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[書籍] スカー・ティッシュ アンソニー・キーディス自伝

海外では2004年に発刊されたRed Hot Chili Peppersのヴォーカリスト、アンソニー・キーディス自伝、読了(日本語訳発売は2006年)。これまではずっとRHCPの音楽に滲む悲しさってジョン・フルシアンテが奏でているものだと思っていたんだけど、実はそうではなくて、主にこの人の持っている悲しみをジョンが増幅させるという構造だったのか。そんなことが痛いほど伝わってくる本だった。
   
まあ、よくもここまで告白したなと思う程の赤裸々さで、セックス、ドラッグ、バンド、恋愛関係等々、生まれてからアルバム”By The Way”の曲作り位までの自分自身を振り返った作品で、特にドラッグやその中毒にまつわる記述に関しては、同じバンドのフリーの自伝を読んだ時にも思ったけど、これまでのどこかで死なずによく生きていてくれたな、と(ただし、フリーよりその度合いは酷い…)。更生施設から逃げ出そうとする場面なんて、その辺のアクション映画よりも激しくて酷いし…(映画になってるところが浮かんできたよ苦笑)。何度もドラッグで自身を蝕み、しかもそれにアンソニー自身もかなり自覚的で、辞めなきゃいけないと頭では分かっていても身体がついてこない矛盾と、その影響で人間関係(バンドも、友人も、恋人も)も失ったりしている様は、目を背けたくなるほどのものが続く。
    
高校時代の友人4人で始めたバンドのはずなのに、アルバム3枚目までその4人は揃うことなく、ようやく揃ってアルバムを1枚出すと今度はギタリストはドラッグで死亡。その後ジョンの加入脱退が繰り返された経緯もニュース等で見聞きしていたことよりも全然危うくて、”世界最強のバンド”と言われたこのバンドの実情はこんなにもあやふやで壊れもののようなものだったのかと改めて痛感した。
   
この本が発刊された後もまだゴタゴタした上にジョンが戻ってきたRHCP。強靭なマシンではない存在だということを充分に理解した上で、だからこそこうやってまた集まったこの4人という奇跡を2月の来日でしっかり噛みしめたいと思う。

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