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2年ほど個人指導塾の講師として勤務して感じたこと

もうすぐ私が大学受験がメインの某個人指導塾で働き始めて2年が経つので、塾や生徒、勉強、受験などについて感じたことを少しまとめておく。
自分のためのメモ要素が強いので加筆修正するし、これはあくまでも私の勤務先の大体の傾向なのでもちろん例外だらけである。


①実力がない子は内向的である


個人指導塾ということもあり、「集団塾に通ったけどうまくいかなくて…」という理由で弊塾に足を運ぶ人もいる。
そもそも学校で勉強の実力が伸びない子は、外向的よりも圧倒的に内向的な人が多いような気がする。先生や友達に質問することを躊躇うのかもしれない。
実際に私は中学高校時代かなり内向的で友達も少なく先生とも関係を築けていなかったということもありかなり成績は悪かった。
こういった子が集団塾に通っても、そこは学校のクラスの縮小版のような場所なので意味はないだろう。

ただし、ここであえて「勉強ができない」ではなく「実力がない」と書いたのは、このように集団塾や学校でうまくいかなかった生徒も、個人指導塾で実力が伸びる可能性があり、勉強ができる素質を持っているという場合が大いにあるからだ。
勉強ができる素質とは、自己客観性を持ち合わせた、忍耐力のある人間で、完璧主義者ではない人だと感じている。
完璧主義者の人でも勉強がよくできる人がいるが、問題なのは、予定が崩れると無気力になったり心を病んでしまうタイプの完璧主義者である。

このような勉強ができる素質を持っているものの実力のない子に、実力がつくような指導をして自信をつけさせ、いずれ1人で勉強のエンジンをかけられるようにするのが我々講師の役目である。
講師は、「講師がいなくてもできる子」を育てなければならない。
普段の勉強中講師は横についてはいないし、受験当日も試験を手伝ってあげることはできない。
もっと言えば、大学に入学しても学びの姿勢を取り続けられるようにしなければならない。
そのためには、我々講師がたくさんの制約やタスクを課しながらも、生徒の自律性を育てていく必要がある。
宿題を出して、それをやってきてもらうだけではテストの点は上がるかもしれないが、学びの姿勢はつかない。
我々が宿題についてフィードバックをする前に、まず生徒自身による宿題やテストの反省や改善点を述べさせるのが良い。

少し話は逸れたが、実力がない子は内向的な子が多い。
内向的な子をうまく育てることができれば、生徒の自己洞察力に磨きがかかり、実力が伸びて自信もついてくるので、その子の特徴を活かした指導が大切である。


②指導時間は、勉強を教えるだけの時間ではない


前述した通り、講師は生徒に自律性を身につけさせる必要がある。
そのためには、指導時間は生徒の疑問点を解消しつつも、絶対にそれだけでは終わらせてはいけない。

まず、生徒に一週間の自分の勉強のフィードバックをしてもらうことは必須である。
これを毎回続けていくと、いつしか自然と自分の勉強の調子や課題点を感じてそれに向けた改善策を立てることができるようになる。
そして目標意識も芽生えてくるようになり、これが大学受験だけでなく将来の学びにも大いに役立つ。
初めは生徒にしつこく毎回「今週はどうだった?」「次回までの目標は?」などとしつこく問いかけて考えさせる。
そうすると、だんだん生徒は「絶対にあのことを聞かれる」と察するようになり、いずれ問いかけられる前に自分の中の答えが完成するようになる。
こうなれば、あとは自律的に勉強を進めていくことができる。
「今この分野の勉強が苦手なのに量が不足しているからやりたい」などと生徒が言い始めたら、それは自分で勉強のフィードバックを積極的にできている証拠である。

次に、講師として、生徒のパーソナリティを理解しなければならない。
例えば、褒められて伸びるタイプか、鞭を打たれて伸びるタイプか、など。
もちろん両方使い分ける前提だが、この比率やどれだけの強さの鞭を打つかは生徒によって変えなければならない。
例えば、あまりにも勉強のことや普段の生活で厳しいことを言われたことのない子であれば、強すぎる鞭を打ってしまうと一気にモチベーションが下がってしまう可能性が高い。
逆に、運動部でうまくやっていけるタイプの子は多少厳しめに指導しても、ついてきてくれる場合が多い。
また、塾に来る生徒の中でも、たまに「幼い頃はチヤホヤされてきたけど、勉強にだんだんついていけなくなって、いつしか全く褒められなくなった」という生徒がいる。
このような子に関しては、褒めつつも、褒めすぎて自惚れさせないようにするといった細かい調整は必要だ。
生徒の特性を掴むためには、勉強の話をするだけでは不十分である。
私生活の話も含めたアイスブレイクを、指導開始の5分ほどで行う必要がある。
ただし、場合によっては学校の話をするのがタブーな生徒がいたり、基本的に家庭の事情に深く切り込むような話を講師からするのはNGだったりするので、ここらへんの「その生徒にとって何が地雷か」については生徒と親との3者面談を事前に行っているような上司との連携プレーも大切だ。

