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絶対に絶対に絶対に「吸血鬼すぐ死ぬ」を読んで欲しい


※これより先は週刊少年チャンピオン連載中「吸血鬼すぐ死ぬ」のネタバレしかない感想文です。まだ読んでない、これから読む予定の方は注意して下さい。

いやネタバレ踏まえて読んでも確実に面白い漫画なんですけどね。一応ね。








恥ずかしながらタイトルを知っているだけで実際に読んだ事はない漫画だった「吸血鬼すぐ死ぬ」、アニメ化決定と話題になりどんな感じなのかなーと読んでみたら、言葉選びのセンスと画面の破壊力がブッ飛んだハチャメチャ面白ギャグ漫画だった。
逆になんで15巻も出るまでアニメ化してなかったの!?世界のバグでしょ………。


吸血鬼すぐ死ぬ、略して吸死はタイトルの時点で出落ち感がハンパ無いが中身もそれを裏切る事は無く、血筋と見た目は偉大な吸血鬼だが自他共に認める「何しても死ぬ」(※すぐ死んで塵になるけど再生力が桁違いなのですぐ生き返る)(でも死ぬ)貧弱雑魚吸血鬼・ドラルクと、凄腕の吸血鬼退治人にして作中でも名指しで「美形」「ハンサム」と言われてるがめんどくせえ事は腕力でなんとかする脳筋ゴリラ・ロナルドという一癖も二癖も三癖もありそうな二人が主人公だ。面白すぎる……どうなってんだ……!?

基本的にこの二人がドタバタしつつ物語の舞台である新横浜に現れる吸血するより自身の性癖晒してる方が余程多い奇人変人吸血鬼達と、そんな吸血鬼と同等もしくはそれ以上にブッ飛んでるデタラメ人間達の万国ビックリショーといった形だ。
第一話からこんな調子なのに回を重ねるごとに面白さが加速する。特に主人公の一人であるロナルドは銃の腕前は作中屈指で、具体的に言うと射撃用の的にノータイム全弾ド真ん中的中なんていう離れ技を披露するのだが、話が進むにつれて銃より拳かハエ叩きで退治する事が増えている。射撃スキル使う気ゼロか!?

少し紹介するだけで面白さの羅列が留まることを知らないのが吸死の凄いポイントなのだが、特に「ここが好き!」ポイントをあげていきます。


言葉選びのセンスが飛び抜けていて台詞が滅茶苦茶面白い

ちょっと挙げるだけでも

ドラルク
「凄いな説得力の無さの神みたいだ」
「やめろ小○館がナパーム弾撃ってくるぞ」
「どけボケ五歳児泥でも捏ねてろ!」
「そういう努力や特訓を…全く無しでかつ恐るべき吸血鬼として畏怖されるような方法があるはずだ…!!」
「その悔し泣きもっと良いシーンにとっておけなかったのか?」
ロナルド
「まどろっこしい!暴力で決めようぜ」
「マジかよてめー千代に八千代に精子のまんまか」
「ごめんね!!うそだよユニコーンさんいるよ!!」
「敗北を糧にしなくていいから!!」
「諦めんなよお前の人生の縮図かよ」

何を食べて育ったらそんなキレッキレの語彙力が育つんだと言わんばかりの台詞が画面狭しとばかりに飛び出して来る。
全編通して「訳は分からないが″″″パワー″″″がすごい」というトンチキ台詞だらけなので何度読み返しても楽しい。

これ、絶対少数じゃないと思って書くのですが、台詞のテンポが良かったり通常の日常生活送ってたらまず見ることも聞くことも無い言葉が飛び出してきたりこの台詞この漫画でしか存在しねえよみたいなトンチキ言葉が飛び出してくるともうそれだけで「めっちゃ好き…」ってなるオタク居ませんか?私はそうです。吸死、言葉の面白さが好きな人特攻である。
勿論言葉だけではなく絵も面白いので、台詞の面白さにそこまで重きを置いてないな〜という人でも安心して楽しめる。ゼンラニウムという名前からして出落ちのキャラクターが居るのだが、彼は最早何も喋らなくても面白い。全裸にマントを羽織り股間にゼラニウムの花を咲かせているという、何も間違ってないし誇張表現一切無いのに「何言ってんのお前…」と思われそうなキャラ造形をしているからだ。なお、性格的には結構な常識吸血鬼だったりする(そうだったか…?)

