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学習性無力感

HRでしていた話

 この記事では、教員をしている私が時間が余った時にしていた話を紹介します。「学習性無力感」とかいうものに関わる話で、この話をすると、生徒が自分の関わる相手について少し考えるようになってくれるかもしれません。
 無気力な子供を相手取った時に効果がありそうな話です。

連休で銀の匙という漫画を読んだので

 連休で疲労を回復しようとひらすら自宅で過ごしていました。そして、コミックシーモというウェブサイトで「銀の匙」という漫画を読みました。
 ガリ勉だった東京の中学生が北海道の農業高校に進学して、東京では経験できなかったことを経験していく物語です。動物の解体や屠殺シーンから、とれたて野菜のおいしさを味わうシーンまであります。特に食べ物のおいしさが魅力的な作品です。

子豚の性質

荒川弘「銀の匙」より(少年サンデーコミックス)

 このシーンがすごく印象的だったのでこの記事を書きました。
 豚は7・8匹の子豚が母豚の乳を飲みます。この時、母豚の前足側の方が栄養価の高い乳が出て、後ろ足側ほど栄養価が低い乳が出るそうです。
 ですから、子豚の中でも力が強い子豚は前足側の乳を吸えるし、力が弱ければ後ろ足側の乳を吸うことになります。
 他の子豚がいなくなっても、画像のように後ろ足側の乳を吸うことに慣れてしまった子豚はずっと後ろ足側の乳を吸い続ける性質があるそうです。

ノミの実験

 これと似たようなことを聞いたことがありました。「ノミの実験」というお話です。確か「無気力の心理学 改版 - やりがいの条件 (中公新書 599)」という本か「人はいかに学ぶか」とかの波多野誼余夫という方の本で読んだ記憶があります。

ノミの実験のお話

 このノミですが体調2mmほどで、30cmほど跳躍するそうです。
 にもかかわらず、20cmほどの瓶にノミを入れて蓋をしてしばらくすると、20cm以上の跳躍ができなくなるそうです。高く跳躍しても蓋にぶつかるためです。
 しかし、この話はここで終わりません。20cmの瓶に一度閉じ込められたノミは、瓶の蓋が開いても、瓶から飛び出ることはありません。蓋が開いていても、20cm以上跳躍しないためです。

学習性無力感

 このノミの話をどこかで聞いていたので、「銀の匙」の「子豚の性質」が「ノミの実験」とよく似ているな、と思いました。
 どちらも「一度とある環境に閉じ込められたら自らその環境に止まり続ける」という点で共通しているからです。
 これも先の波多野何某さんの本で読んだ覚えがあります。電流を定期的に与えられた犬は電流の流れる檻から出ようとしなくなる、みたいな話を覚えています。

で、どうすればいいの?

 問題は、じゃあどうすれば子豚は前足側の乳を飲むようになり、ノミは瓶を出られるようになり、犬は檻から出られるようになるの?
 という解決策です。

ノミの実験の続き

 ノミの実験にだけ続きがあります。
 20cmの瓶から抜け出せなくなったノミを、どうすれば20cm以上跳べるように戻せるのか。
 正解は、「20cm以上跳躍するノミの群れに入れる」だそうです。
 周囲のノミが20cm以上跳躍し、瓶を出て行きまくっていれば、閉じ込められたノミも出ていくようになるそうです。

環境を変えろ

 このお話から、私は「環境を変えろ」という教訓を得ました。住む場所を変えるとか、付き合う人を変える、とかです。
 実際私はかつて職住近接に踏み切って今の経済的に安定した生活がありますし、付き合う人はほっといても変わってきました。キラキラ系な人は周りにいません。
 本田何某というサッカー選手が「環境にこだわれ」と何かのショートムービーで流れてきたことがありますが、本当だと思います。

まとめ

 「銀の匙」という漫画を読んで、「ノミの実験」とリンクした話を記事にしました。
 この話は時間が余った時や、生徒間トラブルが増えてきたときなどによく使いました。皆、「自分もやるぞ」と思える話だからです。
 特に、ノミを再び跳べるようにする方法のくだりはみなさん、勇気づけられますよね。私自身、この話に勇気づけられた一人でした。
 作家の橘玲さんが、どこぞの成人式で20歳の人たちにこう言ったそうです。
「今までは『置かれた場所で咲きなさい』の時代でしたが、これからは『咲ける場所に動きなさい』の時代です。」
 これは本当に思います。フットワークを軽くしていきましょう。

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