うっかり登ったら下山できなくなったオタクの『山河令』感想文21・22話
第21話『夢幻泡影』
毒蠍と裏切り者たち
趙敬に仙霞派を滅ぼすよう命じられた蠍王は、さっそく鬼谷を裏切った鬼たちを呼びつけます。
鬼たちは「仙霞派と鬼谷は何も関係ない、何故自分たちがそんなことを?」と拒否しようとしますが、毒菩薩に毒を盛られ半ば脅される形で承諾します。
このまま趙敬についてよいのか?鬼谷を出るためにやったことで天下を敵に回しては意味がないのでは?と相談する4人の鬼たち。及び腰になり始めた急食鬼に対し、無常鬼は老温がどうやって谷主になったのかを語って聞かせます。
老温は鬼たちの目の前で前の谷主の皮を生きたまま剥ぎ、恐怖に貶めたうえで谷主になったのでした。
視聴者の視点だと、前の谷主は両親を殺した仇だし、子どもの老温に躾と称して鞭を打ったりしていたので惨い殺され方をしても仕方がなくない??と思うのですが、鬼たちってやたらとこのシーンの老温にビビってますよね。鬼たちからしたら両親の仇であることは猛婆湯で忘れてる(本当は覚えてるんですけど)はずだし、何年も谷主に従順にしていたのに、突然気が狂ったヤバい奴、みたいな印象なのかな。
このシーンの老温は谷主メイクしてなくて、まだあどけない感じです。衣装が白い着物なので血が目立ちますね。
こういう真っ白で薄着の衣装って、四季山荘で寝るシーンで着ていた印象が強いんですが、どういう状況で前の谷主を殺したんでしょう……?眠っているところに忍び込んで……とかそういう感じだったのかなぁ。
四季山荘へ
鬼たちが老温が谷主になったエピソードを語っていたそのころ、老温もまた昔の出来事を思いながら一人で森の中を歩いていました。ずっと阿絮たちの前から姿を消している訳にもいかないので戻ろうとするも、これまで鬼谷で過ごしていた時の清廉潔白とは言えない自分のことを思い出して足が重い……という感じです。構成が上手い……。
阿絮たちが焚火をしているところまで近づくと、ちょうど自分の話をしているところでした。
かつて甄衍を連れて四季山荘に戻ろうとしていた秦懷章でしたが、一時的に滞在先の村を留守にしなければならなくなり、戻ったときには村は焦土と化していたのです。九霄の拝師の儀式で3番目の弟子と呼ぶほど、秦懷章は甄夫妻と2番弟子となった甄衍を救えなかったことを後悔していました。そんな師匠の姿を見ていたからこそ、阿絮も甄衍がいなくなった後も子弟と思って生きてきたんでしょう。天窗で飾っていた梅の花の絵には、本当はもう一輪花があったのかもしれないですね。
「師叔はすぐに気づいた」と言う成嶺に、神妙な顔で頷く阿絮。あいつはすぐ俺に気が付いたのに、俺は気付いてやれなかった……という後悔があるのかな。
話の途中で戻ってきた老温を見て「師叔と呼んでもいいですか」と抱き着く成嶺。阿絮のことは抱き返さなかったし「子弟と呼ぶな!」と言っていたのに、成嶺のことは軽く抱き返して否定も肯定もせず頭を撫でてやるのが大人の対応でいいですね。
老温の願いごと
葉先輩は、「甄夫妻が不幸に見舞われたのは、自分の弟子である容炫のせいでもある。師匠として弟子の過ちを償うのは当然のことだ。願いがあるなら言ってみろ」と老温に言います。
最初は「言ってみろ」と上から目線だったのに、最後には「言ってくれ」と懇願するようになってるのが葉先輩の責任感の強さ、人の良さを感じます。
「死者をよみがえらせることはできないが、それ以外なら何でも叶える」とに言い張る先輩に、老温は「阿絮の元の寿命と武芸を残したまま七竅三秋釘の傷の手当てをしろ」と言い放ちます。驚く阿絮。
はい、ここでまた老温への好感度が上がりましたよ〜!
