鼻毛
僕は鼻毛が出ている。
この文章を書いている今この瞬間も
きっと鼻毛が出ている。
1週間前ぐらいの朝、
鏡を見ると鼻毛が出ていた。
腹を抱えるぐらい笑ってしまった。
なぜなら鼻毛が出ているからだ。
半端ないって、
鼻毛めっちゃ出てるもん
あんなん出えへんやん、普通
そんな出る?
言っといてや、出るんやったら。
(僕は「半端ないって」を忘れない)
あまりにも面白いので
ずっと出している事にした。
電車とかにのっていて、
知らない人が僕を見て思う。
「え、あいつ鼻毛出てない?笑」
僕は言う、
「ふぅー、愚か者よ。かかったな。」
彼は言う、
「ど、どういうことだ!?」
そして僕は言う、
「まだ、分かりませんか...
"あえて"出しているのですよ?」
「あ、あえて出しているだと?だ、だって鼻毛は知らず知らずのうちに出てしまって、人から笑われるものじゃないのか!?」
「笑止千万。そなたのその固定概念がそなた自身の可能性を狭めているのにまだ気づかぬのか!?」
「ゔぅ、、、。」
「井の中の蛙め。世界は広い。我は鼻毛と共にさらなる高みへゆく!」
そんな妄想が膨らんで
余計に鼻毛が切れなくなった。
そういえば、たまに鼻毛が
出ているおじさんなどがいるが、
そういう楽しみ方を
していたのかと気がついた。
侮れないものだ。
けれども、盲点だったのは
今のご時世、みんなマスクを
つけている事だった。
これでは僕の鼻毛は
誰も幸せにできない。
万事休すか...。
地面に片膝をついたその時、
「お姉ちゃん、鼻毛出とうで?」
妹だった。
(家では「お姉ちゃん」と呼ばせている)
けれども全く笑っていなかった。
妹はただ僕に鼻毛が出ている事を伝えた。
それ以上の感情もそれ以下の感情もなかった。
ついに、僕は両膝をピッチについた。
けれどもまだ僕と鼻毛の試合は終わらない。
いつかこの鼻毛で誰かが笑ってくれる日まで
まだキックオフしたばかりだ。
いやハッナゲオフしたばかりだ。
試合終了のホイッスルが鳴るまで
いやハナゲッスルが鳴るまで
僕は鼻毛を出し続ける。
「我は鼻毛と共にさらなる高みへゆく!」
何の話やねん。