映画を観た記録49 2023年5月7日    アンリ・ジョルジュ・クルーゾー『犯罪河岸』

Amazon Prime Videoでアンリ・ジョルジュ・クルーゾー『犯罪河岸』を観る。
劇団の人気女性歌手・ジェニーとそのピアノ伴奏引きの夫・モーリスはいつも夫婦喧嘩が絶えない。モーリスは、ジェニーが浮気しないかと心配ばかりしている。ある日、ジェニーは映画会社と取引のある大富豪・ブリニョンに家に誘われる。ジェニーは映画に出演できると喜んで向かった。しかし、ブリニョンはジェニーに言い寄ろうとして、怖くなったジェニーはブリニョンの頭を叩く。怖くなったジェニーは逃げる。ジェニーは自分が殺したと思い込む。
ルイ・ジュ―ヴェ扮する警部は夫・モーリスを容疑者の線で捜査し、供述を取る。供述を取っている日がクリスマスで窓から雪が見える。供述シーンが、警察の強引な自供のしかたが演出される。他にも関係者としてタクシー運転手の証言を取るときは、ルイ・ジュ―ヴェ扮する警部は、運転手の身分証明書を返さずに胸ポケットへしまって、返さないことで強引に証言を取る。
この映画の面白いところは、モーリスは知性はあるものの、警察を信頼していなくて、罵倒するし、ジェニーもそうである。ジェニーの幼馴染のドラも警察を悪く言う。ルイ・ジュ―ヴェ扮する警部も、ジェニーが警察なんか死んでしまえばいいんだわ、と言ったら、胸ポケットから新聞の切り抜きを出し、殉職した警官の話をして「困ったときはすぐ警察に頼むんだからな」というようなことを言ってドアを強く閉めて出ていく。
警部は、モーリスの線が固いと考え、留置所へぶち込む。モーリスは腕にはめていた時計を壁に叩き壊し、ガラス破片で腕を切り、自殺を図ろうとする。クリスマス・ツリーが飾ってあるジェニーの家へ警部が捜査しているところ、電話がかかってきて、慌てて、署へ向かう。
結局、ジェニーもモーリスもブリニョンを「殺した」犯人ではなかった。犯人は誰でしょうかね。それは映画を観てのお楽しみ。
クルーゾー監督は1943年の『密告』という作品でナチスとの協力を疑われてしまい、沈黙を余儀なくされていたが、ジャン・コクトーの支援により、戦後最初の復帰作が『犯罪河岸』である。
基本的にはミステリー映画です。探偵が犯罪の真実を解明するのではなく警部が解明するのです。
ちなみにルイ・ジュ―ヴェ扮する警部の息子は植民地から連れてきたアフリカ系の子どもです。警部の息子がアフリカ系とは粋なセンスですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?