どこまで好きになるんだ……天井が見えねぇ……
「先輩は自分には無理だができる者に心当たりがある、四季山荘で私が戻るのを待て」と言って、戸惑う3人を置いてさっさと出発してしまいます。
阿絮の傷が治るかもしれない!四季山荘に帰れる!と言って喜ぶ成嶺と老温を見て、微笑む阿絮。
ああ~~ずっとこの三人で四季山荘で暮らしてほしい……暮らして……ほしかった……
于丘烽のたくらみ
于丘烽は千巧から昔の醜聞を触れ回ったところで意味はない、と忠告されたにも関わらず、趙敬に羅浮夢の存在を匂わせるという愚行に走っていました。も~~~なんなのこの男……いらんことするなよ……。
案の定趙敬は于丘烽が移送中の薄情簿主を奪ったのかもしれないと察しますが、すぐに殺そうと息巻く蠍王にはむやみに動くなと釘を刺し、もう一人の息子に于丘烽を始末するよう命令します。
このあたりからだんだん蠍王と趙敬の関係に不和が生じ始めますが、趙敬は全然気にしてないんですよね……息子の機嫌を取るくらいなんてことない、と思っているんでしょうな……。
子弟として、谷主として
四季山荘へ行く道中、街へ立ち寄った3人。
ここで衣装チェンジしてます!阿絮は薄緑の着物に黒い紐の髪飾り。白い大きめの丸襟が可愛い!
老温の方は笹の葉のような刺繍が入った青色の着物で見た目も涼し気。鹿の角のようなデザインの銀の簪をさしています。
老温はお酒を買いに、成嶺と阿絮は客桟を探しに二手に分かれます。すっかり師兄としてのふるまいをするようになった阿絮にまんざらでもない顔でパシられる老温でしたが、買い物の途中で薄情簿主の娘たちからのメッセージを見つけ、密かに会いに行きます。
これからどうしたらよいかと老温に指示を仰ぐ娘たち。老温が逆に問いかけると、どこにでも行けるというのに鬼谷に戻ると言います。
「命を救ってくれた薄情簿主に恩返ししたい、家と呼べる場所は鬼谷だけ」と続ける娘たちに、「鬼谷に入った以上は食うか食われるか。己の身も守れず鬼谷に戻りたいだと?どこへ行こうと勝手だが青崖山には入るな。背けば死を」と命令する老温。
これは裏を返せば「谷主の自分がいない鬼谷に戻ったところで武芸を身に着けていない女たちが生きていけるはずがない。それなら身を隠しながらでも外の世界で生きられるなら、その方がいい」という老温の優しさなんでしょう。阿湘のこともいずれは外の世界で生きられるようにしたいと考えていたようですし。
老温って鬼谷の外では自分の自棄酒に女性達を付き合わさせたりしてましたけど、薄情簿主の娘たちとは一定の距離感をきっちり保ってますよね。ビジネスライクというかなんというか……。鬼谷に帰ったときなんか、髪の毛梳かすだけでビビられてたし……。
いずれは鬼谷を出るつもりでいたから、あんまり頼られても困るって敢えて恐れられるような態度を取ってたのかな。
老温が客桟へ戻ると、阿絮から「どこに行ってた。聞き分けのない弟子の面倒見ろ」と命じられます。
成嶺から寝物語を聞かせてほしいと頼まれた老温は「おとなしかったのにすっかり調子にのってるな、甘やかしすぎた」と笑いつつ、自分が阿絮と出会うまでの話を物語にアレンジして聞かせてやるのですが……幼いころ阿絮と過ごした幸せなひとときをを「わずかばかりの蜂蜜の甘さ」と称するのがいじらしいです。今ふたたび阿絮と過ごせている今この瞬間のことも、わずかの蜂蜜の甘さだと思ってるんでしょうか。
わずかなんてかなしいこと言うな……二人とも苦労したんだからもっとたくさん甘い蜜を味わって生きてほしいよ……。
蠍王、艶鬼・喜喪鬼と出会う
趙敬からの命令を受け、于丘烽の隠れ家を襲撃したのは急食鬼でした。
好色な彼は艶鬼に襲い掛かり、于丘烽と隠れるより自分と来ないかと誘いますが「私に触れたら谷主が八つ裂きにするわ」と唾を吐いて拒否します。
この谷主への絶大な信頼感よ……!
