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何があっても振り返らない

人間の記憶ってわからない。

嬉しかったことや良い話は忘れていくのに、どうでもいいような、なんでもない出来事を30年経った今でも覚えている。

中学3年生のころの話であります。

中間テストも終わり、残す行事も数少なくなったころ、一大イベントがまだ残っていました。

修学旅行。

メンバーは早々に決めていました。

中学を卒業したら、近くの高校ではなく、サッカーの夢を追ってみんなと違う高校を選んでいたので、中学最高の思い出くらいは、気の合った仲間と作りたかったのです。

「ぜったい、一緒に行こう!」

4人で決めていました。

保育園からの友達です。親も知っています。頭も顔もザ・普通な4人です。一生心に残る、忘れられないようなドキドキ、ハラハラな旅行よりも、エピソードにならないくらいの旅行がしたかったからです。

「えーと、ひとつのグループだけは先生が決める」

???。

先生のグループ決めの合図を待っていたぼくは、拍子抜けにあいました。

「チャーリー と たご と…それと アキ!、お前だ!」

急に先生の立場を利用して、独断と偏見であっさりと決められてしまったのです。

チャーリーは、チャーリー・シンに似ているから、チャーリー。端正な顔立ちで、スポーツ万能。バレンタインデーには違う学年の女の子からも渡されるような、いわゆる学園のスターです。

アキはというと、まあ…それと真逆な ヤツ でした。友達もいないし、みんなから敬遠されているタイプです。

先生はきっと、 凸 と 凹 を合わせて、たごというオイルで馴染ませようとしたのかな。

こうして友達でもない3人の修学旅行が始まったのです。

「アキ何したい?」

何回聞いてもアキはモジモジしているだけ。

「!」

「いっ!」

いきなり、ぼくの きん〇ま に激痛が走りました!前屈みになり、下を向くとぼくのぼくに誰かの手があります。

アキ!?

振り向いてサッカーで鍛えた極上の蹴りでも一発食らわせてやりたかったですが、ここは渡月橋。

振り返ることができません。

前屈みになったぼくは、前を歩いているチャーリーに助けを求めました。

「あぅ!」

間違えました、道連れです。旅の恥はかき捨てにできず、恥はみんなでかこうゼ!チャーリーのチャーリーをつかみました。

おろおろとバランスを崩しながら3人で渡る渡月橋。なんだかアキに連れられているペットのようでした。お玉がつぶれていないか心配でしたが、こうしてぼくらは大人になる通過儀礼を果たすのでした。

渡り終えたあと、ゆっくりと振り向くとアキが笑っていました。そうか…、作りたかったのは、友達か…。どんな景色よりも笑顔が見たかったか…。ずーっとこういうことしたかったんだな。

コロナになってハグや挨拶もろくにできないですが、世界を救うのは、『ともだちんこ』かもしれないと真剣に思っています。

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