何故  取り込み詐欺事件はなくならないのか?

本サイトでは、パクリ屋による取り込み詐欺事件を複数件紹介してきた。そして、その何れもが素人でもできる簡単な方法で、ほんの少しの手間と費用をかけるだけで、被害を回避できると指摘してきた。
実は、パクリ屋の手口ははるか昔から何ら変っておらず、その見分け方も昔から何ら変わっていないのである。いわば手口およびその回避方法は周知の事実であり、本来自然消滅すべきものなのである。しかし、現実は同じ犯罪が、時に同じ企業、時に同じ人によって繰り返し、起こされているのである。
何故、取り込み詐欺事件はなくならないのか? その理由を考察する。

1、加害者側の理由

①    誰でも簡単にできる

取り込み詐欺を行うには、会社(商業登記)の準備、会社案内・HPの作成、(事務所の開設)、伝票類の作成、ターゲット企業の物色、物品購入の申し込み、物品の転売先(バッタ屋)確保など、特に難しいものはなく、誰もが簡単にできるのである。

②    個人の仕事である

取引に際しては会社名を使用して、信用させるが、犯罪が立証されて逮捕されるのは、取引をした個人であり、会社(商業登記)はそのまま、無傷で残るのである。
よって、何度でも同じ会社(商業登記)利用して、犯罪を行うことができるのである。

③    少しだけ代金を支払う

詐欺罪の成立要件では欺罔行為が立証されなければならない。つまり、いくらか代金の支払いをしておれば、「支払いの意思がある、だます気はなかった」と主張し、詐欺罪の成立を回避できるのである。

④    代金の不払いで警察は動かない

代金の不払いは、民事不介入の原則により、警察は介入できない。債務不履行はもっぱら司法権の範囲にあり、民事事件として裁判を起こされることになる。しかし、支払い命令の判決があっても、支払いを強制されることはなく、財産を隠匿しておけば差し押さえ・競売もされない。むろん何ら罪を追加されることもない。

以上の通り、簡単にでき、かつ特に罪にもならないため、安易に犯罪を繰り返す人物がでてきても何ら不思議はない環境にある。

2.被害者側の理由

① 1件当たりの被害額が少ない

 被害金額が少なく、回収にかかる手間やコストの方が大きいと判断された場合、被害届をだすことも、裁判を起こすこともなく、泣き寝入りをしてしまうことがある。このため、事件が表面化せず、犯罪が繰り返され、被害が広く広まってしまうことになる。  

② 与信管理業務が機能していない

 与信管理に無頓着で、取引相手を疑うことなく、簡単に取引に応じてしまう。与信管理の手法を知らない、要員がいない、など与信管理が十分に機能していない企業は、絶好のカモにされてしまうことになる。
     
 以上の通り、加害者には詐欺を続けられる環境があり、被害者には被害がなくならない体質・土壌があるため、同じ犯罪が繰り返されるのである。

 以上


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