映画を観た記録110 2023年10月1日   アレクサンドル・コット『草原の実験』

Amazon Prime Videoでアレクサンドル・コット『草原の実験』を観る。

タイトルの『草原の実験』の実験の意味は映画終わりごろの核爆発実験をさしているのだと理解できた。本作品の核爆発の映像が生々しすぎる。リアルすぎる。映像技術の進歩としかいいようがない。

本作品は核爆発実験が映画のストーリー(とはいえ、かすかにある程度)の中に含まれているので、アクション、SFかと思われるかもしれないが、ジャンル的には恋愛映画である。もっとも非ハリウッド的の映画の作られ方であり、セリフが一切なく、ジャンル映画とは言えない。ジャンルは強いていえば恋愛映画である。

本作品はセリフが一切なく、演技ですべてを表現していく。女性の主人公を演じた女優の表情が素晴らしく、その女優の表情におちる影、光がとてつもなく美しい。主人公を演じた女優は東洋人である。この女優はうつむいた顔が魅力的に見える、というミリアム・ルーセル型である。

自然の描写が素晴らしく、風が平原の草々をなびいていく画面は素晴らしい。そして、平原には少女と兄が住む一軒家以外、全く何もない。このような場所なので、画面を邪魔するような建築物はなく、超ロングで撮影しても邪魔な障害物はないのであるから、超ロングが多い。超ロングをやや俯瞰でとらえた画面は、少女が歩いているだけ、とか、少女に恋をしている男がサイドカーを走らせているだけ、とか、効率を言いたくなる人は、こんな画面に意味があるのですか、と言ってきそうだ。しかし。本作品はそんな疑問すら浮かばせないくらい圧倒的な映像である。

天才が作ったとしかいようがない映画である。

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