メインキャラだけではなくモブキャラ達もこのキレッキレの語彙で言葉の殴り合いをしており、個人的に165死にて登場したモブ警察官と吉田さんのやり取りが面白くて大好きだ。

「すみません何かあったんですか?」
「入らないで!恋のトキメキ危険地帯です」
「どうなっちまったんだこの国は…」

ハァ……………………………………ほんと好き……………………………………………一度でいいから声に出して言いたい日本語…………………………………………………。

一字一句言ってる意味がサッパリ分からない言葉を聞かされて「どうなっちまったんだ…」となるのは正しい。吉田さんは何も間違っていない。
ただ「恋のトキメキ危険地帯」が飛び出して来るまでの経緯を知ってると「入らないで!恋のトキメキ危険地帯です」としか言いようがないのでモブ警察官もやっぱり間違ってないのだ。面白過ぎる。グリフィンドールに500000000000000点。


吸血鬼の伝承をしっかり調べた上でギャグ漫画として昇華されている

吸血鬼と聞いて思い浮かべる事はなんだろう?
棺桶で寝ている、人の血を吸う、マントを羽織っている、蝙蝠に変身する。そんなところだろうか。
ところが吸血鬼すぐ死ぬでは基本的なポイントを抑えつつ「吸血鬼ってそんな特性あったの!?」という知識をギャグ漫画として紹介してくるので、知識欲的な意味でも楽しめる。吸血鬼について詳しくなりたい人、是非!

例えば吸血鬼は家人に招かれないと他人の家に入れないという縛りがあるのは有名なのだが、「古い吸血鬼は己の所有物(中でも衣類)に執着するため、靴下を奪われると不安のあまり衰弱して死ぬ」という豆知識を得られる。そうだったの!?
しかも調べてみるとどうやら吸死オリジナル退治方法ではなく実際にある有効手らしい。どうなってんだ古の吸血鬼!?
オタク歴はそこそこ長く吸血鬼をモチーフにした作品もいくらか読んだり見たりしていたのだが、この退治方法は初耳だった。というか吸死以外の吸血鬼モチーフ作品で使える退治方法だろうか…という疑問すら湧いて来る。盆ノ木先生…流石っス!!

そしてこの靴下事件は第110死だったのだが、実は「吸血鬼は己の所有物への執着心が強い」自体はそれ以前から語られており、第55死にてドラルクの使い魔ジョン(アルマジロ)(とっても可愛い)(モフモフの腹毛)(癒し)(新興宗教教祖)(ヌーの日は来た)との出会いの話を語るのだが、それがもうすっごい。

「私の使い魔にするんですから」
「そうすればずっと一緒に暮らせるよ」

当たり前だが、いくらよく死ぬと言ってもドラルクは吸血鬼なので完全な不死身の生き物だ。物語がスタートした時点で200歳を超えている。ずっと一緒に、とは何十年、何百年、下手したら何千年もずっと一緒という事になる。お、重…ッ。
一度そのジョンを手放そうとしたのだが、ジョンへの未練タラッタラで部屋を丸いもので埋め尽くすという事までやっている。それを見た父・ドラウスから「部屋が病んでる」と言われる始末。執着心の凄まじさ自体はかなり序盤から示唆されていたのだ。



人間と吸血鬼が友達になる話


ここから先はオタク特有の幻覚も混ざってるので、吸血鬼すぐ死ぬをそのまま楽しみたい人は気をつけてね。


第144死でドラルクが母・ミラの能力により小さな子供時代まで戻ってしまう事件が起こり、詳細は省くのだがドラルクは「見た目だけ子供に戻った」から「中身まで子供に戻った」になってしまう。

ところで突然話は脱線するが、ドラルク曰く「吸血鬼は自分の血族が大事。血族以外の吸血鬼なんてどうでもいい」らしく、どうも吸血鬼達は血族で固まっている事がほとんどらしい。事実、吸血鬼三兄弟(別名変態三兄弟)は非常に仲が良く、登場自体はバラバラだったが全員登場した後は三人で行動するのをよく見るし、何ならカラオケに行ったりしている。己の血族以外の吸血鬼に出会い、関係を築くのはかなり稀らしい。
おまけに吸血鬼達は昼間外に出る事がほとんど出来ない。そうなると人間と関わる事もほぼ不可能。そもそも退治人なんて職種があるくらいだから友好関係を築く方が難しいのだろう。ドラルクはそれまで血族の吸血鬼達を除けば深く関わったのはジョンのみで、それ以外の者と関わる事はほとんど無かったようだ。つまりドラルクには友達が居なかった。

