プレーオフ感想 - Tリーグ2020-2021 琉球アスティーダ対木下マイスター東京


卓球プロリーグ「Tリーグ」の3シーズン目。非常事態が起きると、真っ先に下火になるのはスポーツをはじめとする娯楽なのだな、と再認識したシーズンとなりました。流行りのウイルスにより、シーズン開始は遅れ、開幕後も長期に渡り無観客試合に。開催して間もないTリーグには思わぬ失速でした。それでも、貴重な試合の機会に賭ける選手らは、素晴しいプレーを見せてくれました。

優勝決定戦「プレーオフ」に進出したのは、琉球と木下でした。2ndシーズンのプレーオフでも同じ組み合わせが決定していましたが、流行りのウイルスの影響で、対戦は実現せず、順位戦で1位だった木下が優勝扱いになっていました。琉球にとっては「忘れ物」を取りにいく、またとない機会に恵まれたといえます。

琉球 3-0 木下
=================
木造/吉村和 ○ 2-1 ● 及川/田添
    戸上 ○ 3-2 ● 大島
   吉村真 ○ 3-2 ● 及川

終わってみればこのスコアだったものの、琉球は1マッチでも落とせば優勝が危うい展開でした。というのも木下は4番手に張本さんをオーダしていたからです。2-2になってから初めてコールされる5番手も張本さんなのはほぼ確実で、木下側は終盤に2マッチを掻っ攫って勝利するシナリオを用意していました。琉球の優勝確率をもっとも高めるとすれば3-0しかない。そんなオーダだったのです。

そうして幕を開けたダブルス。このプレーオフ全体を通してもっともいい働きをしたのは、間違いなく木造さんでしょう。吉村さんの決め球が不発に終わる苦しい展開の中、ときには小技で、そしてときには思い切りのよいフォアハンドの速攻で、活路を見出してくれました (で、最後の一本といったおいしいところは、全部吉村さんがごっつぁん得点していて笑いました)。ダブルスをものにしたことで、張本さんを登場させずに琉球が勝ち切る望みを残してくれました。

第2マッチ。木下所属の水谷さんが故障でオーダされなかったことにより、夢のような対戦が実現しました。戸上さんと大島さん。どちらも目の覚めるような機動力と攻撃力が持ち味の選手です。本来は互いのいいところを消すように搦め手も混じえながらプレーすべきなのでしょうが、この2人は試合前から予想されたとおり、正面からの殴り合いを見せてくれました。観戦中は最高に興奮しました。もうプロレスですよ。意地と意地のぶつかり合い。強打を連打する展開の多い試合で大満足でした。

内容としては、大島さんが前陣のバックハンド対バックハンドでわりと分がよく、キャリアのある選手らしい賢い戦い方を見せていたのですが、中陣・後陣のミドル・バックハンドでわずかながら戸上さんが上回ったかな、というところです。とくに最後の一本は、中陣からの打ち合いでミドルを突かれた大島さんの返球が甘くなり、戸上さんに決められて終わってしまいました。世界選手権の男子ダブルス決勝でも同じような展開で優勝を逃がしており、これは大島さん悔しいだろうな、と思わずにはいられませんでした。

第3マッチ。吉村 (兄) さんは緊張しているのか、全体的に置きにいく展開。序盤こそ省エネで得点できたものの、そこで終わらないのが及川さん。勢いは捨ててコースに頼る吉村さんの返球に徐々に対応し始め、勝負を最終ゲームに持ち込みます。このまま思い切れずに逆転負けすれば、吉村さん的には年単位で引きずるマッチになるところだったでしょうが、そこはさすがの吉村さん。最終ゲームのレシーブでは威力のあるチキータを打って得点。レシーブでプレッシャをかけたことで、もともと効いていたサービスがさらに効くようになり、及川さんの猛追を振り切りました。

優勝した瞬間の、重圧から解き放たれた吉村さんを見て安堵しました。思うようなプレーができないメンタルになっても、試合中に修正し、恐怖心を振り払うような思い切ったスイングができるようになり、そして最後には勝った。吉村さんには自信になったのではないでしょうか。そして苦しくもやり遂げた吉村さんに、ベンチから真っ先に駆け寄ったのが弟だったというこの流れよ。どうしようおじさん泣いちゃう。

1stシーズンでは勝てばちょっとしたニュースになるくらい黒星がつきまくり、終わってみればもちろん最下位。そこからの琉球は、2ndシーズンから吉村 (兄) さんを獲得し、おそらくは吉村さんを起点に野田学園出身の強力な選手を集め、ついに3rdシーズンではプレーオフ確定1番乗りするほど勝ちまくりました。流行りのウイルスで他のチームが支出を抑える中、逆張りで資金を投入する裏技を使ったとも言えますが (台無し)、それでもTリーグ新記録になる連勝数をはじめとする勝ち点を積み上げられたのは、きっとチームの士気が高かったからでしょう。3rdシーズンも、「勝つ」というシンプルな結果に固執する素晴しいプレーを観ることができました。3rdシーズン、僕は現地からの観戦は叶いませんでしたが、モニタ越しでも熱狂できる試合の数々でした。

優勝おめでとうございます。4thシーズンも楽しみにしています。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?