薄情簿主の娘たちもだけど、阿湘も千巧も谷主への信頼と忠誠心が厚いですよね。逆に言うと鬼谷へ来るまでどれだけ虐げられてきたのかってことなんですけど、老温って本当に娘たちのことはちゃんと守ってあげてたし、娘たちの身に何かあった時はきっちり制裁を加えてたんだろうなぁ。
いよいよ危ない、という時に蠍王が毒菩薩を連れて現れます。趙敬にはすぐ動くなと言われていたのに、わざわざ自分で于丘烽の隠れ家へ足を運んでるのは、趙敬への愛ゆえなのか、もう一人の息子への嫉妬心なのか、それとも……。
「敬様、敬様」とうわごとを繰り返す薄情簿主の姿を見て、敬様とは趙敬のことではないか、と疑う蠍王に対し、下世話な発言をしたことで急色鬼はあっさりと殺されてしまいます。
「薄情簿主のことは見逃して、もう正気を失っている」と千巧が訴えているところへ、逃げていた于丘烽がやっと戻ってきます。戻ってくるくらいなら最初から逃げるなよ……この優柔不断男がよ……!!
瑠璃甲を差し出すという于丘烽ですが、千巧はあっさりとそれは偽物で、于丘烽のことは利用していただけだと明かし、蠍王に奴婢となり仕えると申し出ます。
蠍王はその申し出を受け入れて毒蠍の分舵へ二人を連れ帰るのですが……この二人を受け入れたのをきっかけに蠍王はどんどん趙敬の愛を疑い始めてしまうんですよね。元々おかしいな、と思っていた部分はあって見ないふりをしていたのを、感化できなくなってしまったというか。
蠍王が千巧のことを結構気に入っているのが好きなんですよね~。一度自分を裏切った想い人が愚かな男であるのを分かったうえで利用して、それでも一度焦がれた時の想いを忘れられずに傍にいるしかない……という、かなり千巧と蠍王は重なるところがあります。最後まで想いが報われなかったところも……。
鬼谷に滅ぼされた仙霞派
四季山荘への道中、茶屋で休憩を取る一行。
成嶺を見て太湖派にいた時よりも背が伸びた、と微笑む阿絮、すっかり師匠の顔をするようになりました。嬉しいね〜すくすくまっすぐ育ってほしいね〜。
そこへ趙敬の命令によって無残に滅ぼされた仙霞派の生き残りがやってきます。生き残り達が鬼谷の仕業だと語っていることで、世間で仙霞派は鬼谷が滅ぼしたことになっていました。
死体を見て気分が悪くなった成嶺を残して、老温と共に死体を見分した阿絮は、殺し専門の者の仕業であると見抜き、鬼谷が濡れ衣を着せられていると推測します。
容炫の剣に毒を塗った可能性がある義兄弟のうち、今も生きているのは沈慎と趙敬だけ。共謀によるものならいいが、片方のみが悪人なら無実の者は害せない、という阿絮に対し、老温は罪なき者などいないと言い張ります。
英雄大会では「過激すぎる」と諫めた阿絮でしたが、老温=甄衍と知った今は老温の怒りを理解することもできるため、口を噤むしかありません。
せっかく正体が分かったっていうのにまた微妙な雰囲気になってしまうのか……!?と思われたそこへ「旦那様!」と老温を呼ぶ明るい声が!
阿絮と老温の前に現れたのは阿湘と蔚寧の二人でした。
清涼剤!ありがと~~~~!!
第22話『連環計』
誰に感化されたのかな
四季山荘へ向かう阿絮・老温・成嶺に合流した阿湘と蔚寧。一緒にご飯を食べようと街へやってきますが……あの……師匠と師叔、なんか近くないですか?そんなにくっついて歩く必要あります?(あります)
浮浪者にお金を渡す阿湘を見て「身内は似てくるものだな」「一体誰に感化されたのかな?」と小首をかしげる阿絮、めっちゃめちゃかわいい……!阿湘が知らぬ間に蔚寧とすっかり仲が良くなっているのを知って憎々しげな老温との差が激しい!阿湘に行きましょうと手を引かれてる時の老温の顔が虚無すぎて逆にかわいいです。
「温殿は苦虫をかみつぶした顔だった。これから苦労するぞ」と笑ってる阿絮、本当に楽しそうでいいな~。
5人で食事
久しぶりに集まって机を囲んでいる5人。老温が阿絮を差し置いて上座に座ってるのがちょっと不思議なのですが、蔚寧と阿湘は阿絮と老温が師弟関係にあることをまだ知らないので敢えてそうしてるのかな?
