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雨とじいちゃんと貴陽。

子どものころ、じいちゃんが雨が降ると、そぉっと裏のドアから出て行くのを見ていた記憶がある。

じーちゃんどこ行ったの?
さぁね!

じいちゃんが出かける日は、ばあちゃんはいっつも機嫌が悪くなる。親父は仕事で遅いし、雨が続くときなんか、ばあちゃんと二人暮らしか?くらい一緒にいた。

小さいころ、冷凍庫を開けることが楽しみだった。いつもは空っぽだが、みぞれのかき氷がぎゅうぎゅうに入っているときがある。ばあちゃんの好きな金時の。じいちゃんの好きな抹茶の。そしてぼくの好きないちごの。

じいちゃんが麻雀で勝ったときにスーパーから買ってきたものだったとは、だいぶあとになってから知った。じいちゃんからばあちゃんへのごめんねが混ざったお土産。月に一回くらいのご馳走様だったことを覚えているので、弱かったな…じいちゃん。

そんな小さいころのなんでもないことをことを実家の裏の畑に着いたときに、ぼんやりと浮かんできました。

貴陽の傘かけを手伝いました。雨から守ります。風で枝と擦れるのを守ります。ぼくの実家の裏にある、いちばん古い貴陽の木に傘かけをしました。

若い木はまっすぐですが、年を重ねるごとに捻れていきます。人間みたいだな。この捻れが美味しさの秘訣なのかな…?そんなことないか(笑)なんだかおもしろい。

貴陽(きよう)

山梨県南アルプス市(旧甲西町)の高石鷹雄さんが試行錯誤を重ね、20年の歳月をかけて誕生させた品種です。
豊洲市場ドットコム

生みの親である高石さんが、当時の麻雀仲間だけに貴陽の苗を譲ったなんて、ほんまかぁ?みたいな話を聞きました。リーバイス501のような原点の木を保有している農家さんは、数えるほどしかいなくなっています。

じいちゃん、麻雀やっていてよかったな。それにしても、麻雀で繋がった縁ってどうなのかな(笑)

今日はねーすごくパワーのある日なんですよー♪

FM富士のラジオから流れてきた音に耳をかたむける。

一粒万倍日。

「一粒万倍」とは、一粒の籾が万倍にも実る稲穂になるという意味である。
ウィキペディア

仕事始めにすると良い日らしい。雨が降る前にかけてしまおうと、夜勤明けの半日だけ手伝ったのがこの日でした。

大きくなってくれるかな?

そんな後押しがあると、なんだか得した気分になります。

いちばん高いところの傘かけは、ぼくが脚立に登ってやっている。なんだか寂しくもあり、キュッと身が引き締まる思いもする。

じいちゃん、ばあちゃんから、娘のきいちゃんのあおきえんにバトンが渡りました。この木もいつまで実がなってくれるかわかりませんが、大事に育てていきます。

気分的なことかもしれないけど、この木で摘む貴陽がいちばん好き。濃厚でジューシーな味がします。

あと2ヶ月。

木いっぱいに大きく真っ赤に染まるのが楽しみです。

初夏になると思い出す。あおきえんもそんな存在でありたいです。

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