アルキメデスの大戦を観ました

★★★★・

原作は未読です。


海軍の戦艦と、数学屋のお話。

主人公は卓越した計算能力の持ち主で、それが海軍のとあるお偉いさんの目に留まり、軍に引き入れられることになります。

数学屋って、計算屋というよりは、もう少し抽象的な扱いもできる強みのある人のことでは? てなことも思いつつ観ていましたが、終盤では並んだ数値のサンプルから一般化して関数を予想したりと、僕の思う数学っぽさのある展開が出てきて安心しました。

この一作、僕には SF 作品に見えました。

主人公は令和からタイムスリップしてきた数学屋です。令和の人だから作中の軍人とは感覚が異なりますし、これから海軍が敗戦に向かう判断をしていくことを知っていますので、平気で物言いします。劇場の観客としては痛快に観られます。主人公が劇場の観客の思いを同じ温度感で代弁してくれるからです。また、史実を知っている我々からは、海軍の「愚かな」判断を正そうとする主人公一派を応援したくなります。ということで、本作は終盤まで目を離せず、それが高評価に繋がっているのだと思います。

最後は、主人公の優秀さが逆に足枷となって、令和の一般人との感覚とは違う部分に美しさ・面白さを見出し、劇場の観客とは袂を分かつことになります。このあたりも構成として上手い。序盤に彼が理性だけマンでなく、美しいことが好き・美しいことをしたい人間であることは、渡米よりも令嬢をとるシーンであらかじめ描かれていますし、基本的に終盤までは観客の味方でいるので、予想しにくい意外なラストに持っていく効果も生んでいます。理性だけマンに見えて……という主人公は、他の映画だと『風立ちぬ』の堀越が浮かびますが、本作の方が主人公の行動理由を親切に語ってくれていて、より分かりやすくなっています。『風立ちぬ』の内容がピンとこなかった人は、本作を観ると助けになるかもしれません。

ということで、面白い邦画でした。

『空母いぶき』も良かったので、今年の邦画は安全保障・軍事ものの当たり年になっています。


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