士冠禮第一 第一章

使用テキスト:『十三経注疏』
太字:経文
細字:鄭注

士の冠禮は、庿門に筮ふ。
筮とは、蓍を以て日の吉凶を易に問ふなり。冠必ず日を庿門に筮ふ者は、以て成人の禮 子孫に成ることを重しとすればなり。庿は禰庿を謂ふ。堂に於てせざる者は、蓍の靈 庿神に由るを嫌へばなり。

主人は玄冠・朝服・緇帶・素韠󠄀し、位に門の東に即き西面す。
主人は、將に冠せんとする者の父兄なり。玄冠は、委貌なり。朝服とは、十五升の布衣にして素裳なり。玄冠は、委貌なり。朝服とは、十五升の布衣にして素裳なり。衣の色を言はざる者は、衣と冠と同じなり。筮は必ず朝服するとは、蓍亀の道を尊ぶ。緇帶は、黑繒帶。士帶は博さ二寸、再繚は四寸、屈垂は三尺。索韠󠄀は、白韋韠󠄀、長さ三尺、上廣一尺、下廣二尺、其の頸五寸、肩革帶は博さ二寸。天子と其の臣とは、玄冕󠄁して以て視朔し、皮弁して以て日に視朝す。諸侯と其の臣とは、皮弁して以て視朔し、朝服以て日に視朝す。凡そ黑に染むるは、五たび入りては緅と爲し、七たび入りては緇と爲し、玄は則ち六たび入るるか。

有司は、主人の服の如くし、位に西方に即き、東面して北を上とす。
有司は、羣吏に事有る者、主人の吏、自ら辟除する所の、府史以下を謂ふ。今時の卒吏及び假吏是れなり。

筮と席と、卦する所の者とは、具に西塾に饌ぶ。
筮は、吉凶を問ふ所以、蓍を謂ふなり。卦する所の者とは、地に畫して爻を記す所以、易に曰く、「六畫にして卦成る」と。饌は、陳なり。具は、倶なり。西塾は、門外の西堂なり。

席を門中、闑󠄀の西閾に布き、西面とす。
「闑󠄀」は、門橛。「閾」は、閫なり。古文闑󠄀は槷に爲り、閾は蹙に爲る。

筮人は、筴を執り、上鞸󠄀を抽きて、之を兼ね執りて、進みて命を主人に受く。
筮人は、有司の三易を主とする者なり。韇󠄀は、莢を藏むるの器。今時弓矢を藏むる者は之れ韇󠄀丸と謂ふなり。兼は、幷なり。進は、前むなり。西方よりして前むなり。命を受くるとは、當に筮ふ所を知るべきなり。

宰は右より少しく退き、命を賛く。
「宰」は、有司政敎を主とする者なり。「自」は、由なり。「贊」は、佐なり。「命」は、告なり。主人を佐けて筮ふ所以を告ぐるなり。少儀に曰く、「幣を贊くるは左よりし、詔の辭は右よりす」と。

筮人許諾し、右還󠄀して席に即き坐して西面す。卦する者は、左に在り。
「即」は、就なり。東面して命を受け、右より還り北行して席に就く。「卦」とは、有司地に畫し爻を識すを主とする者なり。

筮ふこと卒はり、卦を書す。執りて以て主人に示す。
「卒」は、已なり。「卦を書する」とは、筮人方を以て得る所の卦を寫す。

主人受け眡て、之を反へす。
「反」は、還󠄀なり。

筮人還󠄀り、東面して旅と占ひ、卒はれば、進みて吉を告ぐ。
「旅」は、衆なり。還りて其の屬と共に之を占ふ。古文「旅」は「臚」に作るなり。

若し吉ならざれば、則ち遠日を筮ふこと、初めの儀の如くす。
「遠日」は、旬の外なり。

筮と席を徹く。
「徹」は、去なり、斂なり。

宗人事畢るを告ぐ。
「宗人」は、有司禮を主とする者なり。


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