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旅する店。

昨年の秋、函館市から夕張郡由仁町に車で何度も荷物を運びながら引越した。田んぼに囲まれた土地に建つ築百年を越える古民家を紹介していただき、住居兼店舗として活用できるよう可能な限りの修繕を自ら施した。函館のお店は閉店し、荷物は片付け、梱包して運んだ。一冬をまるまる越えて、住居を含めた全ての修繕を終え、今月やっとお店は再オープンを果たせた。長い時間と手間を要して、お店ごと旅した。移動販売はよくあるにしても、店舗ごと旅するなんてなかなか無いことかもしれません。函館のお店の内装を友人たちと作り上げた時、大変な手間で二度とすることはないかと思いましたが、またこうして同じことをやり始め、やり切り、人生二度目の店作りを終えました。全エネルギーを費やしお店は完成しましたが、それと同時にお店は始まり、全エネルギーで毎日過ごしています。当てのない、終わりなき放浪の旅。若い頃はそんな旅に憧れてきました。なんだか人生もそんな旅のようだなと最近思います。朝が来て夜が来て、また朝が始まる。そんな連続で、僕はどこかへ向かうようです。離れてみると、それまで居た地が無性に恋しく感じるものです。また放浪の旅のような人生の途中でお会いできることを心から楽しみにしております。
(料理店パザールバザール店主)
<略歴>
函館市生まれ。函館市西部地区で2010年からトルコ料理店を営む。2020年由仁町へ移住。45歳。

(2021年6月
北海道新聞みなみ風“立待岬”掲載)

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