ウーユリーフの処方箋が凄かったという話


※これより先はSEEC最新作「ウーユリーフの処方箋」のネタバレしかない感想文です。まだプレイしてない、これからプレイする予定の方は注意して下さい。







ストーリーが大変面白く、金にものを言わせておよそ一週間程で駆け抜けました、ウーユリーフの処方箋。ログイン画面に行くと「初心者ログインボーナス」の文字。そうだよ私まだ初心者なんだよ。なんで特別ストーリーまで読み切ってんだよ。何かがおかしい。

そんな訳でして、拙いながらウーユリーフの処方箋のここが良かったな〜!を長々と書いていこうと思います。よろしくね〜。


問題あり過ぎのストーリー(褒めてる)

面白いと言っといてアレなのですが、正直嫌いな人はマジで嫌いだろうなとは思った。「攻略対象と主人公」「ゲームキャラクターとユーザー」「芸能人とファン」という「搾取され搾取する間柄」の連動、結局お前ら(ゲーム漫画アニメアイドル問わずファンという何かをコンテンツとして消費する者全員を含む)がやってんのはこういう事だぞと顔面に突き付けてくる感じ。ウーユリーフの処方箋をプレイしてるユーザー全員の横っ面ブッ叩きおった。

「あなたの癒しは僕らの痛み」とはゲーム中に出てくる言葉なのですが、まぁつまりそういう事なんですよね…ってなっちゃった。
ゲームアニメ漫画問わず、順風満帆かつ何の苦労もなく人生楽しく生きてるキャラクターより何かしら暗い過去があるキャラクターの方が人気出ますよね。そうでなくてもそのキャラクターに何か心に傷を負うような事件が起きると途端に人気出ますよね。日常のものより手に汗握るバトル作品の方が人気出ますよね。顔面偏差値普通のキャラよりイケメンや美少女キャラの方が人気出ますよね。私も暗い過去持ちのキャラクターを好きになる傾向があるので分かる。これってつまり「だってその方が面白いんだもん」、という搾取です。このゲームはそういう、ユーザーの悪意ないキャラクターへの搾取を徹底的に取り扱ってる。これは芸能人を搾取するファンまで斬り込んだのでマジで徹底してる。二次元だろうが三次元だろうがお前らのやってる事は変わらんぞ、と。
なんていうか、私たちユーザーやファンがあんまり見たくないなー気付きたくないなーという点をゴリゴリに広げてくる感じです。六章から怒涛の展開本当に凄まじかった。
だからこそ円果は搾取される事を恐れて虚構の世界へ逃げたんですね。

ただこれは「攻略キャラクターは主人公なしでは存在出来ない」「ゲームキャラクターはユーザー無しでは存在できない」「芸能人はファンが居なければ存在できない」という、確かに相手を尊重せず搾取するがそれは決して一方的な搾取ではないという話になります。ここがすごかった!お前らがやってるのはこういう事だぞとぶん殴っておきながら「だがそれがいい!それでいい!」と最大の肯定をしてくるんです。

いいじゃんお互い搾取され搾取する間柄でいよう。お互いを利用し続けよう。そうやってやっと存在出来るんだよ、みたいな。

虚構というものへの賛歌、と話には聞いてましたが、これは本当に物凄い虚構賛歌でした。全てのコンテンツというものを消費する人間への皮肉と賛歌をブチ込んできた。作中で出てきた「消費される事を恐れるな」という言葉が物凄い力を持ってくる。
何よりこれをソシャゲでリリースしたのがすごい。ソシャゲってつまりガチャシステムがある、すごく分かりやすいキャラクター搾取ゲーじゃないですか。そのソシャゲでやってくるんですよこういう話を。マジで頭イカれてるか天才のどっちかでしょこんなの。天才の方だと思います。


これは深読み過ぎるか?と思ったけど思ってしまったので書かせて欲しいって話

六章、主人公マツリがクリーチャーになってしまったヒロインに向かって言う言葉が好きなんですよ。

「(ユーザーから)見捨てられたって忘れられたって心は自由」
「ゲームが救いになる事は無い。ただ背中を押してくれるだけ」
「ゲームや他人はきっかけに過ぎない、お前を救えるのはお前だけだ」

確かマツコ・デラックスさんが言ってた言葉なんですけど「人間とは究極的なところ孤独。絶対的に埋めてくれる存在なんて無い」が好きなので上記マツリの言葉はすごく刺さりました。結局自分を大切に出来るのは自分だけなんですよね。虚構が救いになる事は無い、もし救われたと思ってるならそれはお前が一方的にそう思ってるだけだよ。
ウーユリーフの処方箋はそういう、現実と虚構の線引きを嫌になる程ハッキリ書くんですよね。

しかしここで気になる存在がある。
ラスト・レジェンドで円果を応援しその後廃人になった円果を助けるためゲーム世界にまでやってきてくれた和歌くんです。

特別ストーリーまで読み切って一回思ったのが「こんな虚構そのものみたいなキャラクター必要だったか?」です。
先程も書いたけど「ラスト・レジェンドで円果を応援しその後廃人になった円果を助けるためゲーム世界にまでやってきてくれた」というだけで不思議なくらい円果に肩入れしてるのが分かるのですが、何より2年間まともに連絡を取り合って無かったにも関わらず彼の中で円果への評価は全く下がっておらず、ゲームの世界でもミーハー相手に「僕も円果推し」と言うなど、上記で書いた「自分を救えるのは自分だけ」という前提からびっくりするくらい外れているキャラクターです。彼は円果にとって良いか悪いかでしか判断し動いてないんだもの。
もちろん友喜の事も気遣っていましたが、和歌くんはゴリゴリに円果を救うために動くキャラクターです。しかもどうしてそこまで肩入れしている理由はよく分からなった。
いや和歌くんが居なきゃそもそもウーユリーフの処方箋は成り立たないだろと言われるとそうなんですけど、それにしたって現実側のキャラクターでありながらここまで円果に都合のいいキャラクターにする必要はあったのだろうか…って思ってしまった。これまで丁寧に虚構と現実について語ってたから余計に。

なので一回考えを変えてみた。
和歌くんってプレイヤーの為のキャラクターじゃね?

