見出し画像

【真宗大谷派】住職になるには?



はじめに

 「住職になるにはどうすればいいか?」

 宗務役員として勤めている時によく尋ねられたことである。そのたびに答えたものだが、なるほど、本来であれば住職一家の世襲である。それゆえ住職から次世代へと言うようにそれぞれ指示されてきたから、今まで問題になることはなかった。

 しかし、昨今は後継不在の寺院へ入寺するケースもあれば、寺院には住んでおらず住職が死にそうになったから血縁を辿り自分に白羽の矢が立った、または結婚した相手に先立たれて自分がやるしか無くなったと言うケースも多くなってきた。

 そんな時にインターネットで「真宗大谷派 住職 なり方」と調べても東本願寺のホームページにも載っていない。(2024年10月現在)申し訳なく思う。よって、このnoteにまとめておく。ぜひ興味のある方は参照してほしい。

 ちなみに宗務役員でも正確に把握していないものもいる。新人研修で基礎知識を徹底しないやり方が悪いので、気にせずに勤務時間中でも質問が来たらこのnoteを見てくれると嬉しい。

まずは得度式を受けよう

 得度(とくど)とは他宗派で言えば受戒、出家のことである。所属するお寺を通し申請し、本山にて法名を授かる。大谷派では開祖である親鸞聖人の出家エピソードに倣い9歳から可能である。得度をすると僧籍を授かり、正式に真宗大谷派の僧侶となる。これが第一歩というわけだ。

 ちなみに得度の前には得度考査というテストの合格が必要になる。内容は大谷は僧侶として法事や月参りなどで読むお経を読むテストだ。年齢によって内容が異なる。詳しくは所属寺の住職か教務所に気軽に尋ねるといい。同朋が増えることをめんどくさく思う住職なんていないのだから快く教えてくれる。

 とにもかくにも所属寺だ。所属するお寺がなければ何も手続きができないのだから。

住職になるために〜教師資格を取得しよう〜

 さて、住職になるための絶対条件がこれ、正確にいうと「真宗大谷派教師資格」である。教員免許ではない。

 上述の得度式が僧侶としての最低限の資格だとすれば教師資格は次のステップだ。この取り方をまとめて紹介しているページが東本願寺ホームページにもないのだから仕方ない。高嶺が紹介するというわけである。

 ちなみに成人年齢の引き下げに伴い、以前は20歳からだったが現在は18歳から取得可能だ。しかし以下に紹介する機関は基本的に18歳以上を編入制限としているため実質的に18歳で教師資格を取得する方は少ない。

①宗門系列の大学にて所定の単位を取得する(目安:4年)

 これが一番オーソドックスな取り方だ。現在の住職のほとんどがこの取り方によるものだと思う。宗門系列の大学は全国に点在しているが、教師資格が取得可能な大学は2校しかない。

 ひとつが京都にある大谷大学、もうひとつが愛知県にある同朋大学だ。この2大学においてのみ教師資格の単位が取得できる。卒業と同時に資格がもらえるというわけだ。
 ちなみに大学院への編入でも所定の単位の取得は可能である。その場合は4年よりも短い。

 全国の寺院子弟との交流も図れ、また真宗学・仏教学の師にも会えるためやる気さえあれば将来の住職活動においても非常に有益な選択であるため、将来的に寺を継ぎたいと考えるのであればまずこの選択をするといい。

②同朋大学別科にて取得する。(目安:1年)

 これは東海圏の方以外はハードルが高いかもしれない。愛知県名古屋市にある同朋大学で単位が取得可能なのは①にで書いた通りだが、実はさらに教師資格のみに絞って集中的に講義を受けて1年間で取得することが可能だ。ただし、本来であれば4年間をかけて取得するものであるので当然そのペースは厳しい。しかし、その分濃密な時間を過ごせるという視点もある。以下にリンクを貼っておこう。

③大谷専修学院にて取得する(目安:1年)

 京都府には大谷専修学院という学寮がある。全寮制であり、そこで学ぶことで1年で資格が取得できる。イメージ的には世間一般のお坊さんの修行のイメージ日番近いものとなるだろう。

 ただし、本来であれば4年間をかけて取得するものであるので(以下略)。全寮制故に新型コロナウイルス感染症の際はかなり苦労したようだが、変わらずにその運営形態が続いていることは驚嘆に値する。しかしながら京都府でかつ全寮制、自由時間がほぼないことを思うと入るにはかなりの覚悟がいるだろう。
 参考に以下にリンクを貼っておく。

④各教区の真宗学院で取得する。(目安:3年)

 さて、以前にも触れたが真宗大谷派は全国を19のエリア(教区)に分けて統括している。①から③に関しては言ってしまえば社会人は時間がかなり厳しいだろう。それ故に、いくつかの教区では教区内の寺院が「自分たちの教区で後継者を育成できるようにしたい」という意思のもと、真宗学院というものを運営している。

 運営形態は各教区で異なっているため、詳細は各教区にそれぞれ問い合わせていただきたい。参考に以下にまとめておくが、当然これは2024年10月現在の情報なので将来的に変更されることもある。①から③であげたものと異なり、どこも教区による自主的な運営であるのでいつ閉院してもおかしくはないからだ。

