木下富美子(木下ふみこ)都議会議員の無免許運転による事故が、警察から投票日前に発表されなかった理由

現職東京都議会議員による、選挙期間中である2021年7月2日の無免許運転とその事故は、投開票後つまり当選が決まってから7月5日になって発覚した。これを都知事や議員への忖度だとか、警視庁による隠蔽だとか、マスコミの怠慢だとか、色々なじる向きも多い。
この稿では、木下都議の無免許運転による事故が、警察から投票日前に発表されなかった理由について客観的に考えてみたい。


事件や事故のテレビ・新聞報道ではメディア各社の基準や判断で、関係者の氏名や属性などについての情報量が異なる事がよく散見される。放映時間や文字数の制限、ニュースバリューの考え方で扱いが変化するのはさして珍しいことではない。

ではそのニュースソースである、事件・事故を取り扱う警察の発表はどうなのだろう。日々発生する事件・事故の全てが公表されることは当然なく、実は統一されたその基準もない。

夕刊フジは6日、警視庁広報課に電話で聞いた。

まず、なぜ広報しないのか?

同課の担当者は「県警によって温度差もあるだろうが、警視庁は無免許運転があっても、基本的に発表していない。理由は公表していない。今回は逮捕もしていない。逆に今回だけ発表すると、『なぜ今回だけ?』となる。未発表であっても、警視庁記者クラブ加盟社には、問い合わせがあれば、しかるべき所で対応している」と語った。
都民ファ議員の無免許人身事故 警視庁直撃、なぜ公表しなかったのか? ネット上は木下富美子都議への怒りの声 (1_2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト
では、どんな場合に広報しているのか?

同課は「広報の基準はケース・バイ・ケース。事案の軽重で判断する。『当事者が都議だから発表しろ』とはならない。(当事者の)立場により、決めているわけではない」「今回はあくまで通常通りの対応をした。今後、広報するかは今のところ予定していない」と答えた。
都民ファ議員の無免許人身事故 警視庁直撃、なぜ公表しなかったのか? ネット上は木下富美子都議への怒りの声 (2_2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

たらればの話ではあるが、もしこの犯罪行為と事故が投票前に公表されていたならば、木下都議の再選の可能性は著しく小さかったに相違ない。しかしそれも100%確実とも言えないわけで、非常に難しい問題である。

この警視庁広報課の言い分は、木下都議の事件・事故を扱った当事者でもあり、しかもその直後であるのでそのまま鵜呑みにはしづらいのだが、興味深い、法律家の読書メモがあったので引用して紹介したい。

警察の事件事故報道について。
逮捕では、基本的にマスコミに情報提供されますが、実は個別事案ごとの判断をしています。
在宅事件では、送検の時に報道されることもあるので、警察段階で働きかけを行うこともあります。
【警察の広報対応には特徴があります。警察では広報対応は一元化されておらず、案件を担当する警察署や警察本部の課がそれぞれ対応を行っており、全国では数千人規模の担当者がいます。】
Top2017年11月号(教育システム,2017年10月)
広報対応は国民とのコミュニケーション
警察庁長官官房総務課広報室長 江口有隣
警察の事件事故報道基準 _ 薬院法律事務所

夕刊フジの取材に対する上掲回答とほぼ同じ内容である。
このことから、木下都議の無免許運転による事故が警視庁から投票日前に発表されなかったのは、特別に奇怪な事ではないと私は理解した。

ところで、事件・事故の発表や逮捕時の実名報道などに統一の基準がなく、個別に判断されるが故に、弁護士による意見書の提出で事実や実名の発表が出にくくなる「事実上の効果は期待」される場合があるらしい。

仮に、警察が事件に関与した後であっても、弁護人から捜査当局に対し、情報をリークすることを控えるよう意見書を提出する手段が有効です。この意見書に法的効果はありませんが、マスコミに情報リークされ実名報道されるリスクを下げる事実上の効果は期待できます。(暴行 実名報道されるのを避けたい|暴行 弁護士に無料相談

意見書の提出は正当な弁護士活動の一環であるから、木下都議も取り得た方法の一つである。

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