そもそも和歌くんはウーユリーフの処方箋の世界がゲームであるという事を知ってて、その上で円果が作り上げたミトというキャラクターを演じているという、存在そのものが虚構と現実の中間キャラなんですよね。
そしてゲームという虚構の中で「自分を救えるのは自分だけ」という現実を突きつけておいて、それでも「もしかしたらあなたがあなたがであるというだけであなたを救いたいと思ってくれる人がいるかもしれない」という、あるかもしれない夢を見せる為のキャラなのかな、と。

これディズニーやピクサーアニメ映画観てると分かるかな。例として「リメンバー・ミー」を挙げますね。


こちら、簡単に説明すると音楽を禁止されている家に生まれた主人公ミゲルがミュージシャンになるという夢を叶える為頑張るというストーリーなのですが、序盤家族の理解を得られないシーンがとにかくエグい。家族から自分の好きなものを否定された経験がある人が観たらトラウマ発動するレベルです。ミゲルは目の前で自分の大切なギターをブッ壊され、そのブッ壊した張本人は「全部お前の為よ。お前を愛してるからこうするのよ」という呪いをかけてくるので本当に見てて苦しくなる。最早グロテスク。
しかしここはピクサー作品、最終的にミゲルは家族と和解し家族もまた音楽とミゲルの夢へ理解を示します。つまりハッピーエンド。
これ、公開してすぐに他の人の感想とか見たんですけど「いくらなんでもご都合展開過ぎない?」「こんな簡単に家族が理解してくれるなら苦労しない」って意見が結構あったんですね。私もそう思う。現実にこのような家族がいたら、多分一生音楽へ理解は示してくれないしミゲルの夢を否定するしミゲルの好きなものを潰し続けると思う。

でもちょっと待ってくれや。これってアニメ映画だぞ?
リメンバー・ミーを観ている子供の為の映画だぞ。
現実で今まさに親から好きなものを否定され続けている子供が、せめて虚構の世界では理解を示してくれる家族を夢見る為の映画だぞ!!

現実では上手くいかない、でも虚構の世界でなら夢見たっていいじゃない、だって虚構はそれを見る人を癒す為のものだもの。
ウーユリーフの処方箋はそれを全肯定してくれる作品だった。
和歌くんはその為のキャラクターなのかなと。

多分ね、円果みたいに「自分を好きになれない、自分じゃない誰かになりたい」と思ってる人って現実に結構いると思うんだ。だけどそういう人たちに「お前を救えるのはお前だけだ」ってしんどいじゃないですか。そんなの分かってても上手く出来ない。人間やっぱり弱いから他人からの肯定が欲しいし、何かに縋りたくなるものでしょう。
みんな、和歌くんみたいにあなたはあなたのままでいい、あなたの素敵なところを知ってるよって言ってくれる存在が居たら嬉しいよね?

和歌くんはそういう現実だったらなかなか出会えない「ずっと連絡を取ってなくてもいざという時助けてくれて自分を肯定してくれる人」という為のキャラ、プレイヤーが虚構を見る為のキャラなんじゃないかな、と思った。ゲームという虚構の世界でありながら嫌という程現実を突き付けてきたウーユリーフの処方箋の中で、プレイヤーを癒す為の虚構としての存在が和歌くんだったのかなと。
そう思うと彼のキャラ造形にも納得いって「これは必要なキャラクターだったな!!」と一転して思えるようになりました。簡単なオタクだな…。
本当のとこがどうなのかは分かんない。違ったらごめんね。解釈違いかもしれない、それはそれでごめん。これを書いた人間はそう思った、という形でなんとか納得して下さい。



以上、ウーユリーフの処方箋これが良かった凄かった、でした。取り留めない文章になってしまったし分かりにくいしで申し訳ないったら。とにかく物凄く好きな物語です。こういう話100000回は読みたい!!
プレイし終わった後は「人の心が無〜〜〜い!!」って思ったけど、もしかしたら物凄く優しい物語を見たのかもしれないなって思った。マツリと円果の関係も「搾取し搾取されたけど、でもあなたが居ないと存在できない」だったし…。円果が搾取してくれたからマツリやキリオ達は作品としてこれから色んな人に知られて存在が作られていくんだもんなぁ。

ただな〜すごく面白かったけどこれそんな簡単に人にオススメ出来る作品じゃないな〜とは思いました。やっぱ取り扱ってるテーマがテーマなもので…。向き不向きは絶対ある。
全人類絶対やるべき!オススメ!と言えないのが惜しいところです。難しいね。

ここまでで書いといて誤読した上での雑解釈だったらど〜しよ〜って震えてます。


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