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#78 PCR検査で正しく陽性と判定できる確率について

コロナに対する検査はPCR検査、抗体検査、抗原検査と、いろいろと拡充されてきていますが、これまで主に使われているPCR検査の結果の確からしさはどの程度なのでしょうか?

PCR検査を健康な人も無症状の人も可能な限り受けさせるべきだ、という考えと、コロナ感染が強く疑われる人に絞って検査して、重症者にフォーカスして治療すべきだ、とする議論がありますが、どちらが正しいのでしょうか?

日本では後者に寄った対応をしていますが、これまでのところある程度うまくいっているように思います。


PCR検査の陽性率に関しては、先日の日経新聞に興味深い記事が載っていましたのでご紹介させていただきます(無料会員又は有料会員になれば、全文読むことができます)。


結論から言うと、PCR検査の結果の確からしさや検査結果がどれだけ役に立つかについては感染率に大きく左右されそうです。

この記事では感染率が0.1%であった場合について検証していますが、この場合には「検査で陽性となる人のうち、実際に感染している人の割合はわずか41%である」ということが書かれています。

このことが分かりやすくまとまっている図を引用します。

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この図だけだと少し分かりにくいので、ちょっとだけ解説を加えます。

PCR検査の精度は以下の通りです。

・陽性の人が、正しく陽性と判定される率=70%(感度)
・陰性の人が、正しく陰性と判定される率=99.9%(特異度)
 → 逆に、陰性の人が間違って陽性と判定される率=0.1%

たとえば10万人の中に100人の陽性者がいた場合(感染率0.1%)、陽性者が正しく陽性と判定されるのは70人(100人×70%=70人)となり、一方で、陰性者99,900人のうち間違って陽性と判定される(偽陽性)のは99.9人(99,900人×0.1%=99.9人)となります。

つまり、10万人のうち、陽性と判定される人は169.9人(70+99.9人)です。

これらのうち本当の陽性者は70人なので、“陽性的中率“は70人÷169.9人=41.2%と極端に低くなります。

この結果をもって、筆者の主張と同様に「PCR検査はあまり当てにならない」と結論づけそうになったのですが、必ずしもそうではなさそうです。


PCR検査結果の確からしさは感染率に左右される

上記の例は感染率が0.1%だった場合を検証していますが、下記の通り計算してみると、感染率が上がれば上がるほど、陽性的中率は上がることが分かりました。

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特に、感染率が1%以上ある場合には陽性的中率はそれなりに高くなり(88%)、意味のある数字となってきます。

ただ、感染率がある程度高くなっても、健康な人や無症状の人たちを含めて闇雲に検査した場合には(記事の例だと10万人検査した場合)、感染率には関係なく約100人の陰性者が誤って陽性と判定されてしまいます。
もしこれらの方を全員入院させた場合には、医療機関の逼迫を引き起こすおそれが出てきます。本当は陰性なのに、です。

したがって、医師の診断により陰性の可能性が高い人と陽性の可能性が高い人を選別してから検査することが極めて重要と考えられます。このような選別によって陽性的中率を上げることは可能であり、PCR検査をより意味のあるものとすることができると考えます。


さて、以上のように、健康な人も無症状の人も可能な限りPCR検査を受けさせるべきという主張は、医療機関の逼迫に対していかに危険な主張であるか、ご理解いただけると思います。

日本が行っている施策(医師がコロナ陽性の可能性が高いと判断した人のみをPCR検査することや、クラスターを特定したり、重篤になりやすい、あるいは重症者を重点的に治療する方法など)はとても合理的で、適切な対処を行なっていると個人的には考えます。


いずれにしろ、PCR検査の結果のみ(例えば感染者数)に一喜一憂したり左右されるのではなく、本当に医療が機能しているかを示す、重症者数の推移や医療機関の逼迫状況を注視するなど、冷静に対応することが求められます。

日本で重症者数や死者数が少ないことは、日本の対策の全てがうまくいったからというわけでは必ずしもなく、生活習慣や行動様式、あるいは食事や遺伝背景など、複数の要因が複雑に絡んでいると考えられますが、一人ひとりが良く考えて行動することで、引き続きコロナ対策を行っていきたいものです(^^)


今日の記事が参考になれば、「スキ」を押していただけると嬉しいです。

それではまた!

<了>

#PCR検査 #偽陽性 #偽陰性 #感染率

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