映画を観た記録92 2023年9月2日    大浦信行『靖国・地霊・天皇』

Amazon Prime Videoで大浦信行『靖国・地霊・天皇』を観る。
オープニングから、間もなくたったころ、上官の奸計により、チャンギ刑務所にて、28歳の若さで戦犯、そして絞死刑にされた兵士が遺した手紙が語られる。大日本帝国の上官どもは、敗戦が起きたら、死刑を免れるために下士官へ奸計でもって罪を押し付けたのだ。この醜悪さが、自民党や東電、財界に脈々と受け継つがれている。
この映画を観るまで、私もやはり、大日本帝国の侵略戦争を外形的な知識としか知っていなかった。内海愛子氏が本作品に登場するが、靖国神社は戦場で死んだ兵士が誰でも祀られる神社ではないのだ。戦死した兵士は祀られるが、戦病死は祀られないのだ。本作品の後半でインパール戦線に従軍看護婦として送られる19歳の少女の書いた手紙が語られるが、彼女のその靖国へ祀られて、お母さん、誇りに思ってください、という願いとは裏腹に、彼女は兵士ではないからか、戦病死である。内海愛子氏の言葉を思い出し、19歳の彼女は靖国神社に祀られはしなかった。このような差別が大日本帝国支配の手段の一つであり、それもまた、現在の正規雇用、非正規雇用という差別労務政策に脈々と継承されている。
東條英樹の孫が、台湾人の靖国訴訟原告、韓国の靖国原告訴訟と議論した内容が文字で流れる。なんと、東條の孫もまた、東條イズムなのだ。東條の孫は東條由布子はまったく反省していないどころか、台湾人の原告訴訟に向かい、日本人として戦ってくださって感謝している、などという他民族への侮辱そのものでしかない発言をしている。
また、朝鮮人が日本名を名乗らされ、特攻隊をさせられた兵士の手紙も語られる。
大日本帝国は従軍慰安婦をはじめ、卑劣、無責任、愚劣、狂気、醜悪、腐敗の国家である。
われわれは大日本帝国イズムを切らねばならない。
その無責任、愚劣、卑劣、狂気、腐敗、醜悪の国家の頂点には戦犯ヒロヒトが存在していた。
ヒロヒトを許せるはずがない。
ところでなぜ、日本映画界は、映画界からではなく、周辺から問題作が生まれるのだ?大浦信行は芸術家である。映画産業の人ではない。
おそらく、映画産業に入ると、醜悪な世界に紛れ込むのだろう。
だいたい、カチンコを片手でできないとダメとか、助監督にやらせるような産業的欠陥があるようでは「万死に値す」だ。


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