キョコロヒー

3月31日から毎週水曜深夜、テレビ朝日で「キョコロヒー」という番組が始まることになった。日向坂46の齊藤京子ちゃんと私ヒコロヒーで「キョコロヒー」という訳である。同じように出演者の名前を半分ずつ組み合わせた番組にはEXITさんとCreapy Nutsさんの「イグナッツ」などという素晴らしくイカしたタイトルのものもあるのに、私の名前がヒコロヒーなばっかりにまぬけな響きの番組タイトルになってしまった。どうにも戦犯は「ロヒー」な気がしている。大変恐縮な思いである。

「キョコロヒー」が決まった時、とにかく嬉しかったのは自分の名前が入った番組をやれるだとか、レギュラー番組が決まっただとか、そういうことよりも、ずっとがっつりお仕事を一緒にしてみたかったスタッフさんたちのチームで番組を共に作らせて頂けるということだった。バラエティの現場で数回お仕事をさせて頂いた班で、現場の空気、スタッフさんたちの人柄、そしてオンエアでは面白い所をより面白く仕上げていてくれた感じとかがとても凄くて、いつか一緒にがっつり何かを作ってみたいなとひそかに熱望していたので、水曜深夜にこっそり叶うことがとにかく嬉しかった。

初めての「キョコロヒー」打ち合わせの日、テレビ朝日に予定時刻通りに向かうと、ロビーに女性APさんがやって来た。あまり自発的に言うものではない事は百も承知の上で明言すると、私はどうにも人見知りな部分があり、初対面の人、特に「業界人」と呼ばれるテレビ関係のスタッフさんには異常なまでの警戒心を抱いてしまう癖があるのだが、この女性APさんは初めて会った時から「タバコ吸う!?私も吸う!吸いに行こうよ!」とアッパーに快活に接してくれ、「タバコ吸う!?」の時点で既に肩を6回くらい高速で叩いてきたコミュ力超人である。
その女性APさんと合流し、打ち合わせ場所まで連れて行ってくれるのだろうと思っていると「打ち合わせ用の飲み物準備するの忘れちゃってさ、飲み物準備してたんだけど、そしたら肝心の資料コピーするの忘れちゃってたの!今コピーしてるから一本タバコ吸えるよ!」と、これまた快活にアハハと笑いながらやっぱり喫煙所へ誘われたのだった。とにかく資料の準備よりも飲み物の準備に没頭していたらしかった。

女性APさんと一本吸い終わり、打ち合わせ室へ向かうと、そこにはなんと見たことのないほどの信じられない量の飲み物が置かれてあった。打ち合わせに準備されている飲み物といえば大体は水かお茶が1,2本程度なのだが、その場には数にして30本ほどの色々な種類の飲み物、水、コーヒー、カフェラテ、コーラ、カルピスなどの他に、CCレモンやオロナミンCなどといった「たぶん打ち合わせ用に準備するべきスタンダードドリンクではないであろうもの」まで揃えられていた。
恐る恐る「これは…」と尋ねると、女性APさんが「何が良いか分からないから全部買っちゃった!ADの子が買ってくれたの!」と、やっぱり快活に言い放ち、後ろではその若いADの子が「へへへ」となぜか恐縮そうに照れていた。

私が「あ、じゃあ、コーヒーもらいます」と言うと快活コミュ力女性APさんが「一本なんて言わず!何本でも取ってください!余ったら同居人にあげて!」と言って、私の席に10本くらいの飲み物をダダッと置いた。余った飲み物は同居人に贈呈すればよいと提案されるほど、私の同居人は飲み物に困窮していると思われていたのかもしれない。私の席には10本くらいの飲み物が置かれ、さらに驚くべきことに、スタッフさんたちは各一本ずつの飲み物を取るのみであった。私の席にだけ異常な数の飲み物が置かれている状態で、こんな一若手芸人が、往年の気難しい銀幕女優みたいな状態になっていることが気まずさしかなかったのだが、みんなニコニコしていた。本当にニコニコしていた。

その時、演出の男性スタッフさんが「遅れてすみません」と言ってコピーした資料を持って部屋に入ってきた。彼は女性APさんとは真逆のような人間で、初対面の時、収録後に私に「あの、面白かったです…」と控えめに伝えてくれるような、あまり私が出会ったことのないタイプのテレビマンである。しかしその時、その光景を女性APさんに目ざとく発見され「なに照れてんの!この人ねヒコロヒーさんのnoteすごい好きなんですよ!ね!note好きなんだもんね!」と、絶対にこんな形で言われたくないであろう情報を、やっぱり肩を高速で叩かれながらバラされて、ほぼ白目をむいていた方である。
男性演出スタッフさんは、部屋に入って私を見るなり「あの…飲み物のバランス…?」と完全に色んなことに気づいたであろう発言をしたのだが、すぐに女性APさんが「飲みたい物を飲んで欲しくて!」と快活に言い放ち「あっ、そうなんだ…」と半ば強引に納得させていた。私はそれからあと10回くらい「同居人にあげてください!」と言われ、最終的に8本くらいカバンに飲み物を詰めて持って帰ったのだった。

長々と書き連ねたけれど、他のスタッフさんたちも本当に魅力的で愉快でユーモラスな方々ばかりで、こんな人たちと番組を作れることがとても幸せだと感じている。私は出役という立場で番組作りに携わらせて頂くが、たくさんのことをこのスタッフさんたちと共有できたら嬉しいし、できれば1回でも多く番組を作れたら嬉しいけれど、そればかりはどうなるか分からない。
細くとも長く愛される番組になれば良いなと思っているが、もし短い命で終わったとしても、この班の人たちとなら「キョコロヒー短い命で終わりすぎやった」と笑える気がして、そんな気がする仕事が一回でもできているだけで冥利に尽きるような気分である。

そして何と言ってもバディを組むのは齊藤京子である。バディを組むといえば、あぶない刑事の柴田と館、MIBのトミーリージョーンズとウィルスミス、ラッシュアワーのチェンとタッカー的なことであるからして、ここに食い込むようなバディっぷりを京子とヒコロヒーでお届けしたいところである。
齊藤京子という女性の、彼女らしさが存分に発揮されている収録を終えられたのではないかと思うので、齊藤京子とヒコロヒーで何がどうなったかは、是非番組をご覧になって頂きたい。私自身も放送がすごく楽しみで、どんな放送になるのか、どんな反響がくるのか、はたまた誰にも何の関心も持たれないのか、本当に何も分からないが、ひとつ言えるのは、齊藤京子もヒコロヒーもきちんとやる気がある女だ、ということである。

初回放送は3月31日水曜深夜2時頃、テレビ朝日にてオンエアです。
これから毎週、キョコロヒーをよろしくお願いします。






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