「阿湘の献身的な看病」で目を細める老温、不機嫌なのを隠そうともしない!大人げないぞ!そんな様子を見て、老温の心情を察してる阿絮が良い……。
「毒を抜くために薬がいる。薬店に同行してくれ」と言う老温に黙って従う阿絮。蔚寧は「処方箋さえいただければ自分が」と立ち上がりますが、阿湘と成嶺は二人きりで話がしたいんだろう、という心情をくみ取って制します。一緒に旅するうちにすっかり空気が読めるようになった成嶺、できた弟子だね……えらいぞ……!普段から二人になりたいって時は成嶺が気を遣ってあげてるんでしょうね。
沈慎と再会
この二人、ま~たくっついて歩いてるよ……なんなのよその近さは……。
高崇からの信頼の厚い一番弟子であり、小怜の恋人でもあった鄧寬が英雄大会で高崇を告発し、その後失踪しているというのはあまりにも不自然です。老温はなかなか認めようとしませんが、状況から見て高崇を陥れるために黒幕がやったに違いないと阿絮は察します。
そんなとき、二人は偶然にも黒幕候補の一人、沈慎と鉢会ってしまいます。直前まで阿絮と楽しく談笑していた老温の表情が、沈慎を見た途端にすっと冷えて怒りに染まるのが良い……そしてそんな老温を見てさっと前に出て気遣い、守る態勢になる阿絮が素敵……!もうすっかり師兄の貫禄があります。
毒蠍の刺客
阿絮・老温・沈慎と、客桟で食事をとろうとしていた三人はそれぞれ毒蠍の刺客に襲われます。
ここで成嶺が修行の成果を見せるのがいいですね!きついスパルタに耐えてきたかいがあったよ……!「流雲九宮歩は完璧に会得しました!」と言ったのはあながち嘘ではなかったのかも。
阿絮たちはあっという間に敵を掃討しますが、沈慎は毒を食らってしまいました。ちくちくと嫌味を言う老温を制しつつ薬を手渡した阿絮に、沈慎は礼を言います。自分たちが襲われたなら、きっと成嶺も襲われている筈、と急いで駆けつけます。
一方、阿湘たちは店内に現れた敵を倒して逃げ出したものの、客桟の入り口にいた流れ者を阿湘がとっさに殺したことで蔚寧と口論になってしまいます。鬼谷で食うか食われるかの環境で育った阿湘と、一門の師兄たちから大事にされて育った蔚寧の考え方の違いが際立つ大事なシーンです。結果的にこの流れ者は丐幇の一味だったようなので、阿湘が殺したことは間違いではなかったのですが……。
逃げてきた3人と合流した阿絮たち。なおも追ってくる刺客たちを見て阿絮は「生き証人を残せ!」と言いますが、老温はそれをスルーして全員皆殺しに!反省してない感じで肩をすくめる姿はとても可愛いのですが、このへんも鬼谷育ちの人間らしさが出ています。
刺客から逃れて
街を出た一行は、外れにある空き家で休むことにしました。
阿湘は流れ者を殺したことを責められたのをまだ引き摺っていました。考え方の違いをはっきりと突きつけられてショックだったんですよね。蔚寧のことは好きだけど、あまりにも考え方も育ちも違いすぎる。このまま一緒にいたら、そのうち鬼であることが知られてしまうかも……。その不安が蔚寧を敢えて遠ざけるような言動をさせてしまうんですね。
でも蔚寧は「君の考えを否定している訳じゃない。だけど、罪のない者を殺せば君は後悔するだろ」「なんてひどいところで育ったんだ」とあくまでも阿湘を気遣います。蔚寧って本当にいい子だよね……師匠は性格最悪なのによくこんな優しい子に育ったな……師叔の教育がよかったんでしょう。
優しくされればされるほど、その優しさがつらい阿湘。蔚寧が呼び止めるのも聞かず飛び出して行ってしまいます。
沈慎の告白
沈慎は、かつて成嶺に辛く当たっていたことを謝ります。絡み酒したり瑠璃甲を出せって迫ったりいろいろやってたもんね……。
