レギュラーシーズン最終戦感想 - Tリーグ2019-2020 琉球アスティーダ対T.T彩たま


日本発の卓球プロリーグであるTリーグは、執筆時点で2シーズン目の終盤。今シーズンも男女ともに4チームのままですが、毎回試合のレベルが高くて、むしろ少ないチーム数なりの魅力が出てきています。
Tリーグではレギュラーシーズンで勝ち点の多い2チームが優勝決定戦に進めます。2020年2月16日の試合は、この勝敗で2位3位が確定する、大一番の試合でした。

彩たまは前日・当日とホーム戦。一方の琉球は、前週の仙台市、茨城 (ホーム扱い)、前日の岡山、当日埼玉と移動量が多め。開場は勝利を信じる彩たまファンの応援が素晴しく、アウェーの琉球をのむ力は十分ありました。彩たま有利と見た人は多かったはずです。

琉球 3-2 彩たま
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吉村/李 ● 0-2 ○ 神/黄
   荘 ● 2-3 ○ 松平
  有延 ○ 3-2 ● Pitchford
  吉村 ○ 3-0 ● 神
   荘 ○ 1-0 ● 松平

1試合目のダブルスは彩たま有利。
琉球ペアはどちらかというと繋いでコースを突くペア。そこに食らいついたのが彩たまの神さん。ラリーになれば思い切り振り抜いていき、厳しいコース取りされても持ち前のガッツで意地でも拾っていきます。序盤こそ競いましたが、中盤からは神さんの気持ちが黄にも好影響を与え、互いに威力ある決め球が増えていきました。
琉球側としては、どこに打っても足を使って威力あるボールが飛んで来るため、中盤以降はなすすべなしになってしまいました。
試合が進むほどペースを掴んでいった彩たまペアが先制します。

2試合目は紙一重でした。
過去の戦績でいえば、荘の勝率が高かったのですが、蓋を開けてみれば接戦に。彩たまの松平さんは、序盤からサービス〜3球目のシナリオがよく描けていました。どのサービスからの展開でもレシーブコースの読みと、一撃で決める3球目で、華麗に加点していきます。ネット際のボール捌きでも分がありました。一方、ドライブのラリーになれば、地力のある荘が取る展開。
最終ゲームになると、ラリーでも松平さんが引かなくなり、最後はネットインで松平さんが得点。前回の琉球戦、対木造さんとの最終ゲームの再現のような、フォア飛び付き→空いたバック側にまたも飛び付いてバックハンドドライブも見せ、心技体充実したプレーが冴え渡りました。

3試合目。終わってみればこの試合が鍵でした。
勝利ムードの彩たまの声援を受けながら登場したのがPitchford。ただでさえワールドクラスな選手のうえに、対日本選手の勝率が高いプレーヤです。世界大会のその戦績を買われて彩たまにリクルートされ、実際このシーズンでも勝ち星を多く上げていました。
対する琉球は有延さん。思い切りの良さと力のあるドライブを強みとしていて、団体戦向きの選手ではあります。が、相手は世界でも活躍する選手ですから、ウィークポイントが見つかれば付け込まれて大敗してしまうでしょう。有延さんには、彩たま応援団のプレッシャとも戦いながら、試合中の対応力と度胸が求められる、難しい試合になりました。
1ゲーム目。さっそくPitchfordのYGサービスが上手くレシーブできないのを咎められ、大差で落としました。
2ゲーム目。中盤まで似たような展開でしたが、光明が見えました。なんと有延さんのYGサービスもPitchfordに効いたのです。Pitchford相手にエースが取れましたし、慎重になるあまりかレシーブもやや単調になり、3球目攻撃も決まるようになります。この流れでゲームカウント2-1とし、逆転に成功しました。
4ゲーム目。Pitchfordが取り返します。ラリーになると普段より弱めに打球しているように見えました。やや軽打気味の打ち方にであっても、有延さんのコートをノータッチで駆けていったり、有延さんが打ち損じたりと、簡単に得点していきます。基本技術のレベルの高さを感じさせるゲームでした。この展開が最終ゲームも続くようであれば、おそらく有延さんに勝ち目はありません。
最終ゲーム。有延さんは出足から積極的なサービス・レシーブで試合中盤の展開を再び作り、接戦に。9-10とPitchfordにマッチポイントを握られたときに助けられたのは、またもや自分のYGサービス。ミドルのハーフロングでサービスエース取り、その後の2本もサービス・レシーブで最後まで積極的な姿勢を保った有延さんに軍配が上がりました。最後の3球目は、有延さんが構えた時点で勝利を確信できる、素晴しい動きと威力でした。

4試合目。これで息を吹き返した琉球。吉村さんが神さんを圧倒します。
吉村さんはサービス・レシーブで先手を取り、あとは何をやっても上手くいく展開に。一方の神さんは、チームの勝利を目前にしながらも、吉村さん相手に活路を見出せない、苦しいマッチになりました。渾身のドライブを打っても、その先になぜか吉村さんのラケットがあり、返球されてしまうので、メンタル的にもかなり不利だったのではないでしょうか。

そして5試合目。勝利決定となる延長戦では、両チーム2試合目と同じ選手をコールしました。
1ゲームのみで決着のつくこのマッチ。序盤は2試合目同様、どちらに転ぶか分からない接戦になります。ただ、2試合目と違い、荘が松平さんのネット際プレーで崩れません。さすがの対応力です。
荘が6-7と詰め寄ったところで、彩たまがタイムアウト。彩たま側にとっては不運なことに、ここから流れが変わってしまいました。松平さんはそれまで会心のプレーを見せていましたが、以降は力んだのか、ラリーで返球しあぐねるように。荘はアウェーでも最後まで崩れないプレーを貫き、11-7でゲームセット。ベンチ外で観戦していたチームメイトも駆け寄り、琉球全員で喜びを分かち合いました。


同じ組み合せで結果の違った2試合目と5試合目に象徴されるように、誰が勝つのか、どう転ぶのか分からない一戦でした。どちらも勝者に相応しい試合でした。
その大切な一戦で、前のシーズンぶっちぎりの最下位だった琉球が勝利して、2位に滑り込めるだなんて。社長の早川さんは「最初のシーズンは最下位でもいい。次のシーズンの優勝を目指せばいい。バスケ bjリーグ (当時) の琉球キングスもそうだったんだから」との旨のお話をどこかでしていたかと思います。優勝決定戦の挑戦権を得て、まさにその大きな夢をこの手に掴みつつあります。

監督の張さん。今シーズン、対戦後のインタビュをいくつか観るまで、張さんがこんなに真面目なお方とは知りませんでした。チームを勝利に導かなければいけない重圧は、半端なものではないということなのでしょう。今回の一戦についても、朱をオーダから外す決断がありました。選手としては実力がありながら、彩たま相手に相性が悪い。頭では外すのが最良と分かっていても相当勇気が要たはずです。ましてや、前回の彩たま戦まで朱を使っていたのですから、心労は想像もできません。
まだ1試合残っていますが、初の監督業として、実績も経験も収穫も申し分ないシーズンになったのは間違いないでしょう。張さんだから出来たことでした。

チームのみなさんが人事を尽くした結果、ドラマを生んだレギュラーシーズン最終戦になったこと、琉球ファンのひとりとして祝福したいです。
プレーオフを楽しみにしています。

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