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目隠しで、トリケラトプスを想像した日~後編~

さてさて、前編に続きまして後編です。

いざ実習!


4 基本的な動きを知ろう

同行援護の基本的な動き。私たちは援護する方の立場なわけで、そのガイドの練習なのですが。ペアになり、見えない状態の利用者の役と、ガイド役を、交互に繰り返します。

まずは挨拶や歩き方を練習します。
正面に立って、しっかりと利用者さんに向き合って挨拶をすること。
体のどちらがわに立てばいいか確認すること。歩き出し方。
細かなポイントがたくさんあります。

ただ挨拶をして歩き出す、それだけのことなんだけど、あれれ、これで良かったかな、とか笑

手順と思ってしまうと、なかなか難しい。

そして、これは同行援護の資格の講習だし、テキストにだって「見えない人の役をするときの心得」なんてことは細かく書いていないわけで。

でも、手が空いてる方が利用者役をする、ガイド役の練習相手をする、みたいなことではなくて、
「目が見えないってどういうことなんだろう」を知る時間になっていることが、この講習の肝なんだなぁと思いました。

テキストを読むだけでは、「手順」「マニュアル」に思えてしまうその一つ一つの基本動作に、「見えない相手とどう向き合ったら、不安なく歩いてもらえるか。信頼をしてもらえるか。」という真心の重要性が込められているということが、目をつぶってみるとよくわかる。

顔を見て笑顔で話してくれているか。
向き合ってくれているか。

目をつぶっても、つぶったからこそ、とても良くわかるのです。

そして、机や椅子を避けながら室内を歩く練習を小一時間したあと、いざ、外での演習に出発です!

5 池袋ウエストゲートパーク(の近く)にて

なんだって、こんないきなり大都会の真ん中で、実習なんでしょうかねw涙

公園まで歩いたり、駅の比較的閑散としている階段の場所を利用して、ガイドの練習をするわけなのですが。

ガイド役の緊張感以上に、目をつぶった状態で外を歩くということが、本当にこんなに怖いなんて、と思って、私の神経はその恐怖で結構すり減りましたw

どの場面講習でも、その時のタイミングやポジションで、自分が先に利用者役をしなければいけなかったのもあるのかな。なんせ怖いw

やる気のある私自身の意に反して、踏み出す一歩が異様に小さい、「ヒャぁ」だの「こわぁい」だの言ってビクビク進めないぶりっ子ババァが爆誕してしまい、2つの意味で泣きそうでしたw

白杖の使い方が、まず難しい。

段差に引っかかったり、何かに白杖があたるたびに、ビクビクしてしまう。

白杖を前方に出しながら、少し左右に振りながら、自分の歩く先の空間を、確保と確認しているような気持ちで歩くわけなんですが、それでも、自分の目の前にいきなり何かが飛び出してくるような、電信柱とかにバーンと当たってしまうような不安が拭えない。

隣で、ガイド役の相手が誘導してくれていて、事細かに色々な説明をしてくれていても、講師の方達が付き添ってくれて、みんなでゾロゾロ歩いているわけだから、危険な状況にはないことなんてわかりきっているのに、それでもやっぱり、怖い。

階段って、段差って、なんなんだよ、あれw
段差はまぁ仕方ない、自然界に元々あるもん。階段だよ、階段。なんだよあの形状。
誰ですか?階段発明した人?!

そして、それを便利だなっつって、世に広めちゃった人たち。
ちょっと私、あなた達にお話があるw

いや、わかります、、、。
階段は生活の工夫だし、人類の知恵だし。
古代遺跡だって階段だらけだし。
必要不可欠なものですよね。

、、、たださ、スロープの方が便利だし!

本当に、よーく街中見てみて。
別にこれいらなくね?みたいなとこに、階段だの段差だのありすぎ(デザインとして素敵、という意味ですらなく)。

バブルの時代に、「予算余ったし、ここ、階段いっとく?なんか、段々にしとく?」みたいなノリあったでしょ、って思ったw

そういう意味で、視覚障がいや車椅子と、今の街の構造そのものが、折り合いが悪すぎるなぁって思った。

そりゃそうだよね、作ってる人大抵の人は見えてるわけだし、歩けてるしね。
そうやって、もうずーーーーーーっと、街づくりがされてきていたわけだし。

「ユニバーサルデザイン法」ができてもさ。

私が最初、このガイドヘルパーの、基本動作のテキスト読んだ時みたいに。
実際に目をつぶって怖さを知るまで、それがだたのマニュアルの字面に見えてたのと一緒で。

そこにどんな思いやりや、他者の困難への配慮が込められているかを想像しながらその法律を使わなかったら、絵に描いた餅にしちゃうよね。

なんか、そんなことを思いながら、ぶりっ子ババァは池袋ウェストゲートパーク界隈を目をつぶりながらウロウロして、恐る恐る階段を降りたり登ったりして、1日目が終了したのでした。

※調べたところ、転倒防止という観点では、身体が垂直に保たれるので、スロープより階段に軍配が上がるらしい。(階段関係者の皆様、すみませんでしたw)

6 さらに具体的な演習で役者魂に火がつく人たち(段々小見出しのテイストがおかしくなってきたw)

2日目は、室内で病院の受付&お会計の練習と、実際に池袋の地下街で、電車に乗ったりお買い物をしたりします!