「お前を見ていると兄たちを思い出してしまう」「お前は兄上に一番似ている」って言い方がまた狡い大人だな~と思います。「タカがトビを生むですね」と自虐的なことを言う成嶺が悲しい……そんなことないよ……。
成嶺が阿絮に弟子入りしたのを知って改めて感謝を示す沈慎に対し、感謝はいいから知っていることを全て話せという阿絮、男前です。
沈慎は高崇が成嶺を大切に思うからこそ愛娘と結婚させ、盟主の座を譲ろうとしていたこと、元々20年前に瑠璃甲を壊すか全てを公表しようと提案しておりそれを義兄弟達で止めたこと、瑠璃甲の噂話に高崇は関わっておらず、鄧寬も本来ならあんなことを言う男ではないことを説明します。
話を聞いた阿絮は、老温にこのことを伝えようと席を外そうとしますが、ここで沈慎が「私の質問にも答えてほしい。温殿は五義兄弟の旧友によく似ている。温殿は──甄姓では?」と聞きます。
阿絮は沈慎に話すつもりはなかったのでしょうが、動揺した成嶺が茶器を落としてしまいます。
成嶺コラーーーーー!!!
バレバレだよ!そうですって言ってるようなものだよ!
阿絮は「話す義理はない」と否定も肯定もしませんでしたが、案の定沈慎は老温=甄衍だと察してしまいました。
老温の正体
老温の様子を見て来る、と言って出てきた阿絮でしたが、一人湖の側で佇んでいました。沈慎に老温=甄衍と知られてしまった件をどうやって老温に説明したものか……と考えているんでしょうか。
阿絮の後ろ姿を見つけた老温はそっと近づいて驚かせようとします。が、阿絮はしっかり気が付いていました。隙あらば急にいちゃつきだすのやめてもらっていいですか?びっくりするんですよオタクは
沈慎の話を聞いた阿絮は鄧寬は操られていたのかもしれない、薬人の操縦法とも関係があるかも、と語ります。それを聞いた老温は「薬人がいたのは毒蠍の分舵と龍淵閣。義荘の一件は長舌鬼の仕業で、背後には毒蠍がいる。沈慎は裏表がないし、毒蠍の首領は趙敬かも」と自分の推測を述べるのですが、うっかり十大悪鬼の長舌鬼の名前を出してしまいました。
阿絮は(あ?長舌鬼?初めて聞いたぞおい……)と訝しんでいますが、老温自身はそれに気が付いていません。阿絮に自分が甄衍だと知られてしまったことで気が緩んだのかな?
たっぷり時間をかけて「長舌鬼とは誰だ?」と尋ねる阿絮の表情も、一瞬ぽかんとした後に瞳を揺らして自分の失敗に気付く老温の表情もいいですね~~~好き。
阿絮はこの件で老温が鬼谷の人間であることをもう察してるのですが、「ああ、義荘で薬人を操っていた男だな。俺は十大悪鬼だってことしか知らない」と敢えて老温が言い訳しやすいように誘導してあげてるのが良い……。
老温が自ら打ち明けていない以上、気付いても黙っていてあげるのが阿絮の優しさであり、「お前を信じる」と言った阿絮の覚悟なんですよね。お前が自分から話すまで俺は待つぞ、という。は~~~男前だよ阿絮……。
阿絮の思惑通り早口で長舌鬼の説明を始めた老温に「そうだったのか。やはりうちの老温は見識が広い」と肩を叩いて立ち去る阿絮でしたが、老温の方は浮かない表情です。危うく鬼谷と自分のことがバレるところだった、もっと気を引き締めないと……と反省してるんでしょうか。感情が抜け落ちてしまったような表情が印象的です。
突然の風呂
そして始まる突然のお風呂のシーンですよ。
えっこのシーンいる???(いります)
初見の時はあまりにも突然差し込まれるサービスショットに戸惑いましたが、内容自体はすごく真面目なシーンなんですよね。
四季山荘の二番弟子である甄衍も老温であり、鬼谷の谷主である老温も温客行に変わりありません。でも、老温は鬼と人の道は交わらない、と信じているからこそ、鬼である自分を阿絮に知られたくない。
