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ヴィンランドサガ 感想

アニメを見て、一番印象的だったのは1期18話「ゆりかごの外」のクヌート王子覚醒シーンでした。
「真の愛」(アガペー)について哲学的な要素を嚙み砕いた説明、演出に感動したのでメモ代わりの感想書きます。

■愛とは ⇒ クヌートの決意
クヌート王子は忠臣であるラグナルを亡くした際に、神父に問いかけられます。
神父「ラグナル殿のあなたへの思いは愛ですか?それは愛ではないのではないですか?」
クヌート「ラグナルに愛がないのなら(中略)親が子を・・・夫婦が互いを・・・ラグナルが私を大切に思う気持ちは一体なんだ?」
神父「差別です。王にへつらい奴隷に鞭打つことと大して変わりはありません」

クヌートとラグナル

「自分自身より大切な誰かに幸せになってほしいために尽くす行為」
には「自分にとって特別な誰か」という限定条件がついています。
上述の愛を赤の他人にできる人はいません。この限定条件を神父は差別と呼んでいます。
一方、神は無条件に全ての人を愛する。これをアガペーというそうです。

振り返ってみると、トールズが1話で死にかけの奴隷と羊8頭を交換し奴隷が死んでしまう話や、4話で誰も傷つけずに戦い抜く様は初見では全く理解ができませんでした。
18話でこれらの行為が愛であることがわかります。

「こんなものに頼らざらるを得んのは、俺が未熟だからだ…本当の剣士には剣などいらぬ」

人間は差別することで争いが生まれる。
だからこそ神父は死こそが美しいと評価しました。

(クヌートが雪を手に取りながら)
「これが愛なのだ。あの空が あの太陽が 吹きゆく風が 木々が 山々が、世界がこんなに美しいのに人間の心には愛がないのか」

「人間の心には愛がないのか」

死によって人は朽ち自然に還る=神の御業の一部となる。争うことも奪うことも憎むこともなくなる。
愛の本質が死で、神が救いを与えてくれないのであれば、クヌートは自らの手でこの地上に楽園を築くことを決意します。

■感想
クヌートは逃げる最中、食料の強奪のために62人の村人を殺すことを黙認しています。
このような暴力、略奪が横行する世界観だからこそ平和を望み、人々は宗教に救いを求めるということが作品を通して直観的に伝わってくる内容でした。

最近、広域強盗事件や刺殺事件がよく目につきます。簡単に・気軽に大金が手に入れるという点でバイキングに近い考え方だな。とふと思いました。
映画「JOKER」を観ても思ったことなのですが、
金銭面・生活面・人間関係・障害などで追い詰められた人間の行きつく先は暴力です。暴力こそが簡単な自己表現であり、問題解決手段になります。

現実では結論の見えない問題、救いのない話ですが、
この作品における王国・愛・楽園の在り方や結末を見ていきたいと思います。

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