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頭が痛いニューヨークのチップ制



ニューヨークレストラン事情2

第2回は、チップ制について書こう

海外旅行に行くと、通貨の違いとチップに関して、支払いの都度、頭で計算しなければならず、ストレスを感じる人も多いと思う

若い頃、当時のボスと海外視察に行った際、
チップに関してこう言われた。
「俺はチップは、若干多めに払う事にしている。勝手わからぬ土地で失礼な事をする事もあるだろう、それも含めて多めに払うんだよ」
それ以来私も、多めにチップを払うよう心掛けてきた。それもあってその都度の計算もシンプルでストレスが少ない。
もっとも、酷いサービスの場合は減額する事もあるが、嫌な気持ちで終わらないよう、こちらからコミュニケーションを取るようにはしている。

さて、本題に入ろう。
あまり面白い話しではないかもしれないが、ニューヨーク(アメリカ)でビジネスをする場合には重要な事なので、参考になるはずだ。

ニューヨークのレストランのチップは通常、本体価格の15%~20%程度。

チップがもらえる権利があるのは、サーバーのみで、キッチンスタッフや、マネージャーにチップを渡す事は違法となる。
また、配分方法は2種類あり、担当テーブルで分ける場合とその日(時間)で対象者全員に均等分配する場合があり、
通常、担当別にする事が多いが、いきなりステーキの場合、対象者全員に均等分配していた。


いきなりステーキのサーバーは基本自給を10ドルからに設定していた。
チップ額を合計してその日の時給換算が15ドル以下なら、最低時給15ドル(2019年当時)としての給料となる。
大抵は、15ドルを超え、基本給料分の何倍かになる事もザラであった。
このため、サーバーはお客さん来店数、担当テーブル、サービスに気を配る事になる。

一風堂ニューヨークの責任者の方に聞いたのだが、
日本人のお客さんとかチップを払わず帰る方がいるそうだ。
その際には、店の外まで追いかけて
「何かサービスに問題ありましたでしょうか?」
「え?、、別に」
「では、チップのお支払いをお忘れですので、お願いしてもよろしいですか?」
納得される方もいれば、しかとしてそのまま帰っていく方もいる。
「従業員を守るために、店としてはそこまでやらなければならない」
との事だった。
別のニューヨーク在住のレストラン事情に詳しい方にこの話しをしたところ、
「そうですよ、黙って見過ごすと、従業員から訴えられるリスクがあるからね」

私は大そう驚いた。
何故なら、いきなりステーキではチップを支払わないお客さんが、15%~20%もいたのだ。
急ぎ、弁護士に確認したろころ、
「チップは強制では無いから、お客さん都合で支払わない場合、店側が従業員から訴えられる事は無い」
いやー安堵したが、何ともかんともチップ制には随分と悩まされた。

こういう事もあった。
いきなりステーキで、その時間、サーバーのスタッフがおらず、マネージャーと日本からのコーチスタッフ、キッチンスタッフでサービスをしていた。
さて、この場合、この時間のチップは誰に支払うものなのか?
マネージャー? キッチンスタッフ?

いやいや、その時間にはいなかったが、別の時間や別日に勤務していたサーバーに支払う。
というのが回答で、それ以外は違法なのだ。

キッチンスタッフや洗い場はチップが無いので、表が大変であれば、中から出てきて、手伝ってもらう事が難しい。
というより、キッチンや洗い場のスタッフに、サーバーの仕事を指示する事自体が違法となる。

寿司屋のカウンターの板前さんや、いきなりステーキの肉カット場で、お客さんとの会話をする仕事でさえチップNGなのだ。
労務の弁護士に再三確認したが、NGとの事で、何とも納得できない制度である。

※寿司屋でチップは板間さんには入らない。お茶を運んだりしているスタッフに配分される。

※カット場のスタッフには、チップは配分されない。


こんな賛否両論のチップ制に関して、アメリカ国外から出店している企業へ、チップ制度に関してのインタビューを受けた時、
ニューヨーク市長に対して、問題点を伝えてみたが、ほぼスルーされた。

こんな事だから、チップ無しの仕組みで運営する事も検討したが、法律上チップ無しはできないため、
チップ制を続けるしかなかった。

※厳密にいえば、やり方は色々あるが難しい説明になるのでここでは省略する。


最後に、チップとは関係無いが、給料支払いについて納得がいかなかったお話し。

ある従業員がレジのお金を盗んでいた事が発覚した。
防犯カメラで確認し、証拠も押さえた。
しかし、盗んだお金を給料から天引きする事は違法となり、しっかり働いた全額を支給しなければならない。泥棒でも!
この場合、解雇する事は可能で、警察に伝え、返却するよう手続きを進めたが、返却は困難を極めるのだ。
※保険を使うしかない(笑)


結局、弁護士費用と保険費用が膨大にかかってしまう仕組みだ。

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