真宗大谷派 各教区の真宗学院情報一覧

 ちなみにこの情報は『真宗』掲載の募集要項や各教区のHPを参考にまとめたもので、?の部分はどうしても情報が出なかったところだ。それはそれとして「?」ってありえなくないだろうか。人に来てほしいなら情報公開くらいしっかりするべきではないだろうか。私の見落としという可能性もあるだろうが、検索して一発でわからなければダメだろう。それこそ東本願寺HPに一覧でまとめておくべきではないか?検索に過去の機関誌の検索も含めて1時間もかけてこれだぞ。

 まぁいい、話を戻そう。見ての通り社会人や一般大学に通う方を対象としているため平日夜間や休日開講が多い。?の部分も同様な形だと推察される。もしも入学を希望しているなら真宗大谷派が出している機関誌『真宗』掲載の募集要項等を見てほしい。

⑤教師試験検定を受ける。

 上記①から④は「無試験検定」と呼ばれる。所定の時間数、単位を取得すればクリアーだ。一方で今から紹介するのが最終手段である「試験検定」。本山で年に2回開催されるテストに合格したら資格が取得可能だ。各学院に通うこともできないハードワーカーはこの試験が最終手段となる。

 試験は真宗学、仏教学、法規、声明作法、小論文(面接)であり、それぞれに合格点が設定されている。すべての試験で合格すれば晴れて完全合格となる。救済措置としては3年間有効な科目合格という制度があるため、3年間かけて勉強して完全合格を目指してもいい。極端な話、3年✖️年2回で合計6回も試験を受けるチャンスがある。

 ただ、当然大学で4年間、詰め込みでも平日全てを捧げて1年間という内容を試験の合格に変えるのだから本当に難しい。なによりもこれで資格を得られたとしても人脈が何もないのだ。

 仏教を学ぶ上で友がいない、師がいないのは大変なディスアドバンテージ、というか無理である。

 私のおすすめとしては並行して真宗学院に通うことをお勧めしたい。試験に落ち続けても3年経てば卒業できるのだから。仕事の都合がある方もいるだろう、しかし住職とはそれだけ重い責任を有するのだ。この試験検定は本当に最終手段と考えてほしい。

番外 高校生でも取れる?

 実は宗門校の京都にある大谷高校でも所定単位授業が実施されているので取得可能だ!偏差値がめちゃくちゃ高いので通える中学生諸君は頑張ってくれ!

教師修練を受ける。

 実は上記の紹介では教師資格取得まで1歩足りない。最後の最後に本山である東本願寺で前期1週間、後期1週間の修練というスマホ没収で世俗から隔離された修行を経ることで晴れて教師資格取得となる。上記の紹介は正確に言えば修練を受ける資格を得るためだ。

 この修練こそが教師資格取得において最も深い学びとなる。行ってみてのお楽しみだ。別に試験で合格不合格があるわけではないので気楽に行けばいい。

住職になるために〜住職修集を受けよう〜

 さて、晴れて教師資格が取得できたら所轄の教務所へいこう。自分のお寺が所属しているところだ。そこで住職修集の申し込みをする。2泊3日で所属寺の門徒の代表とともに研修をするのだ。最終日に晴れて住職の任命状が与えれらる。ちなみに内容は行ってみてのお楽しみだ。修練に勝るとも劣らない実りある研修である。
 
 なお、ここまで来ている段階で当然ではあるが、各寺院は宗教法人法で定められた寺院規則で運営がなされている。その寺院規則には「本法人の代表役員になるには真宗大谷派教師資格を有する〇〇姓を名乗るもの」という規定があるのが一般的なので、苗字に関しては婿養子に入るなどして現住職と揃えておく必要がある。

最後に〜なんのために住職になるのか〜

 法規的手続きはその後、法務局での登記などこまごまとしたものがあるが、以上が大まかな流れである。さて、長くなったが過去にこれだけ真宗大谷派の住職になるための流れ、真宗大谷派教師資格についてまとめられたページはないだろう。少しでも参考になれば幸いだ。

 最後に、もしこのページを読んでいる住職になりたい方がいるのであればこれを尋ねたい。「なんのために住職になるのか」だ。


 仕方なくだろうか?教えを守るためだろうか?それともお寺の財産を継ぐためだろうか?


 どれでも正解だ。ただこの答えを用意していない「なんとなく」なら寺を継ぐなど止めた方がいい。財産目当てよりよほど不健全だ。仕方なくでも、継ぎたくなくても自分が「住職になる」責務については今一度考えて、自分なりの答えを出してほしい。
 

補記 通信教育はないのか?

 度々受ける質問である。他宗派だとそのようなプログラムもあると聞き及んでいるが、少なくとも2024年10月現在、真宗大谷派においては教師資格取得に関しての一切の通信教育過程は存在しない。これは大谷大学や同朋大学、その他関係機関も同様だ。
 まぁその理由が通信教育でも住職になれるようにしてしまうとますます上記の学校機関の需要が少なくなるとかそう言ったいやらしい理由を邪推してしまうが、やはり対面でないと学べないことがあるというのが最もだろう。個人的には独学で取得できてしまう教師試験検定すら廃止すべきだと思う。
 コロナ禍においても真っ先にリモート授業から対面に切り替えを図った大谷大学の事例を見てもわかるよう、やはりことに僧侶としての学びはシャカの時代もそうだが僧伽(サンガ)共同体にて師と共に友と共に実践されるものだ。独学で、書籍で、ネットで、それはどこまでいっても知識でしかなく、真の智慧には足り得ない。

いいなと思ったら応援しよう!