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薄い壁一枚隔てて 別の星めがけ

朝、鳥の声で目が覚める。

友人から譲り受けたその小鳥の色鮮やかな羽は朝日に反射し、寝起きの目には眩しすぎるほど輝いている。

彼が小さく羽ばたくのに合わせ、私は背伸びをした。

「アレクサ、PUNPEEの曲流して」

起きたばかりの低い声でアレクサに呼びかける。

「Amazon MusicでPUNPEEの楽曲をシャッフル再生します」

天井近くに取り付けたアレクサから流れてきたのは、この一曲だった。

「こり固まった脳みそ 『遠回りが近道』と言ってくれよアレクサ」


曲名「Wonder Wall」は、なぜ「Wonder Wall」なのか。

PUNPEEが7月にリリースした最新EPの5曲目に収録の「Wonder Wall feat.5lack」。

実の兄弟であるPUNPEEと5lackが共演するこの曲はピアノの伴奏から始まる。

「薄い壁一枚隔てて 別の星めがけ」「この関係は買えません 親に感謝」というリリックからもわかるように、2人の兄弟愛が結晶化された一曲と言える。

この「Wonder Wall」という曲名はどういう意図で名付けられたのだろうか。


世界一仲の悪い兄弟、「Oasis」のリアムとノエル

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音楽好きなら知らない人はいないであろう、イギリス・マンチェスター出身のロックバンド「Oasis」。

1991年に結成。1stアルバム収録の1曲目「Rock ‘N’ Roll Star」を皮切りに「Don't Look Back in Anger」「Whatever」「Live Forever」など、数々の名曲を世に残し、2010年に解散した。

その圧倒的音楽センスや世間からの人気とは裏腹に、Oasisの代名詞といえば、メンバーのリアム(ボーカル)とノエル(ボーカル / リードギター)の不仲だろう。

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【弟・リアム(左)と兄・ノエル(右)】

実の兄弟である、兄・ノエルと弟・リアムはその仲の悪さで有名だった。

ライブ本番やライブ前後での言い争いはもちろん、ノエルのドラッグ使用に腹を立てたリアムがノエルをタンバリンで殴打したことも。

兄弟喧嘩エピソードがたびたび報道され、兄弟間の不仲は世界中に定着していった。

参考文献:90年代UKロックを代表する世界一仲の悪い兄弟バンド、オアシス

「アナログばっか掘って 君は刺青ばっか掘って」


Oasisの名曲「Wonderwall」

Oasisの名曲の一つに「Wonderwall」という曲がある。

この曲は、The Beatles のジョージ・ハリスンが音楽制作を担当した、1968年の映画「Wonderwall」からネーミングされたと言われている。

映画の主人公・オスカーは年老いた科学者で、彼の住んでいるボロアパートの隣の部屋にペニー・レインという若い女性モデルが引っ越して来る。

オスカーは壁の穴からレインをのぞき見して恋をする、というストーリー。

ノエルは「Wonderwall」制作当時、後に結婚することになるメグ・マシューズと交際しており、曲についてのインタビューでは「俺の彼女についての曲なんだ」と口にした。

数年後、ノエルはメグと離婚することになり、後のインタビューでは「Wonderwall」について「自分を助けてくれる想像上の友達のことなんだ」と語っている。

今回議題に取り上げている、PUNPEEと5lackの「Wonder Wall」と曲名が一致しているのは偶然なのだろうか。

個人的に確証のないことを文字にするのは性に合わないので、Oasis「Wonderwall」とPUNPEE「Wonder Wall feat.5lack」との関係性については断言を避けておく。

ただ、「兄弟」というテーマを際立たせるサンプリングであるのは相違ない。

「薄い壁一枚隔てて 別の星めがけ」


繊細に散りばめられたサンプリングの数々

次に、「Wonder Wall feat.5lack」のサンプリングについて見ていく。

「仮に2で割って最高 そうならなくても」

この歌詞は曲のサビ部分に使われていて、5lack個人名義の楽曲「Hot Cake」の歌詞をサンプリングしている。

「俺のいいとことお前のいいとこ 足して2で割りゃ 最高 最高だと思うよ」

2人のコラボ曲において、弟・5lackの名曲をサンプリングする兄・PUNPEE。


次に、曲中で弟・5lackが歌う歌詞について。

「TVで見るFamousも 君が凡人ならば凡人」

PUNPEEは2008年、SEEDAとDJ ISSOによるストリート発のミックスCD「CONCRETE GREEN」に参加し、楽曲「お隣さんより凡人」を提供している。

一般ピープルという意味の名を持つ、PUNPEEらしい題名だ。

先日、元・AKB48の秋元才加との婚約を発表し、星野源や加山雄三とのコラボを果たすなど、今や国民的なヒップホップMCとなったPUNPEE。

そんな兄を讃える、弟・5lackの一節は聴くたびに琴線を揺らす。


最後に、再び5lackが歌っている歌詞について。

「馬鹿なFameが夢に見る 君のイメージに疲れないでね」

この歌詞は弟・5lackから兄・PUNPEEに向けた兄想いな弟のメッセージ。

PUNPEEの名盤「MODERN TIMES」に収録された「Pride」からのサンプリングである。

「中身のないヤツにばっか 知れたFameじゃ意味がない」

先にも挙げた通り、数々のアーティストとのコラボや元・アイドルとの結婚によりさらに世間からの注目を増したPUNPEE。

弟・5lackは、兄に向けて「にわかファンが思い描くPUNPEE像に無理して応えなくてもいいよ〜」と言っているようである。

ちなみに、この「Pride」にはサンプリング元の「David T. Walker / The Windows of the World」があり、気になる方はぜひチェックしていただきたい。


最後に

最後に以下の動画を添付して締め括りにさせていただこうと思う。


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