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思考の旅する文庫

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つれづれなるままに、文庫本を読んで思いついたあれこれ。 書物との接し方も人生の後半戦になると、知識を得るためではなく、己の人生に悔いを残さないために、と変化するのです。
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#読書感想コラム

見せびらかすにはワケがある、と云うお話。

 ランボルギーニやフェラーリといった、富裕層向けのクルマを専門に扱う雑誌の編集長を務めていた頃、雑誌の巻頭にコラムを執筆していました。  あるとき、そのコラムに「スーパーカーを所有したくなる人の心理」というテーマで書いてみようと思ったことがあります。しかし、このテーマの論旨をノートに展開していく段階で、「これはまずいな」ということになりました。つまり、こういうわけです。スーパーカーを購入するような読者の方達が読んで、あまり気持ちのよい内容にならないのです。  人はよく、雑誌も

理解できない事って、やっぱり絶対にある、と云うお話。

 哲学的なことに目覚めたのは、小学1年生のときのお別れ遠足の帰路。そのときの記憶はまたの機会に譲るとして、それからいろいろ、思索するようになりました。小学高学年の時、「この世の中で絶対的なものって、なんだろ? そんなものって、あるの?」と考えはじめました。それは、愛? 宗教? それとも金?  数日間考えた挙げ句、逆説的にこんな仮説をひとつ立ててみました。 「絶対的なものは、この世に〈絶対〉にない」  この仮説を証明してみれば、何か答えに近づけるような気がしたのです。しかし、そ