自分を嘘と衣で覆った姿だからこそ、阿絮は自分を信じて知己として一緒にいてくれている、と思い込んでいる温客行にとって阿絮に裸のままの自分の姿を見せることはまだできない……という隠された意味があるのかどうかは知りませんが、とってもお肌がきれいで均整のとれた体で素晴らしいなぁ~と思いました。
連環計
成嶺が阿絮・老温・葉先輩と共に龍淵閣にいること、龍親子が死んだことを蠍王に聞かされた趙敬、武庫を開けられる人間がいなくなったというのに気にした様子はありません。なぜなら趙敬は瑠璃甲の他に武庫を開けるのに必要な鍵がどこにあるのか知っていたからです。最低だよ……。
鏡湖派滅亡から始まった様々なたくらみは全て趙敬の策であり、唯一のイレギュラーは老温がばら撒いた偽の瑠璃甲の存在でしたが、想定よりも早く高崇を陥れることに成功し趙敬は上機嫌です。
蠍王は好奇心から「どうして高崇を憎むのか」と尋ねますが、これは趙敬の地雷ワードでした。急に饒舌になった趙敬は声高に義兄弟を責める言葉を述べ、自分が盟主としておさめてこそ五湖盟は繁栄するのだと叫びます。
趙敬の豹変ぶりに若干引いてる蠍王が可哀そう……息子って義父のメンタルケアまでやらされんの?最悪じゃん……。
失言でした、と膝に手を置いて謝る蠍王の手をどかして「もっと大人になれ」と諭す趙敬、お前が言うなすぎる。高崇や容炫のことを聞くたびに激しく激高したり、酒に酔って位牌に唾を吐いたりお小水かけてるような人の方がよっぽど子どもっぽいなと思うのですが……。
老温の苦しみ
阿絮が夜空を眺めていると、阿湘が外の机にお酒を用意しているのを見つけます。これ幸いとばかりに瓶を奪って飲む阿絮。本当にお酒大好きだよね……。
阿湘は蔚寧と喧嘩(というほどのものでもないのですが)をしているのを引き摺っていて眠れず、老温を真似をしてお酒を飲もうと考えたようです。
「旦那様は気落ちするたびお酒を飲むけど、どのみち機嫌は直らない」と言ってますが、阿湘はお酒を飲んで管をまいてる老温の駄目な姿をきっと何度も見てるんですね……谷主として常に命を狙われるような場所で生きていた老温ですが、弱ってるところを見せることができる阿湘のような子が傍にいてくれたのはものすごい救いだったでしょう。
「酒の別名は忘憂散だ。1本で憂いが晴れねば、2本飲めばいい。それでだめなら3本か4本だ」という阿絮、完全に酒クズの理論なんよ。
「あなたが死んだら旦那様が悲しむわ」「唯一の友人よ死んじゃダメ」と懇願する阿湘にもやっぱり黙っている阿絮、きっと嘘をつきたくないんですね。
盗み聞きしていた老温が現れると阿湘は阿絮から酒瓶を奪って渡します。ここで阿絮が「あっ」って反応してるのがかわいい。お酒大好きだよねほんとに……。
ここで「妻になり母になろうとつねってやる」と言ってる老温が完全に兄の顔をしていてとても好きです。笑ってる阿絮の顔も優しくて良い。
ここまではとても和やかな雰囲気だったのですが……沈慎が現れて状況が一変します。「温殿」と呼びかける沈慎の気遣わし気な表情を見て、老温は沈慎が自分の正体が甄衍であると知ったことを悟ります。
「クソ成嶺、お前が教えたのか?」と聞かれた成嶺は「違います。おじ上が言い当てたんです」と答えますが、どう考えてもお前が動揺したせいでバレたよ……そりゃ老温も「愚か者!」って言うよ……。
「衍、父と母は息災なのか」と聞く沈慎。老温はトラウマを刺激され、再び頭痛に苦しみ始めます。
沈慎さ~~~~~状況からして分かるようなことをわざわざ本人に聞くか~~~~!?!?!?そういうとこだよもう……
「息災だと思うのか!?」と激高する老温を見て、「すまなかった」と首を垂れる沈慎。しかし老温は「遅すぎる。二人の耳に届くことはない」と拒否して突き飛ばします。
