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開幕戦vsサンプドリア

大きなサプライズをもって迎えられた『新人監督』アンドレア・ピルロ。ユーベでプレーしていたのもそう遠い過去でもないので我々にも馴染みの深いプレースタイルであるが、指導者としてはまったくの未知数。
それだけにマエストロがどんなサッカーを志向するのか大きな注目を集めて新シーズンを迎えた。

【基本コンセプト】

特定のシステムに固執せずスリーバックとフォーバックを使い分ける、というコメントから前任者よりも柔軟な戦い方が予想されたが、蓋を開けてみればアッレグリばりの変態可変システム。
守備時は4-4-2、攻撃時は3-5-2と可変する戦い方が一つの解答として提示された。守備時はオーソドックスな4-4-2のブロック。昨年の4-3-3よりも明らかに強度は高くなった。

攻撃時はダニーロが右センターバックに絞り、両SBがWBというよりもWGの位置まで高く張り出し幅を取る大胆なシステム。実質5トップに近い布陣で5レーンを埋め、ロナウド、クルゼフスキの「ツートップ」はハーフスペース攻略を担う、ポジショナルプレー。
ラビオとマッケニーのダブルボランチは配球役とネガティブトランジション時の奪回役を担う。
スリーバックはビルドアップの中心役をこなしつつ、臨機応変に前進し、縦パスを狙う。

【共通理解の高さ】

まず驚いたのが、就任1ヶ月足らずでここまでチームとしての完成度を高められるのか、という点。これはピルロ特有の能力として捉えてもいいのではないだろうか。
まったく新しい戦術を取り入れているにも関わらず、選手同士の連携がスムーズでチームとしてのまとまりを早くも感じさせる。選手たちにとっても歳の近い『名手ピルロ』のカリスマ性がプラスに働いていることを感じさせる。名選手であることは名監督の必須条件ではないが、ピルロの大きなアドバンテージになっていることを感じさせる。

【注目選手】


①デヤン・クルゼフスキ
まず一番に目を引いたのは注目の新戦力、クルゼフスキ。昨季パルマで大ブレイクを果たし、セリエA最優秀若手選手の称号を引っ提げてのユーベデビュー戦でいきなりの先制ゴール。大きな期待にいきなり結果で応え、その後も攻撃の中心と言っても過言ではないハイパフォーマンスを見せた。

②ウェストン・マッケニー
交渉していることすらまったく表に出ることなく、突然にシャルケからの加入が発表された『ネクスト・ビダル』。ダイナミックなプレースタイルで攻守にマルチに活躍することを、ノヴァーラとのテストマッチで早くも感じさせた。
とはいえ、今年のチームの幹と思われていたベンタンクールやアルトゥールを差し置いての開幕スタメンは大きなサプライズ。
クルゼフスキと違ってセリエA自体が初体験なこともあり、さすがに硬さは感じられた。配球役としては物足りなかったが、球際に強い守備では特徴を充分に見せてくれた。これからに期待。

③ジャンルカ・フラボッタ
サプライズ中のサプライズ。カンセロを思い出させるサイドバック。ペッレグリーニを売るかデシリオを売るかで喧々囂々のユベンティーニを大狂喜させるパフォーマンス。この若者が控えているなら、二人とも売却でもなんとかなる、と思わせるプレーを見せた。

④アーロン・ラムジー
トップ下で躍動。この日の攻撃のリズムはこの人が作り出した。ピルロの指示がいいのか、サッリの使い方が曖昧すぎたのか…攻撃時のトップ下と守備時の左サイドハーフという一人二役を驚異的なハイパフォーマンスで演じきった。このシステムならトップ下はディバラではなく、ラムジーだなぁ…。

【ピルロユベントスの可能性】

ゲームを支配してボールを握るポゼッションフットボールとソリッドなディフェンスの両立。ここにディバラやジェコが加わったらまた違った方法論を見せてくれるんだろうな、という期待。早くも現時点での最適解を提示するビジョンの高さ。これからどれだけの引き出しを見せてくれるのか楽しみである。先日のテストマッチと今日の開幕戦で最も強く感じたのは、『適材適所以外のところから選手の良さを引き出す可能性』。
ダニーロのCBしかり、フラボッタのウィングしかり、ピアツァのCFとしてのポテンシャルしかり。
誰もがこの選手の使い方はこうだろう、と思っている範囲の外から、こんな可能性があったのか!と感じさせてくれる用兵。これこそピルロの最大の特徴的だろう。さすがマエストロ、凡人とは見ている世界が違うんだな…とでも言うような大胆さと的確さ。それに加えて圧倒的なカリスマ性。
ユベントスというクラブ自体をワンステージ上に導くくらいの可能性を感じさせてくれたと思う。いや、言い過ぎだとは思うけど。あくまで可能性の話ね。

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