室内での病院の実習は、ペアをさらにグループにして、病院の人と、利用者さん&ガイドの組み合わせで、練習しました。

実際の同行援護の講習の本筋とは全く関係ないんですけど、2日目になるとみんな少し打ち解けて、それぞれのキャラクターが少しづつわかってきまして。
そして、年齢もみんな若めなので、病院コントが始まっちゃうんですよねw

講習会に申し込んだ時点では、こんなに爆笑する時間になるとは夢にも思っていなかったですw
みんな熱演。ヤブ医者役をw

参加者の組み合わせにもよるとは思うのですが。

この講習会の主催者である事業所、株式会社mitsuki の代表である高橋さんや、講師の皆さんのフランクなキャラクターが、絶対に、この楽しい雰囲気を生み出してるよなぁって感じました。

その上、実際のガイドに必要な技術、要点もすごくわかりやすいし。

そして、質問や疑問が飛び交いやすい空気感を作ってくださるから、やりやすい。

今まで私が受けてきた、一般的な「講習会」とか「勉強会」の中でも、時間や場所の使い方がすごく工夫されていて、参加者みんなが能動的で、良い講習会だなぁ楽しいなぁ、受けに来てよかったなぁって感じました。

学ぶことって、楽しくないと。

しかも、誰かのために使う技術や知識なんだから、優しい気持ちで身につけたい。

そういうものが全部かね備わってる講習会だなぁって、嬉しい気持ちになったのでした。

このあと、買い物講習で、ちょっと悲しい気持ちになるとは、この時はまだ知る由もない私なのでした、、、、ちゃらーん。

6 目が見えない人は聴覚嗅覚触覚に優れているという説を、私は信じない(だから、小見出しのテイストよw)

さぁさぁ、講習会もいよいよ大詰めです。

池袋の丸の内線のホームで、電車の乗り降りの練習と、地下街のショッピングセンターでお買い物です。

何回も言うけど、なんでこの大都会でいきなり実習なのw?

年の瀬の、日曜日の午後の池袋。丸の内線ってw

めっちゃくちゃ、人が多い。

見えてて私用で歩くのだってうんざりするような、日曜日の午後の池袋の地下街で、目をつぶって、白杖を使いながら歩く怖さよ。

全神経を集中して歩くから、いろんな音が聞こえるし、匂いを感じる。

よく目が見えない人は、視覚以外の能力が高いって言う人いるけど、能力は、見えてる人と多分おんなじくらいだw
研ぎ澄まさざるを得ない、って感じなんだろなって思った。

まず、都会の人間、他人に関心なさすぎる。

白杖が、周囲に全く意識されないから、通り過ぎる人に当たってしまうんだよね。

ガイド役の人が、前からの人の流れは教えてくれるんだけど。

後ろから、追い越していく人のことまではわからないじゃん。

そういう人に、白杖を当ててしまうたび、すみませんって言ったし、ガイド役の人もすみませんってお伝えしてくれたけど。

「こっちは見えねーんだよ!!!白杖使ってんだろが!!!!あんたが避けてくれやぁぁぁあぁあ!!!!」

って、心の中で、ほんとに何度もイライラしたw
もう仕方ないから、目を開けて歩いてガイドしてもらった。
メインはあくまでも、ガイド役の時の誘導の仕方の練習だから。

そんな時に、可愛い子どもの声で

「えーなんでー。目が見えない人がいっぱいいるー。」って聞こえたの。

なんの悪意もない、可愛い声。

なんで?何が、なんでなの?

会社帰りのサラリーマン達が10人くらいで歩いてても、ボク、なんでって思う?

目が見えない人がみんなで歩いてたら、何が不思議なの?

って。

心の中で、すごくムキになってしまう自分がいた。

疲れと緊張で、過敏になってたとこもあるよね。きっと。

なんなら、自分だって別の時間別の場所で、同じような光景に出会したら「なんかやたら白杖の人とすれ違うな」とか、思ってるのかもしれない。

口には出さなくても。

ガイド役の人に「今の子どもの声、聞こえました?」ってきいたら、

「いや、全然わかんなかったー」って。

でも、目を閉じていた私には、聞こえてしまった。

すごく、心が重くなりながら、講習会場に戻りました。

最後のプログラムは、実際の利用者さんとのお話会でした。

そのお話会の中で、

「視覚障がい者の中でも、『同行援護を利用してお出かけをしよう』っていう心境に辿り着けている人は、結構少ないと思う。だから基本的に利用者さんは、皆、自分の障がいを受け入れてることができている方が多いです」と言うお話がありました。


視覚障がいとして、障がい者手帳を持っている視覚障がい者は30万人。

でも見えづらさに困っている人は、その何倍もいると言われています。


その中で、同行援護を利用して外出を楽しんでいる人は、本当に少ないってこと。

もっともっと、お出かけを楽しめる視覚障がい者が増えたら、見える人が、見えない人の外出風景や盲導犬に出会う機会ももっと増える。

知れば、なんてことないことばかり。
ああそうなんだって分かりあえることばかりなのに。
それが、本当に本当に、もったいなくてもどかしい。

見えない人も、見える人もおんなじだ。
私たちはみんな違うけど、みんなおんなじだ。

知ることで、自分の世界は広がる。
世界を変えるのは大変だけど、自分の世界を少しずつ広げて行くことは簡単だ。
そしてその先に、ぜったいに変化がある。
世界が変わるきっかけがある。

そんなことを感じた、2日間の講習会でした。

これから、利用者さんと一緒におでかけをして、少しずつみんなで世界を広げていきたいな。

おしまい。





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