2015年10月18日の講演「内側から見たレビー小体型認知症」(①うつ病と誤診されていた頃)

<75分間の講演を文字起こしして下さった方がいらっしゃいましたので、ここに掲載します。>

(略)今、本当に認知症って全然特別な病気じゃなくて、癌も2人に1人がなりますが、認知症も長生きをしたら、90、100まで生きたら、ほぼ全員認知症になりますから、認知症って別に特別なものではなくて、老化とすごく被っているんですね。
アルツハイマー病も、すごく老化と被ってて、100歳の人が二十歳の人の脳と同じであるはずがない。皆、脳も縮んでますし、皆いろんな機能が落ちているんですね。なので全然特別なものではないということをお伝えしたいんです。(略)

 < うつ病と誤診され、誤った治療で悪化していた6年間 >

(スライド)これが、私の経過です。本(「私の脳で起こったこと」)を読んで頂くとよく分かるんですけれども、私が調子が悪くなったのが14,5年前から。30代の終わりからです。
なんだかいつも調子が悪いな、怠いし頭は痛いし。なんかおかしいなってずっと思っていたんですけれども。

30代の終わりから幻視も見ました。車に女の人が乗っているんです。わっとびっくりすると消えるんで、目の錯覚だと思っていて、よもや幻視とは一度も思いませんでした。でも同じ車の同じ所に同じような人が何度も何度も見えるんですね。で、変な目の錯覚だな、気持ち悪いなと思っていました。幻視が見え始めた頃は、本当にまだ健康な状態で、なんの異常もなかったですね。ただそれが見えるというだけで。

あと、悪夢を見てうなされるとか、殺される夢を見て叫ぶのは、レム睡眠行動障害といって、前触れの症状なんですけれども、それはありました。

でも幻視は幻視とは思っていませんでした。そういう方はとても多くて、幽霊だと思って神社に行ってお祓いされた方、多いですね。私は幽霊だとは思わなかったんですけれども。全く正常な状態で見えますので、まあ幻視とは、誰も思わないですよね。誰も病気だとは、自分では思わないと思います。

で、私、ある時から全然眠れなくなりまして、それから頭が割れるような頭痛が毎日毎日。動くのも大変っていう倦怠感もあって受診しまして、うつ病と診断されました。誤診されたわけですね。
抗うつ剤で治療を始めました。レビー小体型認知症っていうのは、薬に対してひどい副作用が出やすいという特徴がありまして。85%くらいの方がそういう特徴を持っているっていうんですけれども。

抗うつ剤を医師から「これはとても良く効く薬ですから、しっかり飲んで下さい。最初はちょっと気分悪くなったとしても、とにかく必ず飲んで下さい。そうすれば2週間くらいしたらきっと良くなります」って言われまして、一生懸命飲み始めたんです。

で、飲み始めた途端になんだか血圧がどんどんどん下がっていきまして、自分で測った時、上が70くらいだったんですね。すごいめまいもするし、ふらふらするし、イスから立ち上がって失神しました。もう怖いので、家の中をはって歩いていました。
他にも手がブルブル震えるとか、あとは、本に詳しく書いてあるんですけど、ありとあらゆる症状が出ました。

でも私は、医療従事者じゃありませんし、身内に医師もおりませんし、全然医学知識がなかったので、これもうつ病の症状なのかなって。でも一生懸命薬を飲めば、きっと良くなるんだと思って一生懸命飲んでいました。飲めば飲むほど、どんどん悪くなって、なんだかもう重病人のようになってしまって、声も出なくなってしまったんですね。のどを絞められたようになって声も出なくなって。精神的にもすごくおかしくなってしまいました。

ひどい物忘れも始まって、銀行に行ってATMにカードを置き忘れてくるとか。駐車場に停めた車が、どこかまったく分からないとか、いうことが起こってきまして。最初はうつ病の症状かと思っていたんですけれども、認知症だと思ったんですね。これは絶対におかしい、認知症だと。
銀行から電話がかかってきた時に、「カードを置き忘れていました」って言われて、「え?カードを抜かなかったらピーピーピー鳴りますよね?私、置いてきたんですか?」って。

これは、絶対におかしいと思って、うつ病と診断した医師に「先生、私、認知症だと思います。検査して下さい」って言ったんです。そしたら「それは、うつ病の症状です。うつ病になるとそうなるんです」って言われました。私、しつこく「検査して下さい」って言ったんですけれども、「いや。樋口さんはうつ病です」って言われました。

抗うつ剤で副作用が出ても薬が足りないんだってことで増量されまして、更に悪くなりました。で、そのまま、色々あったんですけれども、治療は6年近く続きまして、6年近くの間、私は薬の副作用で、ほとんど感情とかが無かったんですね。記憶することもできなかったし、判断力もすごく低下していました。まさに認知症のような状態で、6年間を過ごしていました。

ただ思考力はあったんですね、その時でも。だから毎年毎年主治医に「私、薬が効いていると思えないし、止めたい」と、毎年、あ、毎年っていうのは、毎年主治医が替わるんですね。主治医が変わるので、言ったんですけれども、「いや、ダメです。少なくとも半年、出来れば1年間良い状態が続かなければ、薬を止めてはいけません。薬を止めたらすごく悪くなります」って毎年言われ続けたんです。

医師からそう言われたら、そうかなって思いますよね。で、飲み続けていたんですけれども、最後の主治医になった時に「先生、薬、止めたいんです」って言ったら、その先生だけが、「止めましょう!」って。即座に仰って下さって、止めたんです。抗うつ剤を。

そしたらなんだかひゅーっと良くなって、元に戻って、頭も普通に回転する、感情もある、すごく元気になりました。
友達も家族も「あぁ、昔のあなたに戻ったね!」ってすごく喜んでくれたんです。「なんだか6年間死んだみたいだったけれども、やっと昔のあなたに戻ったね」って、その時言われました。(続く)

*この講演動画 http://www.empawa.org/#!blank/c1ss


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?