っているだけなのでもしかしたら違うかもしれないです)
阿絮が喪服を着ているということは、きっと老温はあのまま死んでしまったんだ……阿絮だけが永遠の命を得て、一人雪山に残されてしまったのね……

そう思ってたら、普通〜に出て来るんだもんな老温。私の涙を返してほしい(嘘です生きてくれててすごく嬉しいよ!!!)

この雪山の二人、オソロっぽいコーデなのめちゃめちゃかわいいですよね……!阿絮は簪をつけてて、老温の方は髪飾りなしで素朴なのがいい。阿絮の前では着飾らなくても気負わず自然な姿で過ごせるんだろうな。
武庫の鍵のかわりに老温が贈ってあげた簪だったらいいな~と思ってるんですが、どうなんでしょうね。
ここで鄧寬がいるということは、彼は恐らく小怜と結婚していて、一緒にいるのが息子なんだろうな。岳陽派の皆さんも四季山荘に住んでるんでしょうか?個人的に蔚寧の恋を応援していた祝邀之のその後が気になってるのですが、彼もどこかで元気にしているといいな。
「お前の年頃の我が弟子より数段上だ」
言われてるぞ成嶺!!!まぁ成嶺の素直な性格なら「私は四季山荘の弟子になる前は本当に武芸の力がなかったんだ」って自分から話してそうです。
「兵は詭道なり。変幻自在で予測できぬ技がいい。阿絮、また子どもを惑わしたな」
見つめあう二人……。
あの……見つめ合う時間長くないですか???
10秒以上見つめ合ってないか???
力比べを始めた二人は教えを請いに来た子どもの存在を放置して空へ舞い上がります。
いや子どもがかわいそうだろ!!!と思うのですが、子どもも鄧寬も特に気にしてなさそうなので多分いつものことなんでしょう。
ず~~~っと二人で雪山に引きこもっていて毎日顔合わせてるはずなのに、飽きずにやりあってるなんて、どれだけお互いにメロメロなんだよ……!!!
人とは違う時間で生きて、氷雪しか食べられず、雪山から下りることもできない、となると人によってはバッドエンドなのでは?と思うような人生です。実際葉先輩は永遠に生きることをやめて老化する道を選んでいます。
それでもこの二人に関してはバッドエンドとはいえないんじゃないかな、と思ってしまいます。
二人とも身内をたくさん亡くしていますし、全てが順風満帆のハッピーエンドとはいえないかもしれません。ですが、笑顔で両手を合わせている二人の横顔を見ると、二人だからこそ得られた二人だけの幸せのようなものがきっとあるんだろうなと。私は雪山二人を見ているとものすごい幸せを感じるのでそうだと信じたい。いやきっとそうです!
最後の両手を合わせてフェードアウトしていくラストシーンがすごくいい余韻に浸らせてくれるんですよね……。好きだ……山河令……二人のその後をいろいろと考えてしまうのも魅力のひとつかなと思います。
私は今(現代)もきっとどこかの雪山で二人仲良く暮らしているんじゃないかな、と想像しているのですが、他の皆さんの意見も聞いてみたいです。


終わりに

山河令36話分の感想文を書いてみて、私すごく老温のことが好きだな!?ということに気が付きました。私としては阿絮と老温、どちらも同じくらい好きだと思っていたのですが、感想文を自分で読みかえすと明らかに老温に関する記述が多いんですよね。
特に意識してなかったので完全に無意識なんだと思います。新しい発見でした。
あと、感想文を書くことによって山河令が好き!!!という気持ちがさらに高まったように感じます。感想文を書くために1か月くらいず~~~~~っと山河令見続けてたんですが、2周目で気付かなかったことが3周目になって分かったり、3周目で気付かなかったことに4周目で気付いたりしました。キャラクターとかストーリーに対する自分の中の解像度もかなり高まったので、今後創作活動にも生かせそうだな!とかなり手ごたえを感じています。
なので皆さんもぜひもう一度山河令を見て感想を書いてほしい……!人の感想はとても健康にいいので……!
感想文は書き終わりましたが私もまた山に登りたいと思います!山河令は日本語吹替版もあるのでね!吹替版はまだ1周しかできてないのでまた改めて登山したいなと思います。

ちょっと途中駆け足になったり誤字脱字があったりでお見苦しいところも多々あったのではないかと思うのですが(誤字脱字に関しては見つけ次第随時直していきます…)、この感想文が山を登る人の一助になったら嬉しいなと思います。
私はWOWWOWの再放送も終わってる謎のタイミングでハマって一人で登山したので、知らないこととか見逃してることが沢山あると思います。ここの解釈はこうだよ!とかこのシーン実はこういう意味があるよ!とか教えていただけたらとっても嬉しいです!
ここまで読んでくれている人が果たしてどれくらいいらっしゃるのか分かりませんが、最後まで読んでくださってありがとうございました!

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