「徳を積む経営」

ダスキンを創業された有名な鈴木清一氏の後、二代目の社長となられた駒井茂春氏の本を読みました。実は、以前一燈園の研修に参加させていただくなど、鈴木清一氏の経営には大変興味と敬意を持っておりました。鈴木氏はダスキン創業より前に一燈園で修行をされたと理解しております。まさしくカリスマ経営者であり、事業に大成功された鈴木氏の後の社長を務めるのは並大抵のことではありません。

本書には、タイトルの通り、「徳を積む経営」を実践された駒井茂春さんの信念が綴られています。なかでも、「後継者が経営をしていられるのは99.99%先代、祖先の遺徳によるものだ」と書かれている言葉には打たれました。また、鈴木氏は金光教の教えを学ばれたそうですが、駒井氏は天理教の家にお生まれになり、深い信仰を持っておられたことが本書から伝わります。戦争からの生還、お子さんの死など、耐え難い体験を信仰によって克服されたのだと語っていらっしゃいます。与えられた命だからこそ「損の道」、人様の幸せを祈る経営を実践するという強い使命感を言葉の端々に感じます。

私も多くの方のお力により本を書かせていただいて改めて徳の経営、「陰徳」の大切さを実感しています。白隠禅師の掛け軸の絵にこう書いてあります。

金を積んで子孫に遺すも、子孫は未だ必ずしも能く護らず。書を積んで子孫に遺すも、子孫は未だ必ずしも能く読まず。如かじ、陰徳を冥々の中に積んで、以て子孫久長の計を遺さんには。

少しでも事業がうまく言ったら自分の才覚だと思いたくなります。仕事の上で思い通りにいかなければ自分の以外のその原因を求めたくなります。まして、会社を大きくすればきっと経営は楽になるだろうと思いがちです。しかし、それらはすべて間違っているのだと痛感します。私が今あるのは、祖先の積んでくれた陰徳のお陰、父親が敷いてくれたレールのお陰にすぎないのだとしみじみと感じます。そもそも「お陰さまで」という謙虚な言葉に徳の本質が表されていますね。念願の本を出版できたのも、父の言葉があったればこそです。ましてや、事業においてはいまだに父の手のひらを出ていないと日々痛感させられます。

こうした日々においてまさしく駒井氏の深い信仰の通り、日々をいかに成田にあってよかったと言われる会社経営を目指すか、自分の行動が社員の物心両面の幸福追求に本当につながっているのかと自省するばかりです。


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