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誰でもわかる「危ない会社」 事例(7) 給与ファクタリング」詐欺―SONマネジメントの実態―

1.事件の概要


2020年7月29日大阪府警は、給与を受け取る権利を買い取る「給与ファクタリング」によって金を貸したとして、貸金業法違反(無登録営業)の疑いで、SONマネジメント株式会社(荒川区)の社員岩田俊一容疑者(29)=山形市=ら20台の男女4人を逮捕した。摘発は全国初。
 4人は「D―ライン」などの名称で、SNSを通じ、運転免許証や給与明細の画像などを送付。給与支払日の前に、給料を受け取る権利を売却する形で、手数料を差し引いた金額を受け取り、後日、支払われた給与から業者が買い取った債権相当額を返金していた。債務者は今年の3月から6月までに、全国各地で約2,800人に上り、口座には約1億1,800万円が振り込まれた。と言われている。
金融庁は、このような給与ファクタリングを「新手のヤミ金」として注意喚起しており、府警は、合法的な債券取引を装っているが、手数料が実質的な利息にあたり、実態は「貸金業」だと判断。最大で法定の80倍の年利約1,600%で貸し付けていたとみて、出資法違反容疑でも調べている。

2.ファクタリング契約


 企業における買取型3社間ファクタリングは、ファクタリング会社は企業が販売先に有する売上債権を割り引いて買い取り、債権の管理及び回収を行うとともに、与信リスクを引き受け、売掛金に対する前払金融を行う。企業にとっては、売掛金の管理・回収という煩わしい業務から解放され、貸倒れリスクも回避でき、併せて早く現金化できるというメリットを受けられる。債権はファクタリング会社に移転するため、契約書での債権譲渡明示が必要であり、債務者に知らされるのが基本である。
2社間ファクタリングは、債務者は債権者に代金を支払い、債権者はファクタリング会社に返金するフローであり、実際には債権は移転せず、債務者に知らされないメリットがある。ただし3社間ファクタリングより手数料が高いとされている。
 2社間ファクタリングの契約が売買契約と理解されれば、貸金業の許可は不要であるが、金銭消費貸借契約と理解されれば、貸金業の許可が必要であり、それがない場合は貸金業法違反(無登録営業)とされる。
本件は、債権者=労働者、債務者=会社として、会社が給与を支払い、労働者がファクタリング会社に返金することから、2社間ファクタリングと全く同じ資金フローである。府警は手数料の大きさから実際は利息であるとし、貸金業と判断しているが、現状明確な判断基準はなく、今後の法的整備を待つ必要がある。

3.SONマネジメントについて


 SONマネジメント株式会社の商業登記をみる。
社名 SONマネジメント株式会社
本店所在地 東京都荒川区南千住2-16-4
設立 平成12年5月1日
目的     1.厨房機器の販売
    2.衣料雑貨品の輸入及び販売
    3.古物の売買
    4.投資業及び投資コンサルタント業
    5.知的財産権の実施、使用、利用許諾、維持、管理
    6.有価証券の取得、保有、運用、売買
    7.ファクタリング業
    8.その他上記各号に付帯する一切の業務
資本金 1,000万円
役員 代表取締役 井口雅明(東京都町田市小野路地1367-2コートドールB202)

設立が2000年であることから、業歴は20年に及ぶと見られるが、閉鎖登記を追ってみると、前身は(有)ロックハート(本社:新宿大久保)、白川満が代表で情報処理サービスを行う会社であった。2005年4月現商号に変更、代表:松尾博之、目的:厨房機器の販売、衣料品の販売、2017年12月に休眠解散、2019年10月に会社継続を経て再出発。2019年10月現在地に本社移転、2019年12月に現代表就任、2020年4月にファクタリング業を事業目的に加えたもので、逮捕までの実質的な業歴は、わずか4か月しかない。よって、会社としての信用度を云々できる状態に至っていない会社であった。

4.結論


 本件業務における違法性の解釈は、司法及び金融庁に任せるとして、本件の「給与ファクタリング」の違法性が明らかになれば、合法的な「給与ファクタリング」の業務が整備されると思われる。当社の場合、知名度は全くないにも関わらず、わずか3~4か月のネットでの営業で、しかも高い手数料でありながら、2,800人、1億1,800万円を集めており、その需要の高さから、万民が納得のできる法制化が望まれる。

 なお、当社としての信用度は、商業登記をみるだけで、全く評価できるものではないことが明確である。また、逮捕者4名の中に代表者はいないものと見られ、会社組織のあり様にも疑問がもたれ、厳重な注意が望まれる企業であると言える。

以上

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