インハウスを経験してみて

【このnoteは法務系Adbent Calendar2021のエントリーです】
今年も「ちくわ」さんからバトンを受け取りました。
法務に役立つアニメがこんなにあったとは…
わたしは一つも見たことがなかったので年末年始に見ようと思います。

普段、Twitterやnoteでは個人情報保護法ネタが多いのですが、今回はインハウスローヤーになってみて思ったことを気楽に書いていこうと思います。

1 自己紹介

インハウスといっても幅広いので、まずはわたしがどんな環境にいるのか簡単に自己紹介させてください。
わたしは現在、某IT企業のセキュリティ部門のシニアマネージャーとして勤務しています。セキュリティ部門といえば技術的なセキュリティをイメージされる方が多いと思いますが、わたしは主に日本の個人情報保護法や通信の秘密といった法制度や海外のGDPRを含めたデータ保護法全般についての戦略立案やサービスレビューに関する仕事をしています。
また、所属先企業とは別に副業としてインハウスハブ東京法律事務所に所属して弁護士業務も行っています。
インハウス歴は2年ちょっとで、それ以前は法律事務所や総務省(出向)で勤務していました。

2 インハウスになったきっかけ

インハウスになる直前は法律事務所で働いていました。
インハウスには興味がありましたが当時は積極的に転職活動はしていませんでした。たまたま現在所属している会社を紹介されて、その業務内容が面白そうだったので面接を受けることにしました。
わたしは法律事務所に所属していたときもデータ保護法関連の案件が好きだったので、そのような案件に関する実務プラクティスを多く積める環境に自分を置いて専門性をより高めたいと思ったのと、人生一度は企業で働いてみたいと思っていたのでやるなら今しかないと思って転職を決めました。
当時は年齢を重ねてからインハウスに転職することはあまり現実的ではないかなとも思っていたので、試すのであれば若いうちがいいと思ってもいました。
インハウスになった後に法律事務所で弁護士として働きたいと思ったらまた戻ればいいや、という楽観的な気持ちもありました。

3 インハウスになって感じたこと

結論としては現在の所属先では毎日ワクワクした仕事が降ってくるので、転職は正解だったと思います。
ただし、これは現在の所属先企業の所属部署の仕事がわたしに合っているというところが大きい気がしています。
インハウスの仕事というものは法律事務所以上に多種多様なものがあり、その業務内容は法務に限られるものでは全くありません。そのため、インハウスの向き不向きというのは、結局はその会社のその部署でどんな仕事ができるのか、それが自分に合っているのかどうか、で決まるものなのかなと思いました。

4 よく質問されること(第1位~第5位)

インハウスについていろいろ感想を聞かれることが多いので、よく質問されることをまとめてみました。大体の順位はこんな感じです。

⑴ 第1位:インハウスってどうですか?
わたしは今の仕事は楽しくてワクワクします!
ただし、これは今の所属先の所属部署にいることが前提となっています。そのため、インハウスの仕事全部が楽しいかどうかは当然わからないです。
個人的にはインハウスになるかどうか迷っている人は、あまり法律事務所・インハウスに二分して考えるよりも、単純に自分がやりたい仕事ができる場所はどこか、満足できる収入が得られる見込みがあるか、自分が理想とするワークライフバランスにマッチしているか、といった観点から勤務先を考えればいいのかなと思います(皆さん実際そうかもしれないですが)。その結果、マッチしそうな場所が企業のインハウスであれば一度面接を受けてみればいいと思います。
せっかく弁護士資格があって自由がきくのに法律事務所だけに選択肢を狭めるのはもったいない気がしています。

⑵ 第2位:ワークライフバランスはどうですか?
これは基本的には法律事務所よりもインハウスの方がプライベートの時間を取ることができるケースが多い気がします。
ただし、これも会社やポジションによるのかなと思います。
わたしは現在の所属先には役職なしで入社して、現在はシニアマネージャーですが、役職がついていなかった頃と現在では業務内容や範囲は大きく異なっており、ワークライフバランスも入社時とは違います。

収入は、業種、ポジション等によって大きく異なります。インハウスだからといって収入が低いとは言えないと思いますが、他方大手法律事務所のパートナー並の収入を会社員の立場だけで得ることも難しいのかなと。
このあたりはまさにワークライフバランスとして何を優先すべきかという話なのですが、会社からの収入だけではなく副業を収入源とする手段もありますので、会社が副業を許可しているかどうかもその会社に転職を決めるに当たって重要なポイントになると思います。

⑶ 第3位:インハウスの魅力って何ですか?
わたしはサービス・機能の実装の細部までレビューすることができることと、様々な分野(法分野に限定されない)の専門家の方たちと一緒に仕事をできることが魅力だと思います。

企業に所属してわかりましたが、サービスがリリースされるまでに生じる論点の中で外部の弁護士に相談する論点というのはサービスのスペックのうち1%を占めるかどうか程度しかないというのが実感です。
それ以外の99%のスペックについて、より良い実装を検討して、それに向かってスペックを改善していくというのがインハウスの醍醐味であり、やっていて面白いところだと思います(個人的には)。

また、会社全体からみると法務人材はごくわずかであり、それ以外の各分野の専門家の人たちが会社には多く所属しています。
そのような人たちと一緒に仕事をして刺激を与えてもらい、法分野以外のナレッジやプラクティスを現場で吸収できるというのもインハウスの魅力の一つだと思います。

⑷ 第4位:(弁護士)資格ってあった方がいいですか?
あまり意識はしないのですが、資格は役に立っているのかなと思います。
少なくとも弁護士という資格がある前提で、周りの人たちが自分のことを信頼してくれている側面はある気がします。
わたし自身は、資格があるかどうかは当然のことですがその人の能力の有無とは直結しないと思います。そもそも司法試験を受けようと思っていない優秀な人たちも大勢いますし、環境などの関係で司法試験を受けることが難しかった方もいらっしゃるからです。
もっとも、資格を持っていることによって一定の信頼を得られる、少なくとも自分の発言に耳を傾けてもらいやすい、という意味では効果があると思いますので、資格はないよりあった方が良い、ただその程度のものであって資格の有無が大きく意味を持つ場面はそんなに多くはない気はしています。

⑸ 第5位:副業ってどうですか?

副業いいですよ(笑)
いくつか良いことはあると思いますが、単純に会社からの収入が希望額に満たない場合、副業の収入によって補填できる可能性があります。

ただ、当然副業の時間がとられるのでそのあたりはワークライフバランスとの兼ね合いかなと思います。
会社からの収入をベースラインとして、それ以上は副業で稼ぐというやり方はアリだと思っています。

5 まとめ

思い切ってインハウスをやってみて2年経ちましたがおかげさまで事務所時代よりも刺激的な日々を毎日送ることができています。
興味がある方はインハウスの選択肢も検討されるとよいと思いますし、悩まれている方はTwitterでDMをいただければ相談に乗らせていただきます。

それでは今回のnoteは以上です。
明日は、aikoさんです。楽しみにしてます!




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