そんなドラルクが第1死でロナルドと出会い、第144死までの間にロナルドを通じて沢山の人間達と関わるようになった。これは遊びに来た父・ドラウスが「息子はいい人間と出会ったようだ」と言っていたので間違いないと見ています。
さて144死、145死まで話を戻すが「中身まで子供に戻ってしまった」ドラルクはロナルドとヒナイチ(今までノー説明で申し訳ないが作中のヒロインと言っていい女の子です!可愛いよ!ただ人の家の床下に住んでるやっぱり変な人です)を見て「誰?」と言ってしまう。心まで子供に戻ってしまったので当然彼らが分からないのだ。
けれど母に連れ去られた先で「楽しいので写真を撮って送る」と言い、ミラに「送る?誰に?」と尋ねられてしまう。
これまでの過程と「ドラルクに写真を送る程親しい相手なんて居ない」のは母公認だっただけでも正直結構キツいものがあるのだが、それだけで終わらないのが吸血鬼すぐ死ぬだった。

「…? あれ分からない… 誰にでしょう」
「でも見せたいんです楽しい写真を だってきっとお友達だもん」

こ、こ、この言葉………石碑に刻みてえな〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!
今までああだこうだ散々ロナルド達に迷惑かけたりかけられたりした日々を楽しいと思ってくれてるのかドラルク…100年も経ってしまえばみんな寿命で居なくなってしまうのに、深層心理に焼きつく程シンヨコの愉快な人たちを友達だと思ってくれるのかドラルク……。

私はこういう、長命種が自分より圧倒的に寿命の短い生き物と過ごす日々を「楽しいな 嬉しいな 好きだなぁ」と心の底から思ってくれているという展開に死ぬほど弱いので第145死、もしかして自分にとって都合のいい夢でも見てんのか…?と疑心暗鬼になったが、何度読み返しても本編だった。イヤッホーーーーーウ!!!!!!!
勿論短命種の方も憎からず思ってくれているというのが大大大好きなので、ロナルドとヒナイチがわざわざ車借りて遠出してでもドラルクを迎えに行ってくれたという事実に嬉しくなってしまう。しかもドラルクが送った写真から!ドラルクが「お友達」に送った写真!それを受け取って答えてくれるお友達が!!″″″存在”″″しているッッッッッッッ!!(サビなので何度でも言います)

さらに真祖の吸血鬼(ドラルクの祖父。ガチの最強。小さめのゴジラ)がヴァン・ヘルシングという退治人と過去友達になっており、亡くなってしまった友人の事を今でも時おり思い出しているらしい。こ、こんなところでまで吸血鬼の執着心の強さ出してこなくても…。
ちなみにその故人であるヘルシングさん、現在、大変愉快な事になっております。

とにかく寿命差がエグい者同士がそれでも出会い友達になり、毎日を一緒に過ごしているという展開が好きな人は絶対に好き。私は大好きなので滅茶苦茶刺さりました。
あと50年か60年もしたらロナルド含めた面白人間達はみんな寿命で居なくなっちゃうなんてそんな…。現在200歳超えのドラルクにとって50年も60年もあっという間過ぎる。今すぐロナルド達が″″″永遠″″″になって星が滅びるまでドラルクとずっと馬鹿やっててくれなきゃ嫌です(オタク特有のクソ重発言)

寿命差がエグい者同士が妙に気が合って楽しく馬鹿やっている、という点では「異種族レビュアーズ」もそうですね。好きだよ異種レビュ…。
それは話がまた変わってくるのでここでは割愛。




こんなところでしょうか。
まだまだ語れますがそうなると一人一人に「ここが好き」と言う事になり、ちょっとどころかかなり気持ち悪い記事になりかねないのでここまでにしておきます。もう遅いよとか言わないでね。

脇役という概念がほぼ死滅しており、名前のあるキャラクターなら一度はメイン回がやって来る徹底ぶり。箱推しになる事間違いなし。
巻末の嘘予告ではシリアスな吸死も拝める(勿論嘘予告なので本編でシリアスな展開になる事は無い。安心してくださいギャグ漫画です)ので温度差でグッピーが死ぬ。
みんな大好きカバー裏でも色々やらかしてるのでめちゃめちゃ楽しいぞ!!

最近吸死を全巻購入しハマったばかりのにわかオタクでさえこんなに語れるんだから吸血鬼すぐ死ぬのポテンシャルの高さヤッベェな……。
アニメ化してから原作読もうにもその頃には大人気過ぎて原作全部無くなっちゃいました!になりかねないので今のうちに買っておくのが正解なのでは?損はさせません。


そして最近、なんと公式から1メートルのビッグなジョンのぬいぐるみが発売される事となりました!!

どうなってんのや………………。



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