【ARI】🐍ちゃんズに見るピッチデザイン②　Kevin Ginkel編

お世話になっております。今週末の毎日王冠ですが、ここは迷うことなく

◎ジャスティンカフェ
◯フェーングロッテン、ソングライン
△アドマイヤハダル、シュネルマイスター

で行きたいと思います。よろしくお願いいたします。

さて、表題のシリーズ第二回目ですが、今回は先日のWCS第一戦で見事な好投を披露した🐍ちゃんズ不動のリリーフエースにして吠える闘魂Kevin Ginkel（ケビン・ギンケル）を特集します。暗黒期から現在に至るまでDbacksのブルペンを担ってきたギンケルですが、ついに今季覚醒。60試合でfWAR1.3を記録する、文句なしのキャリアイヤーを送りました。

そのギンケルの投球にどのような変化があったのか、簡単にレポートできればと思います。

年度別成績と所感

画像はFangraphsより

例によって作成コストを落とすためスクリーンショットを貼り付けます。2016年にドラフト22巡目で指名され入団後、地道にレベルアップして2019年にメジャーデビュー。一時停滞したものの2022年に大きく成績を向上させると、今季は不動のリリーフエースとなりました。紆余曲折ありましたが、メジャー定着の最大の決め手になったのはやはり四球の減少にありそうです。

2020年、2021年はBB/9がそれぞれ7台、4台と四球が多く、ランナーを貯めて手痛い一発を浴びる展開が非常に多かった印象。随分安定した2022年でもこの印象は抜けず、その影響もあってかハイレバレッジな場面での起用は控え気味でした。

今季も勝ちパターン起用はFA組に譲ることが多かったですが、徐々に重要な場面を任されるようになり、シーズン終盤には8回、9回をPaul Sewaldとともに担当する流れがある程度確立されました。ここまで立場を向上させる過程を追ってみたいと思います。

配球の変化

以下に過去3年間の球種割合と平均球速(mph)、そして回転数（rpm）を示します。

2021年
フォーシーム　59.4％　94.7mph　2387rpm
スライダー　40.3％　83.8mph　2276rpm

2022年
フォーシーム　62.1%　96.4mph　2352rpm
スライダー　37.7%　85.4mph　2169rpm

2023年
フォーシーム　47.3％　95.7mph　2396rpm
スライダー　43.0%　86.7mph　2410rpm
ツーシーム　*9.7%　94.9mph　2297rpm

※チェンジアップもあるようですが、毎年数球しか投げていないので無視します。

2023年における変化量の関係は以下のとおりとなります。

画像はBaseball Savantより

縦に大きく落ちるジャイロ系のスライダーとシュート成分が大きくホップ成分が小さいフォーシームというレパートリーが基本でしたが、今季からさらに大きく動くツーシームを習得したようです。

さて、総じて見ると、ギンケルの変化は3つの軸に分けて考えることができそうです。

1. フォーシームの高速化（2021→2022）

2. スライダーの高速化＆回転数増（2021→2023）

3. ツーシームの習得（2022→2023）

次項でそれぞれの効果について、個人的な推論を述べようかと思います。

結果＆ちょっとだけ考察

上記の変化がどう作用したのかはさておき、ギンケルの成績はこの3年間で大幅に向上しました。

大きく伸びたのは①打球管理能力②奪空振り能力の2つ。バットに当たったときのxwOBAを示すxwOBAconは2021年の.416→.301→.330とリーグトップ10位以内に。また、同時にWhiff%（空振り/スイング）は24.9→26.9→31.2と大きく改善しました。どの要素がどう影響したか、はっきりと切り分けるのは難しいですが、できる限り関係性を見いだせればと思います。

まず、打球管理能力の向上に寄与したのはフォーシームとスライダーの高速化および球質改善だろうと思われます。2021年から2022年にかけてギンケルは2球種の平均球速を1.5mph（約2.5km/h）ほど高速化させたほか、スライダーの縦変化を増大させました。これと時を同じくしてx系スタッツが大幅改善していることを考えればほぼ間違いないでしょう。

次に、奪空振り能力に寄与しているのは正直よくわからないのですが、おそらくツーシームの習得であろうと思われます。ツーシーム自体は別に空振りを取れるわけではありません（Whiff%15.2）が、フォーシームのWhiff%は飛躍的に伸びました（15.3％→24.2％）。フォーシームよりも横変化が大きく、縦変化は小さいツーシームの存在がなにか影響しているのかもしれません。

正直よくわからなかったこと

スライダーとRun Value

2022年→2023年にかけてギンケルのスライダーはxスタッツ系成績を見るとちょっと落ちているのですが、Run Valueは大幅改善しています（0→7）。Run Value自体は打撃結果にも依存するのでそのせいかなと思いますが、はっきりしません。スライダーの回転数増が吉と出たか凶と出たかについて言及できればいいのですが、僕には無理そうなので誰か教えてください。

ストレート＆スライダーの回転効率

理由はよくわからないのですが、ギンケルのストレートとスライダーは年々回転効率が下がり、ジャイロ回転の割合が増加しています（以下画像）。

画像はBaseball Savantより

こちらも狙ってやっているのかたまたまそうなってしまったのかはよくわかりませんが、ある程度自信を持って言えるのは現在の球質ならばツーシーム（シンカー）の習得は効果的であろうということです。もしこのままフォーシームの効率が落ち続けるのであれば、スイーパーも投げ始めたりするのかなと思ったりしますが……。