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chocolate & lemonadeのフリーペーパーに文章を寄稿しました

コンピCD “chocolate & lemonade compilation vol.9”の副読本的フリーペーパーに寄稿した短い文章がレーベルのSNSで公開となりましたので、こちらでもシェアします。
コンピ収録曲の中からクノーが制作した“Morgenrot 2024”と“Abendrot 2024”という2曲のSE的インスト曲についての小話です。

Morgenrot 2024

もともとは「タンバリンに音を重ねてSEを作ってほしい」というボビーさんからのDMがきっかけで作り始めた音源でした。
季節は冬。ボビーさんが叩いたタンバリンの音源はどこかシャーベット状になった雪や氷を思わせ、きりりとした透明感があります。

信州で暮らす冬は凍える寒さをただひたすら耐え忍ぶようなところがありますが、悪いことばかりでもありません。
まだ夜が明けきらない早朝にベランダに出て、冠雪したアルプスの山肌を朝陽が美しく赤く染めあげる光景に遭遇すると、なんだかちょっとしたご褒美をもらったような気分にもなります。
朝に山肌が赤く染まるこの現象を、登山用語ではMorgenrot(モルゲンロート)というそうです。

暗闇から山の稜線が現れ、またたく間に赤く染まり、やがて何事もなかったようにいつもの風景に落ち着いてゆく。
その一連の変化は不思議なくらいあっという間で、時計で計測できない時間の形も存在するのだなと実感できます。
それは少し怖くもあり、ただの希望であったりもします。

Abendrot 2024

夕暮れ時に太陽が山肌を赤く染めあげる現象を、登山用語でAbendrot(アーベントロート)というそうです。

この音源は冒頭のMorgenrot(モルゲンロート)と対をなすもので、タンバリンのワンショットを合図に、浮かび上がったさまざまなことが夕闇のなかに収束されてゆきます。

夕暮れ時はかつて「逢魔が時(おうまがどき)」と表されていました。
それは得体の知れない魔物に遭遇してしまうかもしれない時間帯。
煌々と輝くLEDライトに照らされた世界で、はたして暗闇の魔物たちに居場所はまだ残っているでしょうか。


“chocolate & lemonade compilation vol.9”はクノーの運営するウェブショップ“rovakk musikk”でもお取り扱いしています。
よろしければぜひ!


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