2020 以降

     広場

広場に行ってみた
誰もいなかった
彼等は突然消えてしまった

市場の賑わい
売り買いする声
恋人は魔法にかけられたまま

光と熱の生まれた場所を
ワタシは知りたい

     
     マボロシの誘導員

マボロシの誘導員が
道路脇に立っていた
止まれ 進め 迂回しろ
これ以上行くな 戻れ

聞いてるのか おい 戻れ

路上に留まるのは
波動の描きもの
時間と距離の負荷で
肉体はおさらば

ひしゃげた車から今夜
エスコートしてよ 
霊魂の不滅を
証明してくれないか


     石鹸

地面の割れ目から ワタシは生まれた
枯葉で背広をこしらえた

水辺はいつだって ワタシのお気に入り 
水汲み女たちの お喋りが聴けるから

ワタシには神の血が混じっている
恋と冒険に明け暮れた
エンキドゥが倒れたその時
ワタシは死と老いを恐れた
永遠の生命を探して
永遠の生命を求めて
世界中そこら中
歩いて走って 裸足に手ぶらで
今 帰るところ


     立ち読み

あらゆる通りに本屋があるし
立ち読みしている女の子がいるはず
それはいつでも何処かに見つかる場面で
出来事は起きたのかこれから起きるのか

近づいてよく見れば 道路に建物
彼らは家を建て町を作り そこに住んでいるんだ

どんな通りにも本屋はあるだろう
立ち読みしている女の子がきっといる
同じ人かもしれない それともよく似た別人
チクタク時計とは違う時間のお話


     群集

見えない群集が 支えていたから
卵は落ちないし 水はこぼれない

無数の意識は 何処にいるんだろうか
限りない空間を 想像してみよう


     オイデオイデ

河原の悪霊が ワタシに取り憑いた
オイデオイデをする 背の高い草の招き

顔付き人相が まるで違っている
オイデオイデよ その虫には毒がある

オマエの魂だ 返してあげようか
オイデここまで 取りにおいでサア早く


     夜市

夜市がたっていた 仮面を並べる店
一つ求めてみよう 何かの役を演じよう
夜市がたっていた ボウと浮かぶように
ワタシの輪郭は 滲み流れ薄れていく

人は周りで知れる 付き合いがアナタを表す
家族 友達 恋人 隣近所 同僚
夜市がたっていた 仮面を売る店先
一つ手に入れようか 一体オマエは何者だ


     ヒノマル

ワタシのヒノマル 黒地に白く
ネガポジ反転 ワタシのヒノマル

神の名をつけよう 用を足せば捨てる
山川海へと 使用済みの神々


     犬のおまわりサン

ハナが利くんだ 犬のおまわりサン
誤魔化せはしない 怪しい奴め

吠えろ 咬みつけ 犬のおまわりサン
それがお役目 さあ巡回だ

犬のおまわりサン なんてお利口さん
犬のおまわりサン とてもよく出来ました


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