慌てて間に入る阿絮。「なぜ奴を守る!?」と叫ぶ老温に「お前を守ってる」と返す阿絮。蔚寧が阿湘に「君の考えを否定している訳じゃない。だけど、罪のない者を殺せば君は後悔するだろ」と諭していましたが、全く同じことを阿絮も老温に対してやっているんですね。好きな人に傷付いてほしくないから……。
「もう手遅れだ!二人は死んだ。甄衍も一緒に死んだんだ!」
老温の心からの叫びがつらい……。不自由な逃亡生活を強いられつつも両親と共に暮らし、四季山荘の2番弟子となった甄衍のままでいられたらどんなに幸せだったでしょう。でも、家族を殺されてたった一人復讐を誓って鬼谷に入った彼は、何も知らない無垢な甄衍のままでは生きていけなかったんです。それまでの考え方も生き方も全部捨てて、江湖に復讐するためだけに苦汁を舐めながら生きてきたんです。老温の苦しみも悲しみも何も知らない沈慎が甄衍と呼びかけていいはずがないのです。
それなのに沈慎は追い打ちをかけるように「衍、お二方はどんな最期を?」と聞きます。
空気を読め!!!今聞くことじゃないだろ!!!!!いい加減にしろ!!!!!(怒)
「もう遅い、手遅れだ」とうわ言のように呟き、血を吐く老温。
老温は以前自分の人生を「時宜にかなわない」と評していましたが、両親を殺されて以降、もう何度もこの言葉を繰り返し思って生きてきたんでしょうね……。
孟婆湯が忘れさせるのは「飲んだ人間の一番強い執着」ということですが、老温が忘れてしまったのは、両親を殺した憎い鬼でも、両親を陥れた趙敬でもなく、「自分が趙敬を家に招き入れたこと」でした。このことは老温の自罰意識の強さをよく表していますが、自分の言動がきっかけで両親が死んでしまったなんて、まだ小さな子どもだった老温にとってどれだけ辛く苦しいできごとだったのかと……。
阿絮はぐったりする老温を座らせ、唇についた血を拭ってあげます。血が嫌いな阿絮がわざわざ自分の着物の袖で血を拭うという行為には、とてつもない愛情を感じます。
「すまない」とだけ口にして意識を失ってしまう老温を抱き寄せる阿絮。
「すまない」という一言にはきっといろいろな意味が含まれているんでしょう。「お前を信じる」と言ってくれた阿絮に谷主だと黙っていること、2番弟子として自分を受け入れようとしてくれることに素直に応えられないこと、阿絮に止められようと復讐を遂げたい気持ちを諦められないこと、老温を苦しめているそそれら全てを、阿絮は受け入れてやりたいと願っていて、でもまだその方法が分からないんですよね。余命問題もまだ解決してないし……。
黒幕の正体
老温は翌朝になってもまだ目覚めていません。
この期に及んでまだ「衍」と呼び続ける沈慎を阿絮は咎めます。空気を読めマジで……。
老温が四季山荘に弟子入りしていたと知り喜ぶ沈慎でしたが、高崇の剣に毒を塗ったのかと聞かれて激高します。「確かに自分は容炫を見殺しにして甄夫妻が苦難に見舞われても座視していたが、義兄弟に手を下すことはしない!」と言い切る沈慎はうそをついているようには見えません。
そうなると、黒幕が誰なのかはもう考えるまでもありません。五義兄弟の生き残りであり、現在五湖盟の盟主となっている趙敬です。
沈慎はそんな馬鹿な、衍に説明させろ、と喚きますが、阿絮がそれを制します。傷付いた老温のために本気で沈慎を怒る阿絮のなんと美しいとか……美人って怒っても美しいんだなぁと見惚れてしまいます。こんなに大切に想ってもらってるなんて、老温は幸せ者だ……。
それにしても、これだけ言われてもまだ「衍」と呼び続ける沈慎、さすがに図々しくない?そりゃ阿絮も怒るよ……。
「二度と会わないことを願う」「成嶺、俺の代わりに客人を見送れ」と命じる阿絮、冷たい他人行儀な態度が怒りを強調しています。
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