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新たな覚悟

「おせっかいワーカーになろう㉕」

 5月に入り、家庭の窓が開くようになって、市民からの泣き声通告が増え、ほぼ毎夜出動しています。(5月36件55戸)通告が増えたのは、3月に目黒で起きた事件を始め、死亡事件の影響もあると思います。亡くなった子どもの愛くるしい写真やエピソードがメディアから何度も流れるので関心も高まります。子どもの死は誰にとっても重たいです。

 社会保障審議会児童部会が行った「子ども虐待による死亡事例等の検証」(第13次報告)によると、平成27年度に虐待で亡くなった子どもは84人(心中34人を含む)で、この10年間の平均は82人、年によって増減はありますが、相当な数の子どもが虐待でいのちを失っています。

 ところが、一昨年、日本小児科学会は、虐待で死亡した可能性のある15歳未満の子どもは年間約350人に上るという推計を発表しました。「医療機関や行政、警察の間での情報共有や検証が不十分で、多くの虐待死が見逃されている恐れがある」というのです。そうすると、ほぼ毎日、日本のどこかで、子どもが虐待の犠牲になっていることになります。

 見守り訪問は7月に7年目に入ります。深夜に及ぶこともしばしばですが、気持ちを緩めるないように努めています。どんな些細な泣き声通告でも、もしかしたらあの事件のあの子のようなことにつながるかもしれない、と神経を集中しています。亡くなったいのちは取り戻せません。

 正直なところ、行政は異動も多く、担当者が代わっていきます。多量の業務の中で、どうやって省力化合理化しようかと考えると思いますが、見守り訪問員は泥臭く、愚直に一軒一軒丹念に訪問します。訪問員もじわじわ新陳代謝はありますが、ありがたいことに3分の2は事業開始時のメンバーが残っていて、豊かな経験値をベースに、想像力と的確な判断に磨きをかけ、新しいスタッフとも切磋琢磨しています。

 見守り訪問だけでは、子どものいのちと親の生活は守れません。私たちの専門性である地域作りにおせっかいに取り組みます。縦割りや業務を超えて、子ども食堂も居場所も講座も農業も、必要なものは作り、始めます。

         【労協新聞2018年「おせっかいワーカーになろう㉕」】

応援よろしくお願い致します。