私自身、塾講師をやるまでは「講師=勉強を教える人」だと思っていたし、指導時間は勉強を教えるだけの時間というイメージだった。
しかし、講師は「生徒が勉強をできるようになるためにサポートをする人」なのである。
英語の長文でわからない単語が出てきた、と言われたらその意味を教えるのではなく、単語帳を引きなさいと言うし、この問題ができないと言われたらそれを全て教えるのではなく、どこまでわかろうという努力をしたのか(参考書を参照したりネットで調べたりしたか)をまずは聞く。
ただ問題の解説をするだけならむしろ講師にとっては楽かもしれないが、それを毎回繰り返すと生徒にとって講師は「わからない問題を持っていったら全部教えてくれる人」になってしまう。
繰り返しになるが、講師は生徒の自律性を高める役割であり、そのために講師は「簡単には全てを教えてくれない人」にならなければいけない。
勉強を教えてるだけの指導時間は、生徒の成長に貢献しないのである。


③上司に好かれろ、生徒に嫌われろ


ここまでの記述から読み取れるように、生徒にとって講師は「都合のいい人」ではない。
むしろ面倒な人である。
毎回一週間の自分について振り返させられたり、ノートを細かくチェックされたり、勉強の爪が甘くないかを確認するためにテストをたくさんさせられたり、毎週目標を立てさせられたり…。
でも、生徒にとってはこれが必要なのだ。

学校の先生は、テストの結果しか見ない。
だからつい結果主義になりがちである。
もちろん最終的には「大学合格」という結果を追い求めて勉強をするわけだが、最初のうちからテストの結果を求めすぎると、塾のテストでも解答をカンニングしたり、それによって講師の指導が今のその生徒にとって適切ではないものになってしまったりする。

勉強は、過程が重要である。
英単語を一週間で100個覚えることができたとしても、その暗記方法が不適切だった場合は後の演習で不利益を被ることもある。
目標もなくダラダラと言われたことだけをこなしている勉強は限界が来る。
ここに気づいてあげるのは、教師の役目である。
テストさえよければいいと思っている生徒はテストの点をズルをして高く見せたり、逆に模試で点数が低いと全てのやる気を失ってしまったりする。
こうならないように、講師は日々の宿題のノートを評価したり、一週間の頑張りを見たりする。
もちろんテストも確認して、日々の頑張りが見えるような結果だったら褒めるし、点数が悪かったらなぜその点数になったかを生徒自身にまず考えてもらう。

努力をしてからテストの点数として結果が実るまでに時間がかかるため、講師はできるだけ過程主義になって、生徒のモチベーションを維持させる必要があるのだ。


④自分の指導に不安感を持ちすぎない


これは生徒のためでもあるし、講師として働く自分のためである。
まず生徒のためである理由としては、「自分の不安は生徒にバレる」に尽きる。
こちらが不安そうな顔をして指導をすれば、生徒も不信感が湧いてくるだろう。
「本当にこの人は自分を大学合格まで連れていってくれるのか?」と思われてしまうかもしれない。
だから、カリキュラムや指導法については、生徒の指導時間以外でじっくりと考え、自信を持って指導できるように頭に叩き込んでおく必要がある。
他にも、生徒が宿題として取り組んだ演習問題の内容を確認しておけば、いざ生徒に内容についての質問をされてもしっかり答えられるし、逆に抜き打ちテスト形式で講師から生徒に聞いてみたりして、生徒の宿題の達成度を測ることができる。

もし指導やカリキュラムに不安があるようであれば、上司にすぐに確認する。
親がお金を払って生徒は入塾してきているので、その期待に応えられるような自信溢れる指導をするべきだ。

その一方で、「不安感を持ちすぎない」ということは自分のためにもなる。
究極に重たい言葉で言えば、生徒の親がお金を払ったことで「講師は(私の職場であれば)一回(1週間スパン)の指導で1万円分の価値を提供」しなければいけないし、大学受験という大きなイベントに隣で関わる以上「生徒の人生が私にかかっている」。

しかし、この思考は時に講師をワーカホリック状態のようなものに陥らせる。
例えば実際に大学受験の結果が振るわなければ多大な責任を感じてしまうし、気が病んでしまって塾に来なくなってしまえば、「私の指導が悪かったんだ、私のせいで生徒は勉強ができなくなってしまった」と考えてしまう。
私の上司はこの点についてかなり講師陣に忠告をしており、そこまでの責任感を持つ必要はないと言っている。

講師はあくまでも自分の指導だけに集中をし、その結果生徒が塾に来なくなろうと大学受験の結果が上手くいかなかろうと、それに関しては本人の問題である、あるいは誰の問題でもないと考えるべきだ。
実際、たくさんのやるべきことに追われて疲れてしまったり、風邪で体調を崩してから勉強のペースが崩れ、そんな自分に絶望してしまったりという理由で塾に長い間来なくなってしまう生徒は多い。

自分が講師としてそのような生徒のためにできることは、再びその生徒が塾に戻ってきた時に学びの場を作ること、それだけである。
そのためには、日々講師自身も健康的に指導を続けることが大事だ。


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