あかねの雲

両親(おや)おくり
妻さきにゆき
子のいそぐ

あかねの雲は
美しき哉

土橋秀高



その夜はなぜかなかなか寝付けなかったので、テーブルライトを付け、枕元にあった淺田正博師の著書「私の歩んだ仏の道」を手に取りました。この本のなかで淺田先生は、自身の恩師であり大変な念仏者でもあられた土橋秀高先生について書かれています。

土橋先生は非常な苦難の人生を歩まれた方だったようです。そのご苦労と哀しみがこの歌の上の句には表されているのでしょう。しかし、不思議なことに下の句には「あかねの雲は 美しき哉」と詠まれているのです。どのようなお心であられたのでしょうか。

雲は太陽の光を遮る存在です。しかし太陽が西の空へ沈むとき、夕陽に照らされ、今まで光の妨げとなっていた雲は、転じて茜色に輝き、一面に美しい夕空を描くのです。

人生の様々な困難さえも、お念仏とともにご縁として喜ばせていただく。そのような念仏者としての人生を真実に歩まれた土橋先生なればこその歌でありましょう。

実は私が以前住んでいた家から徒歩で行けるほどの距離に、土橋先生の御自坊があることを知りました。正月休み最終日に、サイクリングがてらお参りさせていただきました。




南無阿弥陀仏


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